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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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隠岐の旅 第五回

胸の動悸じみたザワツキが一向に解消せぬ…先週までは最高気温20℃、用心してコートを着たらば暑苦しくて悪態ついていたくらいだったのが此処に来て急病の如き厳寒、IT業界の高飛車な商売にむかっ腹を立てる度に無聊を託つ怒り心頭で胸糞悪さがじたじたと心と体の接触面をある種の癌細胞のように滲み侵し…電話会社から書面が来て「あんたらがパソコンでインターネットしているADSLはダサいからもう止めるわ、やってる奴も少ないしこっちが面倒だから、替わりに今一番イケてる感じの流行のWiFiにしとけよボケカス、それと、老婆心ながら言っとくけどガラケーええ加減やめろよダサいから。スマホにしとけスマホに。ちんけな自尊心でお高くとまってないで潔く流されろょ!」、といった内容の最後通牒を突き付けられ…一方的な通告の文言が事務的に素っ気なく刻印された紙と、無暗に賑やかなばかりで意味不明な料金プランが空虚を物語るチラシが一枚ペラッとしているばかりの有様で激昂、具体的に何をどうしろと云うのか全く埒が明かぬからショップに行って順番待ちで2時間も奪われ、スマホの事で頭一杯なアホの中坊がバカ騒ぎしながら屯するのに憤懣やるかたない惨めな気持ちを嵩じつつ…通告の内容を店員に問い質す…すると予感しうる事ながら当方にとって、はなはだ手間と不利がのしかかる、チラシには一言も触れていない新事実の状況ばかりが芋づる式に明るみになり…しかもそれは此方が事前に考えて自ら問うた挙句の事であって此方が黙っていたら上っ面の料金プランのことばかりしゃべくり上げる始末で店員からそうした重要事をお知らせする姿勢は全く見られない詐欺紛いの接客である…そっち(電話会社)の都合でADSLサービスを停止するのは仕方ないとして結局WiFiとやらにしたら当方のメールやホームページのアドレスはどうなるのかと此方側から問うてみると…「消えてなくなります」の一言。アドレスを維持しようとしたらどうすればよいか問うても「知りませんよ、そんな事。別途、金出せばいいんじゃないの。それでも、期限があるかもしれないけど、自分で調べれば?」などと、しれっと云うてくる…ふざけんな、って話で、腸煮えくり返るんだけど…。客にとって大事な事には何一つ斟酌、提案せず、一方的にスマホだのなんだの下らんプランをゴリ押してくる上から目線の商売…あるいは原色のデラックスフォントが厚かましい煽りで一杯な、そのチラシの空っぽな好景気感とはそぐわぬ感じに、隅に、滅茶苦茶細かい字で何とでも解釈できる玉虫色ながら政治的に厳格な注意書きの文言が印字されておりどうもその文言が決定的な意味を持つ事も知らされ、その、大手IT業者の悪徳業者まがいの卑劣なやり口には開いた口が塞がらぬ。久しぶりにタモリ倶楽部を見ると浅草の老舗砥石屋さんでの砥石特集であった。今、ガチで天然石の荒砥石を欲している小生からしてみれば僥倖この上なく、学ぶところ多い内容であった。面白味の誠実とは何たるかを心得る番組内容に脱帽。

というわけでネット回線の環境の変更を近日中に実施しなければならぬのでそれがしくじった暁にはこのブログもおしまいになる可能性をここに報知したい。来週以降ぱったり更新されなくなったらそういう事情である旨、予め此処に伝えるものです。

