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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「frank zappa the mothers of invention/uncle meat(1969) rykodisc rcd10506/07」 2009年3月29日 憂春


 テレビ番組の年度末ということで今期を以って終了する番組が多いようである。なかでもNHK日曜美術館、壇ふみの降板は小生に限らずとも大きい事件であろう。かねてより壇ふみの後継として和久井映見を推していた小生であるが、そんな小さな声が届くはずもなく、熊本の在日韓国人評論家の羹氏と、NHKの女性キャスターが後釜に座ったようである。どんなもんかいなと本日鼻息あらく午前9時にチャンネルセットすると、小生のしつこい課題である日曜美術館はやっておらず、春の高校野球が放送されていた。相も変わらず団塊世代とその追従者らの玩具に過ぎぬ高校球児の奴隷的見世物ぶりは、空襲警報のような試合開始のサイレンと相俟って吐き気を催す。
 野球漫画でありながら、ほとんど名人芸的にしみる漫画「あぶさん」の酒豪、影浦安武がついに現役最後の年、引退を決めたようです。なんと年齢は60代。一抹の淋しさ、しかしあぶさんの衣鉢を継ごうとして物干し竿(あぶさん特注の長いバット)に執心するルーキーの名前、梅桜風太郎というのだが、なんとも、同じ掲載雑誌(ビッグコミック)にある浮浪雲(はぐれ)のようで、生産や実体から遠く浮つき、じつに風流である。
一つ吾ながら名句を物にしたので眉汚しにご披露。

 梅と桜うちかさなりて雪ときゆ     不吉
 
 自讃まことにおこがましいが、万葉(梅)から古今(桜)まで総覧しつつ、花と雪が境なく互いの印象を打ち消すように渾然とした新古今の世界を平明に叙しながらも、それが近世発祥の俳句、即ち、西行の和歌、雪舟の絵、宗祇の連歌、利休の茶、その通ずるものは一なり、と喝破して自らを風流の後継に任じた芭蕉に代表される蕉風俳諧にもなっている。やまと歌の歴史がすべてここにある、と勝手ながら自負している。

 さて、マザーズのアンクルミート(肉伯父さん)である。前年68年にランピーグレイピーという、欠かすこと出来ぬアルバムがあるが間違えて先にこちらを。60年代のザッパ山脈の最高峰である。最高峰ばかりだから山脈であるのだが、そう書かずにはいられなかった。最早言葉が追いつかぬほど盛りだくさんのこのアルバム、ブルー・ノートとその踏襲、変奏というロックの形を必ずしも守らなくてもロックでありうる可能性を開いたばかりかその極限まで突き詰めてしまった感がある。全くブルーノートから逸脱しているのでもないし、かといって微かなロック形式を、ミュージックコンクレート式に継ぎ接ぎすることで旧来のロック形式からの逸脱を狙う、といった、単に目新しさに鵜の目鷹の目である幼稚な方策ではない。無論、メンバーらが自分がどこをどのように演奏したのか、完成品を聴いても分からないほど編集に賭けているザッパであるから、そのカット&ペーストは、先に挙げたミュージックコンクレートやその他コンテンポラリーミュージックのみならず、当然ながらレイモン・クノーやバロウズといった文芸分野での切り貼り手法、そして何より先行した絵画分野でのキュビズムといった成果への意識の高さが方法論として聴こえる。
 そういった編集技術もさることながら、ヴァレーズへの傾倒著しいザッパであるから、ここはザッパ音階と呼んでもよいような音の運びが、ブルーノートに収まらず既に独特であった。四海あまねく全ての民族音階やそれに含まれるブルーノートや沖縄音階、平均律、ドビュッシー音階、十二音技法(シェーンベルク)、偶然性(ケージ)、管理された偶然性(ブーレーズ)、セリー技法、といった、音楽にとって決定的に制度的である音階の中で、ザッパ音階が誕生したということも提唱したい。元来、音階の発明が音楽家の成果であり、音楽家の誕生を意味するのではなかったか。いかにもロマン主義的な音楽家あるいは作曲家という概念を否定したところからポピュラーに広まったロック史にあっては、ザッパやザッパ同様に独自の音階やリズムを持つ者は異端であり続けた。そうした史観をいたずらに否定するつもりは無い。しかし、ロック史のポピュリズムを批判的に検証したい反逆の心抑えがたく、そのためには、旧大陸的ロマンチストというよりも、ロマン主義の影響を免れえた新大陸の変態でありえたザッパやドン・ヴァン・ブリードやブライアン・ウイルソンといった点在する者らに耳を澄ましたいのである。
 音階だけではない、ロックは音色の探求にも熱心であり、ザッパとて例外ではない。既成の楽器から、いかにテクスチャーの異なる音、即ち音色を引き出すことに執心したか、ギター史だけとってみても明らかである。11番目の楽曲アンクルミートバリエーション、ザッパ音階による天上的に壮麗な世界を、薄汚く変声された卑小な声が歌い上げる白眉である。
 あと、本アルバムはCDで2枚組であり、1枚目は精緻に組み上げられた感のある、編集職人魂の面目躍如であるが、2枚目に至って、編集美の構築なぞ糞食らえとばかりに、編集の妙を全否定するように、自作の意味不明の映画のナレーションやら即興演奏やらがぶち込んである無茶苦茶である。一体に、何を以って、作品としてのまとまり、などと断定できるのであるか。お前の制度化政治化権力化大衆化された趣味を押し付けるな、とでも言いたげに、絵画はとうにそうであるが、音楽の間口の広さを成立させた。それにつけても文芸の間口の狭さよ、3ページ置きに鼻くそが付着していたってよいではないか。見渡せば、何一つ危険を冒さぬ、お上と資本に喜ばれる伝統工芸小説ばかりである。
 もう一つ感想。このアルバム、まことに楽器数多いわりにはすっきりして聴こえる。そしてやはり、異様な創作意欲の暴発のわりには、どこか物寂しい。聞き込むにつけ、かつて引きこもり少年だったザッパの、如何に大勢の仲間との音楽的交渉能力を常に試される社交的生活にありながらも、基本的な侘びへの理解が聴こえるのである。

FRANK ZAPPA guitar, low grade vocals, percussion
RAY COLLINS swell vocals
JIMMY CARL BLACK drums, droll humor, poverty
ROY ESTRADA electric bass, cheeseburgers, Pachuco falsetto
DON (Dom De Wild) PRESTON electric piano, tarot cards, brown rice
BILLY (The Oozer) MUNDI drums on some pieces before he quit to join RHINOCEROS
BUNK (Sweetpants) GARDNER piccolo, flute, clarinet, bass clarinet, soprano sax, alto sax, tenor sax, bassoon, (all of these electric and/or non-electric depending)
IAN UNDERWOOD electric organ, piano, harpsichord, celeste, flute, clarinet, alto sax, baritone sax, spesial assistance, copyist, industrial relations & teen appeal
ARTIE (With the Green Mustache) TRIPP drums, timpani, vibes, marimba, xylophone, wood blocks, bells, small chimes, cheerful outlook & specific enquiries
EUCLID JAMES (Motorhead/Motorishi) SHERWOOD pop star, frenetic tenor sax stylings, tambourine, choreography, obstinance & equipment setter-upper when he's not hustling local groupies
spesial thanks to:
RUTH KOMANOFF who plays marimba and vibes with Artie on many of the tracks
NELCY WALKER the soprano voice with Ray & Roy on Dog Breath & The Uncle Meat Variations

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