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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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冬籠り…

本来ならプールに行く予定であったが…寒さで怠惰の度が勝り、漫然と家に籠るからますます体が硬くなる…風雲急を告げる温暖化問題の切実によって其の命脈は風前の灯である感が日増しに募るガソリン車を購入し、10年とは云わないからせめて7年くらいは乗りたい、いや、やっぱりどうでもよいようなテキトウな中古車を中継ぎとして、抑えの電気自動車購入に資金と情熱を温存すべきであったかと今更ながらの逡巡が未練がましく脳裏をよぎりつつも今回購入を決めた車に関しては悔いは無いとも思っており、そういえばそろそろ納車日程を知らせに来る筈だが電話は来ず…微かな不信感がさっとよぎるが、其れよりもたまげたのは、新車購入の調印後、なんぞ良くない事が起こるのではと小市民的に不安を募らせていたところ、それ見た事かとやっぱり良くない事が起きて…調印直後、不幸の訪問がドアを叩くように、健康診断の正式な結果が送付され…検診直後では指摘されなかった新事実がしれっと記載されており、再検査、とある。ところが再検査の結果、真逆の結果となり問題なしと云う結論となったが…同じ検査をして一度は問題あったものが二度目で問題無かったからと云って最終的に問題なしとするのは如何にも非科学的ではないか、もそっと現象の深層を調べるためには別の角度から他の検査をして本当に問題ないか確認すべきのような気がするが…最悪、ガンの可能性だってある訳だし…しかし対応した医者は其の病院の理事長だか院長のような御老体であり…あまり小難しい理屈を云っても要領を得ない感じだったが徳は有りそうな感じで医者相手に事を荒立てるのも面倒が先立ち、済し崩し的に、問題なしと云う顛末を得たのであったが釈然とはせぬ。いずれにせよ車購入のせいでとんだ処でもビビらせられたわいと慨嘆しつつ帰りに牛丼を食う。中村医師の無言の帰国を悼む…金と武力と国家の虚勢に価値を置く事しか能がなく、生命の尊厳を否定する腐れ保守の論理を敷衍すれば中村医師の功績さえも嘲笑の対象になるのだろうが(「砂漠しかないテロリストの巣窟のような資源の無い国の人間を助ける事が日本の国益にかなうのか」などと)…生命の尊厳を無条件に讃える中村医師の人間性と功績を讃えないならば、人間として何事かを発言する権利は無いものと思え。

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無常の日々…

早くも師走か…今年は今年で自分なりに新境地を開いたと自負しており、其れは従来まで積み上げてきた成果とは段違いに圧倒的な成果であるとすら自負するものであるが、対外的且つ傍目には何の成果も展開できてはいない状況にあるのは否めないにしても、内的成果の成果が目眩がするほど凄まじいから、外的成果の僅少に焦る事は無いのは寧ろ能天気に過ぎる愚昧ぶりなのだろうかと云う薄ら寒い常識も捨てきれぬとんだ泰山ぶりである…要するに、此処に来てようやく、自由自在、天衣無縫に文章が書けるようになったと云う事だ…其れは其れとしても…じわりじわりと、詰将棋のように、自分の外在的生活に関しては、追い込まれている冷たい焦慮を掻き立てられる小さな異変が日々肉迫している…やけくそで一句。