以下、フィクションです。

さて、恐らく18:30頃、日もすっかり暮れた海を、強力な内燃機関の活動を髣髴させる波動を熱濃く撒き散らしながら…島後の隠岐の島町の玄関口、西郷港に帰投したのであった…例によって団塊団体客らは待ち構えた大型バスにどやどや吸い込まれて島一番のデラックスなホテルへ直行した後、個人客らも三々五々散り散りばらばらに…街灯の少なく暗い港から消えて行くと図らずも取り残された小生は…今宵の宿を目指して地図を開いても暗くて見えず、疎らな街灯を頼りに見知らぬ道を心細く、…ようよう辿り付いたのは、昨日泊まった宿よりも更に値を落としたビジネス旅館…木造二階建て…玄関で靴を脱いで入っても真っ暗、人気に気付いた、そこの経営者の娘からのそのそと2階の部屋まで案内され荷物を下ろす。…部屋にはトイレ無し風呂無し、板敷の窓際に手洗いがあるが締まりの悪い蛇口からぽたぽたする白い陶製受皿は錆臭く焦げ茶色に染まる…朝飯だけ頼んでて晩飯は無い。予約する時に、聞いてもらえたら近所の店を紹介しますよ、と言われていたが…唯一の対応者の、眠そうな娘に聞いてみると、「近くに店はありませんよ」。現場に行けば話が違う、という事など珍しい事ではない。部屋の鍵は、出掛ける時は玄関をしきる事務所の出窓にある皿の上に置いて行くよう言われ、置いて出るが…その事務所には基本誰も居ず、旅館の人は奥まった部屋でぬくぬく炬燵に入っているだけなのだから、よく考えたら誰でもその鍵を取って自由に客の部屋の中を物色できるわけで…今更心配しても致し方なく元来た暗い道を、20分ほど歩いて港近辺に戻る…小寒い中…「おでん」という字が目に入った赤提灯の引き戸をドガラッと開けると、奥行の無い店内、客は、座敷席にサラリーマン二人が一組だけクダを巻き、小生はカウンター席に座る…煮魚定食と生ビールを頼む。女将が一人で切り盛り、定食を食い終わって焼酎飲みながら小腹が空いたらしきリーマンが女将にお勧めの一品を訊ねるに、金離れの良さそうなリーマン相手に店の一押し「山賊おむすび」なるものを提案、早速受注するやりとりを注視する小生…鰈の煮物は…酒をたっぷり使って煮たのだろう、味はしっかり浸みながらも身はふっくらに仕上がって美味、ただし、また出された定番の烏賊の刺身は成形した糊蒟蒻のようにねっとり不味い。山賊むすびというから豪快に大きいのかと思いきや普通サイズよりも小さめ、具材に梅や昆布など複数ぶち込み、飯を包む海苔に隠岐特産を使用しているとはいえこの程度のおむすびが一個1200円もするとは尋常でないぼったくりである。離島に着いたらそこに行くしかない蟻地獄のような飯屋で搾取された気の毒なリーマン組は退散し、小生、ふくふく割烹着の女将とサシで呑む流れに。定食を終え、静かにおでんと酒をたのむ…豆腐、大根、玉子、すじ肉、厚揚げ…出汁は普通である。よく味の浸みた絹豆腐を白川郷のドカ雪のように大いに乗せられ…隠岐の島の地酒で代表銘柄は二種、隠岐誉と高正宗であり、前者は熱燗、後者は冷やに適しているとの由…高正宗をたのむと盛りこぼしで出てくる。枡を受け皿としてコップから溢れださせる…江戸の粋の名残り…以前にもお客さんに会ったことがある気がするなどと、一見さんの客の誰にでも云っていそうな安いセリフを聞き流し…小生の事情について振られても悉く鎮火させるので致し方なく女将の身の上話など聴くともなく聴きながら…温暖化のせいかここ数年は烏賊が不漁である事など…いつの間にかビールをあけて気安くなっている女将に頼まれて赤提灯の電気を小生が消した後もちびちびやる…隠岐の夜はしっとり更けゆく。小水後、勘定を済ませて…ひんやり湿った潮風に吹かれながら鱈腹、ほろ酔いで宿に戻る。荷物は盗まれていなかった。錆臭い、小汚い共同風呂…一旦熱湯を溜めたら後は熱力学の法則に従って冷めるだけで追い炊き不可の…旅の孤老と小生で二人、ぬるま湯に黙って浸かる。共同トイレも、木枠の窓からの隙間風が深刻で、錆の滴が便器にしたたる。糞尿と錆の臭いが噎せ返っている。冷えた部屋に戻って煎茶をすすり、テレビをつけると、この宿には衛星放送無し、NHK総合とNHK教育と民放2局の計4つである。錆臭い水で歯を磨き口をゆすぐ。


