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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「moby grape/wow(1968)」 2008年11月16日 仏滅 腐雨

 英国からガーデニングなる横文字が園芸界に輸入されてからというもの、NHK日曜日の朝の老舗番組「趣味の園芸」およびその雑誌版において、英国趣味のカタカナのちまちました植物ばかり特集していて、苦々しく思っている。かつての「趣味の園芸」は、ガーデニングなる小洒落たままごととは異なり、休日にまさに団塊家族が念願の一戸建ての庭で「庭いじり」するためのバイブルであったであろう。黒松の移植に伴う根回しだとか、梅の剪定時期だとか、エビネや鷺草の栽培法や杜松の盆栽のカワハギの方法などの、必ずしも日本固有種ではないにしても古来より日の本で愛玩されてきた庭木、山野草を育てる上での実際的知識に満ちていた。それがここ数年は、ほとんど西洋産の草花をレンガ囲いに植えつける類を主としており、憤懣やるかたない。ガーデニングと称して紹介される植物のこしゃまくれた、コスプレのメイド服じみた安っぽさ、貧相にはもう耐え難い。ガーデニングが好きな人もいるのだから一掃せよとまでは言いがたいが、せめて番組時間の3割程度に抑えて、あとはツワブキの株分けだとかに注力してほしい。この国の庶民の庭に連綿と茂ってきた渋く侘びた草木の復権を願う。

 さて、モビー・グレイプである。米国サイケの佳作である。ジャケットがサイケというよりもプログレ風ではあるが、中味は実直にサイケしている模様である。アメリカ色強く、まことにねっとりした解釈のカントリーやブルース調の堅固な基礎の上に、きっちりサイケデリアが、早朝のプレーリーに点在する干草が大陸の日差しを受けて開拓民の土着性を発散させるように、プンプン匂い立つ。無論、この場合開拓民=侵略者ではある。2番目の奇怪なナンバーでは裁判官への率直かつ激烈なる殺意の歌詞を、ドリーミングなアレンジと凝った曲展開に乗せて歌い上げるのも一例になるとおり、サイケデリアは絶対自由的アナキズムの一様相ではある。しかしながら、そうした社会制度あるいは経済状況に起因する既存の思想からサイケデリアのフラワーを説明するのは簡単に過ぎるし、それだけではないと考える。ここが踏ん張りどころであり、即ち西洋知の中途半端な白人(英米)が黒人ブルース音楽をやりだしたという音楽的状況に専ら内在する、音楽的現象のほうにサイケデリアの主因が在るような気がしてならない。このアルバムは、ブルースの土からサイケデリアが直に湯気立つ、どこまでも曖昧で壊れやすいがそれゆえにこそロックの色濃い諸相が垣間見える、重要すぎる一枚ではある。

 ところで、次回11月23日は所用のため休載します。11月30日にまたの再会を。

moby.JPGmoby grape/wow(1968) sony records srcs9279

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