小春日や猿の腰掛打ち砕く

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大商談会を終えて…

疲労困憊で…先週もそうだったが、昨日、今日と続いたディーラーとのえげつない打ち合わせはそれぞれ2時間超、1時間超であったにも関わらず、終えて帰宅するとどっと疲れが出て其の後半日以上は布団に逼塞する始末…総じて其の疲労は…お金持ちからすれば洟取り紙程度の金額なのだろうが庶民の一般生活からすれば非日常的な大金である事には変わりない金額を動かした事による心臓のバクドキ感のみならず…そして、具体的なやり取りの中で試される機転を非日常的に感度よく発揮したがゆえの精神的な疲労のみならず…それらよりも何かこう…ひとたび其れに人間が迂闊にも巻き込まれたら絶対に自力では抜け出せずに、其の大がかりで圧倒的な駆動力によって其のシステムに巻き込んで来る巨大な回転機械に巻き込まれてしまったような、そうした巨大なシステム=資本主義経済の冷厳なまでのシステム感と、其れを前にした自分のあまりのちっぽけさと云う無力の構図に有無をいわさず蹂躙され熨斗烏賊のようにされた抜け殻の自分の残滓のような無力感に遭遇した事が影響として大きく…チャップリンのような戯画化の余地さえも残さぬくらい、此方の人間側の事情など全く意に介さない巨大システムの構成要素になっている自称人間たちがますます当該システムの増強に努めながら際限なくガツガツやってる様に対しての為す術の無さが無限大に大きい圧倒であり…其れは兎も角としても、結果としては、品物と価格のバランスにおいて自分の満足の行く買い物が出来たから問題は無いはずなのだが、其れでも、以前として件のシステム感に対する茫然自失感の余波は冷めやらず、布団の中に一日中逼塞していても此のバクドキ感は収まらず頭の中は蛍光灯で白昼のように楽観的な睡眠はままならないけれども…結果は悪くは無かった。まず先週、あと一、二か月中に生産中止になるから生産台数がかなり絞られているらしい不遇に見舞われているが小生の意に適う車を仮予約した訳だが…昨日は更なる仕様と支払方法の詳細を詰めつつ値切り交渉を進めると云う、商談の山場を迎えたのであった。此処で商談冒頭、自分の功を自讃したいところだが…そもそも先週の時点では、元元台数が無く、且つ安価でシンプルなモデルは既に生産中止だから、其の一つ上のクラスの(上、と云うのは価格であって、あるいはメーカーや世間が勝手に云ってる事で、自分の内心としては、余計な物がついているから寧ろ値段が高いくせに技術の本義を踏み外した、性能の劣る劣等品と見なしている)、ギッタギタに余計な物が付いたモデルを仕方なく仮予約していたのだが…詳しい話に入る前に、もう一度、シンプルなモデルのものは本当に無いのか再確認する事を要請したのであった。前回はいきなりタブレットで、細かい数字がならんだ細かい表を見せられて、お求めのものはありませんね、的な結論に至った訳だが…細かすぎてよう分からんかったから、後悔が残らないよう再確認しようと事前に心に期していたのであった。そして、案の定、担当者と一緒に具に表を見ていくと…「ほらっ、有るじゃんか」(てめえっ、いい加減にしろよっ)と思わず声が出たのは大人げなかったが、当初から求めていたシンプルで安いモデルの特別仕様車なる訳アリ物が一台残存していたのである。此れだと、仮予約した車より10万値段が下がる上、下らん機能やオプションはついていないから断然こっちだろ、と云う事で、こっちで話を進める。私が再確認を要請しなければ、其のままバカ高く不本意な物を掴まされる処だった。全く油断も隙も無い事を痛感すると同時に、自分の功績に卑小なる優越感を覚える…とは云え、仮予約品とシンプル品ではデザインなどが違うから細君が仮予約品に固執する一悶着はあったものの仕様に対する勘違いもあって結局シンプル品に絞る事に落ち着き、更なる価格交渉に集中出来た…11月の営業成績やら支払方法、キャンペーン、今乗ってる車の下取り価格や内装をウッド調にするオプションや切りのいい数字、を複雑に絡めながら価格を提示してもらい…其処までの過程で一旦放心した小生が妥結しそうになった。事前の細君との打ち合わせでは、値切り交渉のタマがなくなった時点で、更なる値切り要求をする事になっていたが、自分は其の事を交渉過程ですっかり失念していたのであった。と、其の時、細君が、もう一声、勉強できないか発案した。其のおかげで、駄目押しの値切りが可能となった功績にはとても助かる思いがしたのであった。其の結果、納得のいくデザイン、性能、価格の車を無事予約できたのであった。
今日は契約のハンコを押しまくり…支払方法の詳細の説明を受け、腑に落ちない処はあったものの、納車までの具体的な日程感を定める事は出来…其れは其れで、心の髄から疲労する感は否めず、帰ってから殆ど布団で過ごした。何か良く無い事が起こるのではないか、と云う小心の不安に苛まれつつ…しかし、新車が人生にやってくるワクワク感は少しずつだが自分らの人生に滲み始めているのだろう…其れでも、いまだに、心臓のバクドキ感、動悸が止まぬ…