早朝、火災報知器のジリリリリ警報音で強制的に目を覚まされる。廊下に出ると他の客も廊下に出て様子を伺っているが、どうも報知機の故障のようで、そのうち音が止まる。それに対するフォローの館内放送なり、旅館の人の説明も全くない。朝食のため1階の大広間に下りる…床の間飾り…三幅対の掛け軸、巨大獰猛民芸土瓶、場違いに陽気な大黒天、ガラスの浮き、商売繁盛の幸運を召し取るしゃもじ、薄板に白磁、そば菜のような楚々とした花を生ける。朝食にまたしても烏賊の刺身、不味い。それ以外の飯や焼魚、香の物に味噌汁は悪くない。


宿の玄関先のしつらい。雌雄の雉、海亀の剥製、サソリなりで飄逸なる瓢箪、毛深いがさらさらトリートメントでむさ苦しくはない白髪の鬼面、なんちゃって円空仏、火鉢、コンセント、安手の抹茶茶碗群…「日本の原風景」


使いこまれた常滑朱泥急須は必須。

朝の港…観光協会に行く。島後は大きいので自転車で巡るは不可能、レンタカーの手配を依頼すると、手際よく、最安値のレンタカー屋を手配してくれた。しばらくすると、何とも怪しげな風体の、レンズの半分がグラデーションのティアドロップ型サングラスで中肉中背でハンチング帽、薄茶のストライプのシャツにツータックのダボダボズボン…その他身なりでは表現しきれぬような胡散臭さをその人間自身から発揮しつつ…そのレンタル屋の親爺がやってきた。車に同乗してまずはレンタル屋の事務所に連れて行かれ…四畳ほどの事務所に通され…便利屋稼業を営んでいるようだ、隣では奥さんが美容室を運営。小生の免許証をコピーするのに手間取りどこぞへ大声電話、結局コピー機の電源が入っていなかったという落ちまで1時間ほど浪費されるも仕様がない。この親爺さんが喋る言葉は滑舌の悪さと発音の早すぎによって最後まで全く意味は取れなかった。6時間で4000円である。

三菱自動車のトッポをあてがわれ…途中、珍木銘木の類の、獰悪なる杢目を期待して、うろ覚えだが「もくもく館」という物産屋に立ち寄るが…ちまちました、土産物の、焼杉のコースターの類しかないので失望を禁じ得なかった。さて、目的は此度の旅の最大の目的にして山場、黒曜石である。事前の調べによると、島の北の端、久見漁港あたりにソレがあるらしい。地質学上、黒曜石とは火成岩の一種にして、珪素含有量が多い流紋岩の溶岩が急速冷却されて生成されたものである。人類史的には…古代…打製石器~磨製石器~青銅器あるいは鉄器という道具ないしは武具の素材史において…打製石器の一種ながらその特異なガラス質ゆえの鋭さによって性能的には磨製石器の先駆を為しつつ鏃やナイフに供され…その色味と物性は系譜に納まらぬ異質を燦然と屹立させておる。奥に光を湛えたその漆黒と鋭利は金属器の先駆もなしている事からも…思い起こせばその後の人類の産業の核となる陶磁器とは土と石の胎土にガラス質の釉薬を掛け金属呈色させたもの、つまり古代の素材史の総決算と云えるのだが、土と石と金属を結集させ得たのは他ならぬガラスであり、ガラスの先駆が黒曜石なのである。石器とも金属器ともつかぬ中間の始祖鳥的存在が天然ガラスの黒曜石であるとすればこの重要性には震撼させられよう。何よりも早く、道具を作る者の手を切り、ついで敵や獲物の息を止める厳かな鋭さ、その妖艶なる素材感にまず心惹かれ、否応なくそそられるのであった。ぜひとも実見し、己の手中に納めねば気が済まぬ、という熱に疼く日々が続いたのであった…。

島の道をひたすら北上、地図だけで分かるはずも無く、誰も居ない久見漁港に車を置いて近所を数時間彷徨しても見つからず…簡易郵便局のおばちゃんから手がかりももらい…それでもよく分からず…もう諦めかけたその時、港から川沿いに伸びる未舗装の、道というか単なる隙間に気配を感じて歩いてみると、小屋のようなものがあった。出発して2時間くらい…午前10時半頃か。

