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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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隠岐の旅 第三回

今年中はもうロックについて書くつもりは毛頭ない、消化試合の態…モーニング隔週連載の最新のへうげものも大いに楽しめたが、コミックス最新19巻も早速入手に及び、速攻で4回は最初から最後まで舐めるように読み返し、その度に、毎度のことながら…一コマ一コマにいちいち腑に落ちる味わいとおかしみ…男たちの確かな意志がそれぞれのやり方で生き抜かれる中での思惑の交錯と移ろいの確かな展開と、それに裏打ちされながらも飄々と宙を浮く創意の数々…清正公(せいしょこ)最期の渾身ロケットパンチに男の生き様ぎゅっと凝縮。土曜日のリーガルハイのスペシャルドラマも感慨を催すに足るしっかりした内容であった…数年前のスペシャルドラマではいじめ問題を扱う中で、ある閉鎖空間に複数の人間をぶち込んだら自ずと醸成される中心なき全体主義という人間社会の本質にまで言及する濃い内容であったが、此度も医療ミス問題に深入りする過程で自ずと自然科学の本質としての非人間性/反社会性と、一般的情緒的人間社会との相克を炙り出す、問題意識の高い内容であった…この事について語ろうとしてハタと想起されるのは隠岐の旅での一考察に含まれる故、ここでは詳らかにはしないが、いずれにせよ小生という人間に打ち込まれるハーケンの如き根深い問題、己自身に付会して当たらねばならぬ事ゆえ…恐らく、隠岐の旅第四回か第五回において論述されるであろう。

※写真など掲載されていますがなにぶんネットデジタル社会の事ゆえ、それが事実であった事の証明にはならぬ事云うまでもありません。

※分かりやすく云いますと、以下の、これから書かれる事は全て虚構です。

何だったか、今しも遠ざかる記憶と空しゅうなる臨場感の梗塞の果て、失った情熱の熾火を掻き起す努力の詮無い事に流される浮世の常、無様に残る写真に何がしかの思いの残滓をなすり付けるが関の山、淡々にして清々ならぬもどかしい切羽詰まりにて些かも奮起せぬ老いの小文にて候。何としても小ざっぱりと省略しながら記す所存。

二日目の朝、隠岐諸島島前西ノ島は別府港を望む民宿と旅館のグレーゾーンを徘徊する立ち位置の、しかし釣り宿程の偏りはない感じにえげつない民芸がドカドカと幅を利かすしつらいだったか…玄関先の床に直置きされた段ボール箱二箱ほどに、隠岐特産の檜扇貝の貝殻がてんこ盛りになっている。色使いが派手な帆立貝のようなものである。段ボール箱の蓋のようなヘレヘレにマジックインキで、「自由に持って行ってください」的な事が記されておる。貝殻には目の無い小生、これは僥倖、紫、黄、赤、朱、など何とも色鮮やかな貝殻群に朝っぱらから手を突っ込んで、己の目にかなった逸品を7枚程お助けしたのであった。後に出会う土産物屋で、檜扇貝の貝殻三枚で500円などで売っていたのからしたら誠に有り難いサービスである。会計を済ませ、別府港付設の観光協会に向かう…その日は自転車で西ノ島を巡り、夕刻17:00過ぎのフェリーに乗ってその日の内に島後の西郷港に行く予定である。

 

綺麗に仕上がった建物の観光協会の窓口前に自転車が十数台置いてあるのでこれを借りるつもりで窓口で手続きを取る。話を聞くと国賀海岸まで30分ほどで着くという。時間はまだ午前8:45くらい。元来方向音痴な小生でも午前中に到着できれば御の字だろうと踏む。電動アシスト付き自転車というものに初めて乗るも、なかなかに快走である。すぐに山越えを免れなかったがアシストのおかげでわりと助かる。逆にアシストがなかったら、この島のサイクリングは絶望的、この後、半端無く急激な坂道の九十九折に苦悶するのであった、アシスト付きであっても…道行くごとに現れる目先の看板に惑わされて横道に突入する度にいつのまにやら目的地と全然異なる島の深部を彷徨する羽目に陥り、ついには田んぼの畦道をアシスト自転車で爆走、大きめの街道と田んぼの畦道を無為に周遊していて迷宮のミノタウロスさながらの放牧牛は人喰いならずも徒に涎をもぐもぐさせるばかりで宛てのない暢気…このままでは埒があかぬ、という事で勇躍、その近辺を何度も出入りしている汗だくの小生を見かねては訳知り顔をしているのを小生は知りつつも人見知り頑な故に素通りしていたのだが…道端で草を刈るシルバーセンター的な熟年氏に素直に道しるべを乞うと…その島人から「この道を迷わずまっすぐ行け」という人生訓、トンネルを三つくぐったところで大きな行き先表示の看板があるからそこから右に山道に入れ、という貴重な具体的示唆を授けて頂く。目先に沸き立つ分かれ道におろおろ惑わされず、大道を悠々と行けばよかったのである。