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憔悴の一途…

車検に出す度に20万円近く三回連続で取られ続け、さすがに限界が来たので、来年の車検までを目途に、車の買い替えに動く…電気自動車の世の中になるまでの最後の中継ぎという位置づけで…今回は新車をターゲットにして…世間知らずな自分の見る目の無さなのか、今の中古車を購入した時、一週間も経たないうちにタイヤが次々パンクし…罅割れだらけの糞みたいなタイヤを押し付けられたと云う、商売人の底意地悪いあこぎな側面を見せつけられたのも背景としてある…尚且つ、いろいろ選べる新車へと気持ちが傾いた次第…数あるメーカーや車種の中で、デザインやコンセプトが気に入ったある車のディーラーとアポイントメントを取る…すると、狙っていた車は近日中に生産終了で、生産量やディーラーへの割り当ても極めて限られており…県内にはあと一台しかないという…しかも、その車のラインナップの中には、衝突事故防止のセンサーが有るものと無いものが一応揃えられており、自分の思想としてはセンサーが無いものを所望していたのだが其のシリーズは事実上県内ゼロ台と云われ…とは云え、ディーラーとは別の販売店の方で秘蔵している可能性も無い訳では無いらしいから、探せば其れが見つかるかもしれないと云われたが、其の手間にまずげんなりする…要するに、気に入ったデザインながらもセンサーでギタギタに飾り立てている割高な車があと一台しかないと云う状況…メーカーとしてはセンサー有り/無しのラインナップを揃えていたが、結局センサー無しはあまり売れなかったと云う消費者の選択によってセンサー無しを生産しない選択へと舵を切ったと云う経緯のようで…重ね重ね、自分が寵愛するものに限って世の中にあっては衰滅していく世の趨勢に改めて気分が減退する…何でもかんでも馬鹿の一つ覚えみたいに電子制御だらけなのがどうにも我慢ならず…機械設備と云うのはなるべくシンプルなニュートン的機械式の方が信頼性が高い、量子的電子制御などいざとなったらどこまで信用できるかわかったもんじゃない、いざとなったら手動操作が最も頼りになる、と云う昔気質が、市場原理で否定される世の中に、やり場のない憤懣を抱えつつ…私の方は半ば頭の中は怒りで真っ白になったので…新車に対して俄然前のめりになった細君が世知に長けた交渉術を発揮して…仮予約という事でおさえる事は可能なのか、その場合、仮にキャンセルした場合にキャンセル料は取るのか、年末に向けて割引キャンペーンがあるだろう、実際、どのくらい値引きしてくれるのか、などと、世間に疎い自分には到底思いつかない、高額な商取引に独自の駆け引きを貪欲に発揮して来る…取り敢えず見積もりをもらい、試乗体験後、這う這うの体でディーラーを出たが…行きつけのカレー屋で殆ど味わう事も無く話し合った結果、試乗での好感度が確信に変わって、直ぐ仮予約するべしと云う事になって、帰宅後、此方がオプションを選択できる新車としては県内に一台しかない、当初から狙っていた車を仮予約する電話を入れる…もっとも、其の車の、真に本命だったなるべく余計な機能の付いていないシンプルで安いクラスは生産中止で取扱い出来ないと云う事で、ギッタギタに余計な機能がついているため想定していた予算より結構割高なクラスのものに突き進む不本意な流れではあるから、ほろ苦いような、遣る瀬無いような、うっすらとした惨めな感慨は否めなかった…技術の本質が分かっていない愚民の大勢に強制的に従わざるを得ないのか、と、今更新鮮でもなく寧ろ馴れているくらいの情けない感慨に抑圧され…しかし、現時点では、此の仮予約は、最善の選択であったのだろうとは思う…それにしても、鈴木のタイムリーも見事だが、山田の逆転スリーランは値千金。継投もきっちり仕事を果たす…「北の国から」も…毎度毎度、怒涛の感動で涙が止まらんわ。

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医療週間…

人間ドッグを受ける…検査前の待ち時間の手持無沙汰を紛らわすためなのか、やたらとダンチュウの食い物特集のバックナンバーがずらりと揃えられているのが目に付く…朝から朝食を抜いているから猶更…其れから数日後…永年の歯磨きの杜撰さが祟って、親知らずが悉く虫歯になっており、親不知だけならまだしも、親知らずの手前の歯と接触している箇所も道ずれにして虫歯にしてしまっている現実があって…去年、右下の親知らずを抜いて其の手前の歯の虫歯治療を終えたが、数日前、左上の親知らずを抜いて、其の手前の虫歯治療をする過程の第一歩として、左上の親知らずを抜く…今回はさほど痛みは無い…しかしながら、心身は着実に損耗されており…人間ドッグの結果も、思ったほど良くなかった結果もあって、憔悴の気分は否めず…其れにしても「北の国から」…とうとうUFOと遭遇したぞ!富良野すげーな。