黒曜石の店あるいは加工場


暖簾のように柿が吊るされ…しかし、周囲にも中にも人は居ない。引き戸に鍵はかかっていず、がらりと開けると、店と云うよりも純然たる作業場、グラインダーやら削岩機などの設備が無造作に散らかり、そこらじゅうに黒曜石の原石が転がっている。しかし、もぬけの殻だからどうしようもない。車に戻って、控えていた電話番号に電話すると…長々と待たされたあと、婆が電話口に出てきた。店に来ているから対応していただきたい旨伝えると…婆は腰痛で遠方の実家で療養中にて動けぬ由、爺は朝からサザエ採りに出かけて昼には戻ると思われるが連絡はつかない、実質、黒曜石店を経営している息子氏は港の方まで出かけており昼過ぎには戻る予定だが、という。爺でも息子でもよいが何時に店に戻るのか、正確な確約を求めるが婆の返事は要領を得ぬ、小生が諦めてくれるのを待っている感じであるが…遠路はるばる隠岐の島くんだりまで来て、第一の目的事をすごすごと諦める訳には参らぬ、此処が踏ん張り処ぞ、と食い下がって…「私は黒曜石だけのために〇〇から来ましたので、今日中に何としても黒曜石を入手したい、手ぶらで帰るわけにはいかないのですが…」「いや、でもねえ…」など執念深く押し問答を繰り返す内、ねを上げた婆が、「直接息子に連絡をとってほしい…」という事でようやっと息子氏の携帯電話番号を教えてくれた。すぐメモって息子氏に電話すると…出てくれた!小生は見知らぬ番号からの電話には出ない主義なので危ぶまれたが助かった、すかさず要件を伝えると、さしたる当惑も露わにされず、午後3時頃には店に帰る、帰ったら電話連絡差し上げる、という約定を得る。そういえば、屋号の「八幡黒曜石店」というのも…八幡製鉄所しかり八幡大菩薩、八幡様といえば鉄の神様、であり…自ずと鉄と石との因縁に黒曜石が存在する事を証つける。お店だから行けば誰か居ると早合点していたが、実際は作業場でありいつも人が居るとは限らないようで、事前に連絡を入れておけばよかったのだろうが、上々の展開をゲット出来たから結果的によかった。唐突に訪れた正念場を間一髪で乗り越え…安堵する。

黒曜石店の店主との会合まで時間があるので、近辺を観光する事にする。珍木奇石景勝古刹の一大集積地である隠岐の島町であるがいちいち巡っていたらきりがない、時間も限られた中で、…

 
五箇地区まで戻り、由緒正しい古刹、水若酢神社を参詣。隠岐造りという独特の建築様式らしい。孤老旅行者が三脚で撮影に励んでいた。


隣接する隠岐郷土館。訪問者は当然小生一人、小生の来訪を発見した二人の店番の女性が咥えていたアンパンを慌てて置いて立ち上がる。何しに来たんだと云わんばかりにまじまじと小生の挙動が監視され…小生は入館料を払う。地質、動植物、古民具農具漁具、竹島関連等、民俗あるいは博物感覚満載の望ましい雑多である。

 
嘘か真か分からねど…。

 
臨場感あふれる猛禽類や亀、テンの剥製展示。

 
島の子供らの遊具。「でっこ」「バッコ」というらしい。牛の角に見立てて角突き遊びに興じたとの事。こんなので目を突かれる事故があったら失明を免れぬ、それほどまでに枝先を尖らせている。


脚をピンと伸ばして、庭先で吐血して死んでいた珍しい小鳥。雀ではない。


竹島関連の資料室。隠岐の島民と、朝鮮の人が一緒に漁をしていた記念写真などあり。声高に複雑な歴史的経緯を説明する資料ビデオ映像垂れ流し空間である。


わさわさしている呪的民俗祭儀が天上から舞い降りる…太陽神と月神への犠供か。


田打ち車の群れが、滝壺の飛沫のように見える。田打ち車とは、田んぼの草を根っこから除去する道具である。

 
烏賊釣り漁船の漁具である。

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