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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「wild man fischer/wildmania(1977)」 2008年11月9日 先負 卑寒

 学府在中に、研究を怠けながら図書館でしばしば、小学館の「世界美術大全集」を眺めていた。世界と言いながら西洋画しか扱っていない偏狭に疑問ありつつも、カラー図版の多さ美麗さは他の美術全集中でも白眉であろう。26巻の「表現主義と社会派」が小生の好むところである。先週末この26巻目を、古本屋で、一冊あたり定価20000円のところを9500円で購入。帰路、無茶苦茶重かった。ドイツ表現主義の炎がいま少し収まりつつあった1920年代、第一次世界大戦による資本権力と科学技術の兵器化の悲惨を踏まえて、まことに愚かしいほど率直で且つえげつない抉り方を憚らぬ一派が登場していた。本書では新即物主義としてまとめているが、名を挙げるとオットー・ディックス、ゲオルゲ・グロス、マックス・ベックマン、ゲオルク・ショルツなど。目を背けたくなる情況をあまりに直接的に分りやすく「表現」するものだから何だかひどく楽観的な気持ちにすらなる激しい絵画群である。政治家か資本家とおぼしき男の脳みそがホカホカのうんこだったり。無論、1930年代のメキシコ壁画運動も見逃せまい。このあたりの絵画潮流はナチス台頭後、ダダ、キュビズム、フォービズム、シュルリアリズム、未来派、抽象、表現主義らと共に退廃芸術展としてまとめられ、ナチスの思惑に反して盛況のうちに打ち切られた経緯は有名であるが、寧ろこの大きい、公認の絵画史から抹殺されたような、アドルフ・ヒトラーが収集、顕揚した擬古典主義、擬ルネサンス調の絵画のある種の退廃が気になりもする。ナチス承認のあの絵画展の画集を入手したいものだし、いわゆる世界絵画史はヒトラー好みの絵画に対する論考に美麗図版を添付してページを割くべきである。

 さて、ワイルド・マン・フィッシャーである。米国。特に言うべき事は無さそうである。男が独りでアカペラで、ただ独り言を叫ぶように歌っているだけである。内容は、中学生レベルの英語力でも分る程度の、他愛の無いことである。ごくたまにギターだけが入るが、その必然性など毛頭無い。音楽史上の位置付けだとか評価だとかも、もうどうでもよい。声に凄みがあるかと言うとそれほどでもなく、許容範囲内の煩わしさである。ジョン・ケージのごときオオカミウオのような面構えでキャプテン・ビーフハートが持ち前のだみ声で独唱するなら作品にもなりうるが、そうした才覚を望む知恵もなさげに、ただ街角で独り言をぶつくさいっている近寄り難い男だからして、聞く価値は絶対に無い。どの曲も1~2分程度で全19曲、全部で30分のどうでもよいアルバムであった。このアルバムを買うためにわざわざクレジットカードを作り、インターネットで購入したのであった。

wildman.JPGwild man fischer/wildmania(1977)com-501-2

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