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秋たけなわ…

成し遂げてしまったが故の虚脱感とでも云うべき感覚が未だに尾を引いており…先月、数多の困難を乗り越えた上で成功を収めた新境地のBBQ茶会の余韻こそ廃れているものの…ぽっかり穴が開いたような、がっつく気力が失せた満足感と、其の事とは無関係に生活に通底する具体的な不安の数々がせめぎ合う訳でもなく、漫然と混在した自堕落な調和の内にあるから…結果として神経が棘立つ鋭敏さが失われ…静かな秋の深まりに沈潜する気分に流されたままだった…件の新境地の折に味をしめた山の出湯の、心身がわだかまりなくほぐれる温かい快楽が忘れられず、山の風情にはちと飽いたから今度は海の風情へと移り気のままに、光の中で島が揺蕩う内海が一望できる温泉へと車を飛ばし…涼しい潮風に顔の火照りを覚ましながら首から下はどっぷり温泉に浸かる行楽へといそしんだのはつい先日の事でもあった…静かに湧き立つ湯の表面に漂う湯気が、潮風に当たって吹雪のように激しい動きを見せる乱流をジッと眺めながら、遠方に見渡せる海上の物憂い広がりに、懲りた自己を自由に解き放つ自堕落を味わう贅沢…気が気でない切迫感に便乗した精神を遠い夕日のように眺めるから、日に日に世界との梵我一如が近づくのか…とは云え…一年かけて実らせた農作物が収穫目前に台風や洪水でやられる、本丸御殿の再建も含めて十数年に及んだ修復工事がやっと終わった直後に地震で崩壊した熊本城、そして、これまた数十年かけてやっと完成した直後に何故か炎上した首里城、と…シジフォスの不条理神話さながら、天意を前にした人為の空しさが際立つ事件に、遣る瀬無い怒り、悔しさや喪失感も全て含意した、諸行無常としか云いようのない法則を感覚として肌で感じる…。美味しんぼのDVDのシリーズを見終わり…今、専ら夢中なのは、倉本先生の「北の国から」シリーズ…ごく稀に遭遇する、お昼の「やすらぎの刻」も、はっきりいって糞面白い訳だが(高級老人ホームに入居した裕福な御老体たちが博打にのめり込むは偽札作りに巻き込まれるはと、何やってんだか。老いてなお破天荒極まりない脚本には舌を巻く)…代表作「北の国から」もまた、毎度毎度痛烈に発露した生の問題を突き付けて来て、抱腹絶倒の感動を齎してくれる…環境問題、資源問題が抜き差しならぬほど現実味を帯びた今だからこそ、再放送すべきドラマである…生身の人間が他の人間を演じる、ドラマならではの虚構の肉体の、圧倒的な表現力を、称揚せずにはいられない、演劇と云う表現形式の、時代を超えた不可欠さを痛感する。

