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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「spanky & our gang/without rhyme or reason(1968)vscd-739」 2009年3月14日 惜冬

 
NHK教育の朝8時前後に平日放送されている、「にほんごであそぼ」という番組は、ありふれた比喩と知りつつも、一篇の詩のように美しい。失われた日の本の古語や詩歌を、NHK教育独特の可愛い衣装を身につけた子らが、半ば現代的にアレンジされた楽曲や舞台に乗って歌い踊りながら、日本古典とも現代とも隔絶した、まさにNHK教育という独自の分野でしかない世界を遊んでいる。今、音楽を聴きながらなので考えがまとまらないが、ピタゴラスイッチと合わせて、必見である。

 前期メタル的な様式性を否定するならばおよそ系統としては、その名に合わずまことに危ういハードロックという系と、単純に名だけでいうならば対立概念となるであろう、ソフトロック、という分野がある。無論ソフトロックなるものはハードロックの土壌とは異なる処で独自の発展を遂げ、むしろハードロックよりも系統の継承性が水際だった、ソフトと言いながらもしたたかな音楽であった。連日の、場末での、実地のライブによる苦しくも楽しい修行、というバンド形態の延長にあるハードロック的なるものとは異なり、このソフトは、どちらかというと小奇麗な、レコード会社が整えた設備が充実したスタジオにおける、スタジオセッションに長けた人たちによる音楽であった。従ってソフトロックには、バンド性が齎すとしか言い様の無いロック音楽の出現、が期待できるはずもないが、その替わりなのか何なのか、多様な楽器の細やかな使用による凝ったアレンジと楽曲構成が聴き処である。凝ったアレンジとはいっても、ひねくれた変拍子はなく、耳当たりのよい素直な作りである。
 こうして書いていくとソフトロックへの憎悪増すが、小生、そうではなく、ソフトロック的なるものも愛聴するものである。ようするに、身も蓋も無いが、ポップスに近いロック、である。ロックとポップスの峻別、あるいは峻別の必要性に関する議論、といったところに対し、ロックのみならず音楽全般に常に思いを致す者ならば、誰しも一つや二つ見解を弄したい欲望に駆られるであろう。特にロックを聴く者は、理屈の構築以前に、鼓膜に染み付いた感覚によって、ロックとポップスを差別する冷酷を辞さぬであろう。当然ながらこの王道無きロック史、においても、この事は避けて通れぬ課題であると認識している。しかしながら、大変な難儀なので今夜はさて置くとする。
 さて、スパンキー&アワギャングである。ソフトロックの中ではそのアレンジの異様な高度ゆえに、ポップスよりのソフトロックが多い中で(ジ アソシエーションなど)、ロックに近いソフトである。コーラスワークのハーモニーの美しさを高め、当時セルジオ・メンデスやスタン・ゲッツなどによってアメリカに齎されたボサノヴァの取り入れを特徴とし、スパンキーの達者なボーカルと他メンバーのバンド楽曲はフォーク、カントリー、ジャグバンド、ジャズ歌謡ブルースを基調としている多様。禁酒法時代を意識した衣装でステージに上がるコンセプトを有していたユニーク。ソフトロックの中では最もスタジオワークや破綻の無いコンセプト性に凝っている部類であろう。ソフトロックの中には更に、ソフトサイケなる概念もあって、サイケデリアの一継承体でもあったが、彼らも、ソフトロックにおけるサイケ、という有り様を代表する音楽性、である。そうはいっても、ソフトロックにおけるサイケは、ストロベリーアラームクロックなどの若干の例外を除いて、どちらかというとジェファーソン・エアプレインなどのような産業サイケ、ハッピーフラワーサイケであり、スパンキー&~も例外ではない。とすると小生が提唱する20個のサイケコンセプト(凶暴性など)から外れるではないかと思われる向きもあるかもしれぬが、⑳番目の概念、フラワー、という大きい概念に包括されるであろう。どこまでも明るくハッピーなこの感じは、どこまでも正直な無邪気な素朴が馬鹿丸出しに大多数を占めかねないアメリカ民族の、明るい健康的なおぞましさに通底するのである。こうした種類の凶暴性であり、このハッピーでイノセンスな暴力は、イラク、アフガンをはじめ多くの他国で大虐殺しているのである。最近、国際刑事裁判所なるものが発足し、どこぞのアフリカの為政者が住民虐殺の咎で起訴されているようだが、真っ先に起訴して処刑すべきは、ブッシュ前アメリカ大統領である、と、この場を借りて告発したい。ベトナム敗戦によって日本近代化から100年遅れてようやく近代的内面性を体験したようだが、そうした内面性もどこまで本気で継承しているのだか、全く白々しくなるほどの、ハッピーな明るさが病的に蔓延するアメリカ民族だから、イラク人を虐殺し、オバマに熱狂するのである。しかし吾が日の本の民も他人事ではない、日米安保の皮肉なのか、日の本でも同様の傾向が見え隠れする。
 ちなみに、これは、彼らのサードアルバムで、ジャケットのショッキングイエローからも分かるように彼らの中では最もサイケ色の強いアルバムである。ホンコン・ブルースなる楽曲もあって、似非中華風のアレンジは凝りに凝っており、嗅覚鋭い細野晴臣もカバー曲を出している。ファーストとセカンドも佳曲多く、お勧め。

 produced by stuart sharf/bob dorough
 sound by joe sidore
 spanky mcfarlane:vocal
 nigel pickering:guitar
 lefty baker:guitar
 kenny hodges:bass
 john seiter:drums
 malcolm hale:guitar

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