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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「wilson pickett/the sound of wilson pickett(1967)」 2008年10月5日 先負  洟小雨

wilsonpickett.JPGwilson pickett/the sound of wilson pickett(1967)20p2-2380atlantic
charles chalmers,andrew love&james mitchell,tenor sax;
floyd newman,baritone sax;
gene miller&wayne jackson,trumpet;
chips moman,lead guiear;
jimmy r johnson,rhythmguitar;
tommy cogbill,bass&guitar; junior lowe,bass;
spooner oldham,piano&organ;
roger hawkins,drums.

 近所の莫迦犬ようやく鳴き止み、雨垂れしとつく頃合ですし、少しく思い出を。安芸国賀茂荘の中合いに、小田山という、取るに足らぬ、温泉饅頭のような形(なり)の山がずんぐりしていて、小生はそのふもとで成人まで生活しておった。かつて遠足や小さい仲間らと登ったことがあったが山頂間近で山道が下りに転進するため容易には登頂させぬ山である。200か300mくらいの高さの山である。別のルートからの山道だと頂上までいけるという伝説があるが確かめられたことはない。大学校在中、ふと、この見飽きた小田山に、一人で分け入りたくなった私は、心の共にウィルソン ピケットを選んだ。登山にソウル、しかもスタックス系であるからして、楓や漆や三椏がざわつく寒々しい晩秋の単独登山で生ずるであろう弱い怯えをあっためてくれるのは、この黒い男以外には考えられなかった。オーティス レディングだと、ちとブルーが強すぎるし、サムとデイヴは元気がありすぎて。CDから音を写した30分テープを、10年以上前から実家にある重すぎるラジカセに仕込み、大きい電池を6個充填して、ラジカセ片手に山に入った。しばらく登ると山の現場の、荒れた風景、使っているのかいないのか見当つかぬ飯場や無造作に佇む重機、といった殺伐から逃げるようにして早足になると、国有林につき立ち入り禁止、と書かれたさび付いた看板と柵が道を塞ぐ。構わず柵を抜けると、小山といえども涼風が下界との区分を知らしめるし、道は両脇の雑木の繁茂によりどんどん狭まる。決して勇敢ではない小生、もう引き返したいところであるが、ここで、持参したウィルギリウス、もといウィルソン ピケットの歌を聴く。空は彼のジャケットのようにやけに青かったり、しかし風は相変わらず不吉な中、熱すぎるソウルが短くも吐き出される。音量最大にしても寂しい山中ゆえ、木霊せぬ消え入りようは致し方ない、できれば山笑う如くこのソウルが山ごと音響することを願うが、結局聞こえているのは私だけのようだった。ソウルの二つの潮流、スタックスとモータウンとの比較論はここでは無用に小賢しいだけであろう。ただ、ショウビジネスも何も知らぬ道端の南部の黒人が気ままによい声で歌っているのを、さっとスタジオに拉致して吹き込もうとするメンフィスの新鮮な獰猛が録音に生きていたし、だからこそ下らぬ傷心の東洋人の即席ウィルギリウスにも成れたのであった。

 I found the one. としきりに歌うピケット。無論、彼にとってそれは躊躇無く、loveなのだろう。同じアルバムに、I found a loveというナンバーもある。そうと分かってはいても、私は、愛とは異なる、他ならぬ一つのものを見つけたと、彼が歌っているように聞こえたのだった。

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