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観月茶会記

2019年10月6日に台風発生の一報を聞き付けて、当月12日の茶会の開催が早くも危ぶまれ、やきもきとしていたが…8日には台風19号の進路予想が発表され…ちょうど茶会開催日の10月12日に近畿地方最接近で岡山も暴風域に入るとの予報であったから、厳しい決断を迫られていた。やるべきか、やらざるべきか…しかしこうした事態に備えて、11月に予備日を設定していた事もあり、想定された計画を其のまま遂行するならば、今更の日程変更は考えられず、もし12日が駄目であったならば、11月に順延、と云う方針で事が運ばれる流れであった。しかし、次第に確度の高まる予報を見るにつけ、12日さえ乗り切れば翌13日は晴天であるし、折しも三連休、土日の予定を、一日ずらして日月に変更してしまえば、わざわざ11月まで持ち越さなくてもよいのではないか、と云う思い付きも、自然ではあると思われた。ただ、こうした賢しげな機敏さが逆に猪口才な結果を齎し、例えば、台風が過ぎたとは云え、其の翌日ともなると交通やインフラの遮断等の災害の影響がむしろ顕在化して、天気晴朗なれど結局集合できず、と云う情けない落ちも懸念されたから、一日ずらせば何とかなる、と云う楽観は持っていなかった。とは言え、11月の予備日発動をメンバーに打診すると、参加はできるけれども法事があって日帰りとなる御方もおられ…予備日決行も不可ではないが少し残念な形にならざるを得ない事が分かった。更に予報が進むと、進路予想がだいぶ東海~関東に寄りだしており、確かに12日に本州最接近だけれども、案外12日でも岡山ならばいけるんじゃないか、と云う微かな期待さえも、いまだ現実味を帯びていたから、みだりに浮き足立って日程を動かした結果、台風後の災害で集合できない、あるいは人数が減ってしまう肩すかしの形になるよりかは、多少は風雨があっても予定通り12日に決行した方が、案外全てが丸く収まるんじゃないか、台風一過の壮烈なる満月が拝めるんじゃないのか、と云う現状維持への引力も、其の当時はいまだに強かった。しかし…進路的にはだいぶ東よりになって西日本への影響は軽微そうではあるものの、やはり、台風最接近の日にわざわざ決行するのは、あまり好きな言葉ではないがリスクがあり過ぎる、各所の遠方より集合する此度のミッションの道程を思えば、12日を避ける無難な決断を取るべきだろう…一日ずらす案も、災害で駄目になったとしても予備日は一応確保しているのだから、可能性をわざわざ減らす意味はないので、次善の策としてまずは試みるべきだとようやく自身で決心し、其れでも半ば迷いながら、一日ずらす案を提案すると…幸いな事にメンバーに不都合は無く、宿泊予定のキャンプ場の亭もまた13日に空きがあると云う事で、13日に変更と云う方針が固まり、ひとまず安堵したのが10月9日の事であった。
そして迎えた台風最接近の12日当日…台風の西側だから雨こそ殆どないものの、此方は朝から物凄い暴風で、たちまち家内で浮き足立ち、此のままだと停電、断水が有り得ると恐れおののき、朝っぱらから風呂に水を溜める、家中の鍋に水を溜める、なんやよう分からんが取り敢えず米を炊き、とてもではないがこんな暴風の中で高速道路での運転や山奥での茶会など無理であり、13日に変更するのは当然であったと思い至るが、しかし更に、此の規模の台風だと、13日でも災害の爪痕のせいでおじゃんになる可能性が高まり…気を揉む一日であった…と云うのは、細君も、メンバーの一人も、職務柄災害への対応出動が有り得る立場であり、出動要請が下れば当然13日もパーになる、と云う背景もあったからだ。
しかし、翌13日、本体から取り残されて千切れたような突発的な風は強かったものの、快晴で、特に連絡も無かった事から、出動要請も無かったらしく…出立と相成ったのであった。
大きな問題も無く、皆が無事に集合場所である津山駅に14時到着、目的地である津山の木もれ陽の森キャンプ場へと北上する事に。計画だと、途中で入浴施設に寄る予定であったが、合議の結果、不要と云う事で脇目も振らず当地へ乗り込む仕儀となる。
到着し、管理人夫婦と会談し、案内された梢月亭はブログの写真通りの、しっかりした大工仕事が施された、此の上無い数奇場であり…釘を一本も使わない伝統工法であり、観月台の軒は、でかい寺の垂木構造でさえある凝りよう…施主である管理人と大工の数奇が激しく伺えた。森閑たる杉木立の環境なれど、亭前を流れる瀬音に交じってそこかしこから子らが遊具で遊ぶ声が聴こえ、案外にぎやかだ。奥の方まであるキャンプサイトは満員らしい。何をさておいても速攻で、米を洗い、炊飯器にセットする。
山の斜面のあちこちに造作されたキャンプサイトの、それぞれのテントしつらいを観察しながら登り、今宵の茶会の場所の目星をつける…山上には大きな広場、其の隅には山から出土した岩塊が…
腹も減り、バーベキューの支度にかかる…其の前に、月見飾のしつらいを整えるべく、もう一度山に入って芒を採取して帰って来ると、野菜班(細君)が野菜を切り、火おこし班は既に今や遅しとばかりに着火準備に入っている…バーベキューサイトは、管理人が重機を操って山から興した天然の岩塊を、飛鳥の石舞台のように組み合わせた、野趣あふるる仕様である…自ずと、織部の縄文茶会を想起させる…
岩の、人為的に削った訳ではない、ただ単に窪んでいる処に着火剤と木炭を据え、火をおこし…程よく炎が収まって静かな炭の燃焼が始まると網を置いてカルビを焼く!野菜を焼く!タレにつけて食う!ビールを喉に注ぐ!飯をかっ込む!…機が熟すと、肉だけではない、バーベキューならではの創意さえも凝らされ…津山名産の干肉のみならず、タラの西京焼を焼く、オイルサーディーンの缶詰を缶のまま火にかけて温めると油が膨張して溢れて炭火にかかり炎が上がるハプニングもまた楽しっ!肉以外も旨いが、改めて肉を食うとやはり肉が旨く…肉と云うふるさとに帰るためにあえて肉以外を焼く回り道がバーベキューを一層豊かにして…気付くと日が暮れる…限界に達した満腹であるにもかかわらず、限界に達してからが勝負だとばかりに、鉄板を導入してまさかの焼きそばを投入…訳も無く自己を追い込む破目に…余った野菜と肉の全てを投入した焼きそばは絶望的にへヴィであり…通例の豚バラ肉ではない、濃厚な肉の旨みと噛み応えが今や厳しいカルビが焼きそばに混入しているのに口内が出くわすと、其の重量級が身に堪える…身に堪えるが、其れでも、食べてしまえると云う人間のサガ、over the rainbow…満腹の果ての、其の先には、最早何も考えられない無我の境地か…