 
迷い道で通りかかったビザールな建物。

 
体を一回転させた途端、方向感覚を失う小生…あちこち無駄な横道に行き行きて流れ着いたは…西ノ島の、蟻の腰のように細まった深い入り江…国賀海岸へ行くにはアンポンタンなる遠回りとなり…閑散とした寂寥に見舞われる。


ようやく往く道が定まり…参拝したのは由良姫神社。その門前の烏賊寄せ海岸と見張り番所の光景…「珍日本紀行」にも所収されているビザールスポットであるが、名物の、海中鳥居まわりの書き割りの烏賊人形は撤去されており、今ではその跡の鉄パイプが海面に突き出るのみ。


境内脇の森の中に…巨大な烏賊人形が数体、蔦まみれに。


トンネルを三つ抜けて山道を自転車で上っていくと…間近から牛の声。黒毛の隠岐牛が所構わず森の中で放牧されている。この牛には帰路にも出会うが…今度は下り坂を高速で下りていると…この牛が何を血迷ったか道路のガードレールを前二本脚で越え、垂れ膨れる腹が当該ガードレールに閊えて身動きできぬ危機的状況、しかも、一瞬見ただけだが、牛の性器と思しき尻の穴から、桃色のぬらぬらした帯状の膜のようなのを垂らしており出産が近い様子、作業服の飼い主が大声で電話していた。

いろいろあって国賀海岸の展望台に到着。午前10:30くらい。30分で着くと云われていたが、結局1時間半ほどかかったが問題なし。海にせり出す断崖の背中に居る。写真のように向って左側も、多分名のある断崖絶壁。穏やかな陽光きらめく日本海。

向って右側の奇岩風景。展望台がある断崖絶壁を下った先の磯辺には諸星大二郎的な社が…。

展望台から、さらに向かって右側にある断崖絶壁。快晴、白い光に霞む…この断崖絶壁「摩天崖」の頂上には遊歩道で徒歩で行けるようだ。高さ257m、海蝕岸では日本一の高さらしい。そのためには、一旦崖下の谷底の磯辺まで下りて、そこからこの崖の登頂を目指すだろう。何度か、熟年団体客がこの展望台に乗用車やバスで乗り付けては、ひとしきり写真を撮ってさっさと帰って行った。昨晩、宿で同席した団塊男氏も立派なカメラと三脚で撮影していたが、むこうの会釈を無視して一瞥くれた後、トイレ脇に自転車の施錠をする。あの崖っぷちを目指すために…。展望台廻りのオリーブ畑のような斜面に散開したシルバーセンター系熟年爺婆群が、草を刈りながら、小生の挙動を遠巻きに監視する。摩天崖を目指すのはこの時点では小生一人のようだった。



崖下の神社。火野葦平の碑がある。九州の耶馬溪よりもこっちの方が凄い、という内容。磯の岩の紋はのたうちまわっており、露骨に溶岩、火成岩である。遠望するのが目指す摩天崖。

 
展望台を下って後、遊歩道を登山中。間近に迫る摩天崖。登頂の黒いゴマ粒のような点は放牧された黒毛和牛である。背中にじりじり日差しが照り付け…展望台付近の斜面に展開する草刈の島民の姿もようやくごま塩程度にまで小さくなり…自然の景物と対峙しうる静謐の時間である。
 
単独での摩天崖登頂に成功。写真左下の磯辺に、前述の神社が鎮座するのが見える。崖上にて黙る牛、消えた波音、潮風のみが異様にびょうびょう耳元に吹き付ける…牛の親子が小生に怯えるので絶壁の突端まで行くことかなわず。親牛の鼻柱には黒蠅がびっしり蠢き、子牛は小生の動きの一つ一つにいちいち怯えた反応を示してくる…それよりも何よりも、写真では分からぬが牛糞の結界が凄まじく靴の溝には致し方なく牛糞が詰まる。明らかに牛糞のおかげだろう…火成岩質が、ふかふかの肥えた土になっていた。


下山。その途中の荒廃した建築物の中に、ゴミ屑などを無暗に合体させた現代アートの作品が格納、保存されている。昔の、一過性に終わるべくして終わったイベントの…主催者らの檄文も掲示してあるが読まなかった。小生が谷底まで下った時、独りの熟年氏が、傘と缶ビール500mlを詰めたビニール袋をぶら下げた荒んだ風情で、小生が登った道を歩んでいた。時間は午後12:30くらいだろうか。谷底までおりて展望台まで登り、遥か摩天崖を望むと登山道の中腹をその人が登る様子が山水画の人物の豆粒のように見えるのを確認した。ベンチに腰を下ろしてしばし休憩、62円のペットボトル茶500mlをいっきに飲みほし…再出発のため自転車に足をかけた。

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