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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「あぶらだこ/[亀盤](1988)tkca-70829」



いわゆる亀盤…楽曲の輪郭は比較的はっきりまとまっている分、演奏作業に係る個々の打撃や弾きの強力や殺伐が鈍器や炎のように極められ、例によって軍靴で踏み躙られた不屈の雨蛙の内臓迸り引き摺りながらの薄汚く姿勢の低い濁声による読経朗誦も詩形の逆光に映える…言葉の問題からすれば着目するに足らぬ安易なうわべ自慢、例えて云えばさしずめ、いくら全国荒野を行脚しようともどうにも金まみれの卑しい自意識過剰から脱却出来ぬ自称漂泊俳人種田山頭火が老境の狂いで以てロックという目先の流行に便乗したらばこうした楽興になるのかしらんと思われる…とは言え、行脚で培われた草いきれの濃さはむんむん感じる、聴いて損なしの佳作である。またしても鑑定団二本立て連続視聴の極楽地獄…正式な昼寝2時間後のんべんだらりと、しかし厳しい鑑賞眼が体から独立して自ずと働くから制御できぬ疲労だけは体に押し付けられて次次目が物を見る無駄な時間を過ごす…漆で繕わないといけない器が山ほどあるのに怠惰に流されるまま…明日挽回できるのか早くもげんなり…国内外から狂ったように怒涛のように押し寄せるから既にどこの宿も一杯、結局この夏もどこにも行けない蟄居の寝正月ならぬ寝盂蘭盆なのか。本気でどこかに観光に行きたい訳でもなかったからゆえのもたついた対応による必然。全く悔いなく、しずこころなく里帰りする凡庸もまた良し。細君の友人の紹介で本格的な中国茶を喫せるお店「露伴茶館」で優雅な時を過ごす…一階が上客相手の骨董屋でその二階に位置するこの店内の調度や什器も趣味よく古格を帯びて清潔、茶道具は過剰に暑苦しい骨董趣ではない新物なれど店主の目利きは覗えるから嫌味なく眼福…剛毅な鉄釉がのぺえと広がる板皿にあしらわれた茶うけ菓子の創意はまるでルネサンス、ポッティチェリの「春」で集う女神たちの足元で可憐に息づく小さな花々たちのような繊細な野趣溢れる菓子たち…極上である。店内の厠までの小路脇の本棚にはさりげなく岩波書店の幸田露伴全集全巻をきちんと懸架して問題意識の高さが覗える…喫茶店で茶や珈琲を出されても猫舌の小生にとっては熱すぎて舌が火傷、せっかくの工夫が凝らされた味わいが台無しになる口惜しさなのだが…露伴茶館では湯の温度をきちんと整えられ、薄手小ぶりの色絵煎茶碗で頂くから茶の妙味が存分に興されて心憎い…赤児の手ほどの急須の一杯目は格別ながらその後五煎ほどしても全くその仙味が衰えない。茶と、そのひと時を、まさに「珍重」する。人間人間いうても結局この世は、殊更人間と呼称すべき存在など殆どいない。社会内存在だろうとその実態たるは、その背後で支配的な退屈な生命原理に束縛された動物ばかり、生まれて喰って繁殖して死ぬだけ。何が楽しくて生きているのやら分からぬ。それに難癖をつけられるほど、人間の立場の優位性を前提にして云えやしないのは承知しているものの、一抹の空しさは禁じえない。ジミー・ペイジが平和公園に献花していた…。あんな人間の動きを誰が欲しているのか理解に苦しむシンクロナイズドスイミングの過剰にとち狂った演技。官公庁や学校での国歌斉唱は、国家が国家主義者を育てる場所なのだからとやかく云わぬがプロ野球の試合前に観客に国歌斉唱&起立させるのには、民間の興業にまで潜入する国家主義の抜け目ない発露に対して自明なる革命権を根拠とした忿怒がわなわな震える…野球が国家主義の手先であるのは重々承知しているにしても…。生ごみ系の蚊が水分補給しに、小生が唐津湯呑に備蓄する麦茶を飲みに来る煩わしさ…倒せない。アンデルセンのカヌレが旨過ぎる…中はしっとり重厚な得も言われぬ甘味…パンをその場で食べられる単なる一階だけのパン屋だと思っていたらなめていた、三階までパン空間で上質の暮らしに躍起になる来客でびっしり、舶来の珍しいパン焼き立て展示販売もすればビュッフェというのか、小生にはバイキングと区別できぬがパンと一緒に意中の洋食も食べられるシャレ乙スタイル予約制、浮世離れした器や雑貨なども陳列…。アメリカのブロカントなぞを仕入れる別の店で…ルノワールの裸婦の肌色みたいに真珠色にうねりながら輝くガラス製のカップとソーサーを見かける…如何なる飲物でも不味く見せるそのカップにそそられ…覚えておく。酷熱のアスファルトには蝉の死、蒼白い腹を見せて三対の脚を合掌する図…南無大師遍照金剛。

「陥没」    あぶらだこ
錯乱と土人道を 西に向かい歩けば
硬貨は砂となれ そのかわり麦となれ
チョルテンの上を泳ぐ 魔鏡の砂利船
緘黙のガラパゴス
上げ湖飲みこめ直結 剣山の傭兵
地獄を凌駕した 調合された怪物
肉体を棄て去り 永遠の文字となれ
溺れる天の民 苔にもこけず

小町 裕:bass
伊藤健一:drums, kake-goe
和泉明夫:guitar
長谷川裕倫:vocal, piano

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