バーベキューサイトを片づけ、梢月亭に帰る…梢月亭の観月台からは、時刻、方角の関係で残念ながら月は見えず…且つ、思いの外森の夜気が冷えるのもあって、障子を開け放したまま森の雰囲気を楽しむ訳にはいかず、雨戸を閉めて、亭内に月見飾りをしつらえる。

月見飾 三宝に福福餅を五個盛る
    左脇に竹筒を置き、芒を生ける
    右脇に蜜柑、柿を盛る

しつらいを終え、まだ満腹で何も考えられず一息つくと…寒い、寒すぎると細君が騒ぎ出す…壁は障子と雨戸の板のみで断熱材なしだから、外気が其のままである…毛布を出してかぶっても寒気は収まらず、仕方ないから、管理人に電話し、ストーブを出してもらうと云う一悶着あり…夜にも関わらず対応して下さり、シーズン前だからあちこちからなけなしの灯油をかき集めてくれたらしくストーブ到着まで時間さえもかかった事も含めて申し訳なくも有り難く…石油ストーブの温風の圧倒的効果にひれ伏す…

そして、腹ごなしがてら野点へと繰り出す。

第一席 観月茶会

日時  2019年10月13日 20時頃 望月
場所  岡山県津山市 木もれ陽の森 山上広場
亭主  黒曜堂主人(←私)
客   香川住、京都住
半東  細君
湯沸  コールマン
盆   栃 拭漆 破れ蓮図彫刻 東水 刀
茶合  煤竹 やどかり図彫刻 逸峰 刀  
茶   梨山涎蜜茶 台湾
急須  温泉津焼 森山窯
茶器  萩焼、南蛮手、常滑焼藻掛、赤絵
菓子器 宝袋蒔絵 黒漆塗平皿
菓子  松の実、黒大豆

少し場所の決断を早まって、茣蓙を敷いた処が斜めだったから若干居心地が悪かったが…雲が飛び散る夜空に皓々と満月が冴えて、茶の香気に集中する事で、月が杉木立に隠れるまでの天体の運行を噛みしめるように眺める静謐の時を構成できた…此れにて一座建立相成る。

第二席 想月宴会

山上の観月野点の余韻も冷めやらぬ中、月見飾を眺めながら酒宴へとなだれ込む。酒、つまみ、いずれも至高。十年以上前に京都でお助けして初めて、朱塗りの片口が大活躍した。栗焼酎の品のいい香りが絶品であったし、此の純米吟醸、其の飲み口はまさに良く研がれて青光りする刃物のよう…鮮烈で透明ながらも貧弱さは一筋も無く、呑み進むにつれ、弛んだ濃厚さに恃まない凛とした酒の骨気が、穏やかな汀がどこまでも広がるようにたおやかな優しささえも湛えて…涙が出るほど心身に浸みこんでいく…互いの近況、積もる話がだらだらと充実し、酔いにまかせて、午前零時頃になってようやく最近私が取り組んでいる文法論について突っ込んだ議論を展開しつつ、かけがえのない夜は更けていく…。

日時  2019年10月13日 21時頃
場所  岡山県津山市 木もれ陽の森 梢月亭
酒   賀茂鶴純米吟醸一滴入魂(西条)、栗焼酎無手無冠ダバダ火振(四万十川)
酒器  朱漆面取 片口
猪口  萩焼、南蛮手、常滑焼藻掛、赤絵
肴   じゃがりこ、あたりめ、たけのこの里、五百円玉大の煎餅にバター風味のクリームとアーモンドを載せたつまみ(←名前が分からない定番のつまみ)


第三席 名残りの茶会

昨日のバーベキューの残りの肉と野菜と焼きそばを折詰で保管していたから此れをオカズとして、更に持参いただいた自家製の梅干しと菜っ葉の漬物を香の物とし、飯をよそって、朝食となす…柿を剝いてデザートとし…其の後、梢月亭内にしつらえた月見飾を観月台に出し、杉木立の隙間から差し込む朝日を浴びながら月見の名残りを惜しむ朝の茶席を設ける。

日時  2019年10月14日 9時頃 青天
場所  岡山県津山市 木もれ陽の森 梢月亭観月台
茶   阿里山金萱 濃香 台湾
菓子  福福餅 丸亀
他、第一席と同じ

キャンプ場を後にして、九十九折の山道を行くと奥津温泉郷…川のせせらぎが、せせらぎを通り越して、昨日の台風の雨を集めて怖いくらいの怒涛の流れであったが…日帰り温泉で、骨の髄まで温もる至福を味わったのは…要するに、梢月亭で自分でも気づかぬうちに骨の髄まで冷え切っていたからなのだろう…泉質はハードコアの濁り湯ではなく好ましい透明で若干ピリピリくる鮮烈、湯温も熱めで目が冴える。奥津温泉と云う提案は、今思い出しても其の時に体が温もる具合が蘇るほど、有り難いものであった。其の後は、久米の仙人で有名な久米の道の駅でゼータガンダムを拝観、私は地元のなた豆茶と煎茶を一袋ずつ購入し、津山市に下って大名庭園の名残りである衆楽園を巡って野鴨や鷺たちの軋轢に癒された後、一度行った事有る、例の自然のふしぎ館に再訪…以前はあったとおぼしき、人間の赤ん坊のホルマリン漬けが、撤去されて、無かった事のようにされていたのは時勢なのだろうが、不意打ちのように見せて来る、熊の胃袋の中に収まった人間の足首の写真には、当館の真髄の健在ぶりがしたたかにアピールされていた。そして諸々への感謝の辞を述べて解散。

此れまでの茶会&旅行は…行った先のあちこちの見所を巡り、御当地の居酒屋で名物料理に舌鼓を打ちバーを飲み歩いて夜に蠢き、気に入った自然や旅館の部屋などで野点や茶会を営む形式で、茶も抹茶オンリーであり…其れは其れで人生にとって有意義で楽しいものであったけれども、此度は趣向を一変させて…山奥の亭と云う一ヶ所にじっくり腰を落ち着けて自然あるいは己とじっくり対峙し…自ら火を起こして食物を焼く原始に立ち返るバーベキューにも挑戦し、茶も、抹茶ではなく煎茶(日本の玉露ではなく、台湾の烏龍茶ではあるが)に挑戦、という形で、旅と酒食と茶の形において新境地を開いた感があった。バーベキューや月見飾となると軽自動車の私一人で全ての材料をまかなうのは不可能であったからメンバーそれぞれに割り振った訳だが、其の結果、私だけでなく他のメンバーそれぞれも当事者として創意を発揮できる機会を設ける事が出来た事が、何よりも一座建立において有意義であったように思う。今後の定番ともなり得る手ごたえは確かであった。


道具組の再現

少しだけ道具の説明を…急須は、IT企業特有の傲岸さでプロバイダーが急にホームページサービスを一方的に打ち切ってきたが故に今は無き「日本焼物紀行」の中の「因州数奇修行」で御助けした逸品。此れにはいきさつがあり…長い間出番が無かった故に、一度、人に譲った事があったが、此度の茶会を思い立って、主役となる急須を思案した処、此の急須以外にないと思い至り…恥を忍んで、無礼を承知で、取り返して来た次第…「因州数奇修行」での描写を再録しておく。「店員が品を包んでいる間、ほとぼりが冷めぬ強欲が小生の目を、死角にまで向かせた。壁際の棚ばかり見ていた迂闊、入ってすぐの棚の下の方に隠れるようにあった品々に、すうっと手が伸びる。民芸神の手と重なるように、とある急須を手に取った途端、中々いいじゃないか、という、友人の声なのか自分の心の声なのかその両方が同時だったのか判然せぬ混乱から放射した一条の光に照らされ、目に適った急須が現出した。正面から見ると実にいかつい、爬虫類然としている。恵まれなかった人の魂の六道輪廻のようなトロミのあるものが、はちきれんばかりに止まっている。鎬が真を通した取っ手の付き方はがっつり容赦ない。獰猛で性格も暗そうだ。正面から見ると、米海軍からの魚雷攻撃を回避中の戦艦武蔵のようだ…」

茶器は、基本的には煎茶用の揃いを所持していないので、猪口で代用した。其の結果、茶会の後の酒宴では酒器としての本来の用途も成し遂げたがため、茶器と酒器の融合即ち茶会と宴会の融合さえも果たした新境地の、影の立役者でもあった訳だ。ただし、萩焼に関しては、煎茶用の薄作りである。藻掛けとは、海藻を器に巻き付けて焼成する常滑焼独特の技法で、藁を巻く備前の火だすきに相当する。ナメクジが這ったような薄気味悪い模様がついているのが鑑賞の見所だ。盆は習作として私が彫り、最初と最後だけ漆で拭いた。抹茶でも盆略手前と云うのがあるがあくまで変則…煎茶では盆の効果が、其の場の世界観をかなり仕切ると我ながら感じ入った。図案は与えられたもの。茶合は、煤竹にやどかりが彫られ、逸峰刀と銘が刻んである。此れもいわくつきであり…数年前、とある骨董屋のワゴンセールを何気なしに漁っていた処、引っ掛かりのある銘が刻まれた茶合を手に取った。五百円であった。師匠の先代に見てもらった処、門前小僧的な感じで先先代に習っていた、額縁屋の息子であったらしい「タカタのハーチャン」なる人物の作と云う鑑識がついた。其れが県境を越え数十年の時を越えて巡り巡って同門の曾孫弟子の私の手元に届くと云う巡り合せの僥倖である。

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観月茶会記 未完成

来週、事の次第をもう少し肉付けして正式な茶会記としたく…此度は概要のみを取り急ぎ以下に公開します。


木もれ陽の森の梢月亭の観月台からは、時刻、方角の関係で残念ながら月は見えず…且つ、思いの外森の夜気が冷えるのもあって、致し方なく、亭内に月見飾りをしつらえる。

月見飾 三宝に福福餅を五個盛る
    左脇に竹筒を置き、芒を生ける
    右脇に蜜柑、柿を盛る

そして、野点へと繰り出す。


第一席 観月茶会

日時  2019年10月13日 20時頃 望月
場所  岡山県津山市 木もれ陽の森 山上広場
亭主  黒曜堂主人(←私)
客   香川住、京都住
半東  細君
湯沸  コールマン
盆   栃 拭漆 破れ蓮図彫刻 東水(←私) 刀
茶合  煤竹 やどかり図彫刻 逸峰 刀  
茶   梨山涎蜜茶 台湾
急須  温泉津焼 森山窯
茶器  萩焼、南蛮手、常滑焼藻掛、赤絵
菓子器 宝袋蒔絵 黒漆塗平皿
菓子  松の実、黒大豆


第二席 想月宴会

山上の観月野点の余韻も冷めやらぬ中、月見飾を眺めながら酒宴へとなだれ込む。

日時  2019年10月13日 21時頃
場所  岡山県津山市 木もれ陽の森 梢月亭
酒   賀茂鶴純米吟醸一滴入魂(西条)、栗焼酎無手無冠ダバダ火振(四万十川)
酒器  朱漆面取 片口
猪口  萩焼、南蛮手、常滑焼藻掛、赤絵
肴   じゃがりこ、あたりめ、たけのこの里、五百円玉大の煎餅にバター風味のクリームとアーモンドを載せたつまみ(←名前が分からない定番のつまみ)


第三席 朝の茶会

梢月亭内にしつらえた月見飾りを観月台に出し、杉木立の隙間から差し込む朝日を浴びながら月見の名残りを惜しむ茶席を設ける。

日時  2019年10月14日 9時頃 青天
場所  岡山県津山市 木もれ陽の森 梢月亭観月台
茶   阿里山金萱 濃香 台湾
菓子  福福餅 丸亀
他、第一席と同じ



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今週休載

故あって今週休載…次回は10月20日です。

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台風祓い

近所にむせ返るほど匂い立つ金木犀、青青と実る南天は色付く機会を今か今かと伺う…先週は用事があって出来なかったが、今週はきちんとプールに通う事が出来て、泳ぎ終えた後、心身が活性化してやおらどこかに行きたくなるほど元気が嵩じるが、その機を逸すると途端に土嚢みたいな倦怠感にも襲われ、水泳の麻薬性を思う…今知った事で、恐れていた事だがやはり台風が発生してしまったか…進路が大きく逸れる事をひたすら祈願する。ラグビーを視聴…ルールはほとんど分からないけれども、トライで5点、キックでポールの間にボールが入ると2点とか3点入ると云う事は分かる…ラグビーはスポーツの中では、より祭りに近いなと気付く…ふんどし一丁の男たちが御神体を取り合う日本の裸祭りに近い感じ…ロジェ・カイヨワ曰く、祭り=戦争なのだろうが…それにしてもイギリスは…経済や安全保障だと国家単位で動くのに、ラグビーやサッカーのようなスポーツだと、イングランドやスコットランド、ウエールズなどと地方ごとに出場して、一国で複数のチームを出場させるのはずるく思える…元元英連邦内でやっていたスポーツの名残りなのだろう。

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