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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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東寺弘法市再訪とイエス尼崎ライブ(ハードロック番外編)浅はかに・・・



 稽古とは一より習い十を知り十より還る元の其の一 利休


 単詩

 肉離れ


 何かの卒業の折りに歌わされた歌

 桑の海
 光る雲
 人は続き
 道は続く
 遠き道
 遥かな道
 
 今は、もう、何事にも深入りする気持ちにはなれない、どんよりと張り詰めた気持ちである。またぞろ、くさくさ感が胃潰瘍のように出血する日曜日の夕方。水底の珪石のきらめきがさらさらと流れているような浅瀬の心持で、時が記憶へと堕落した移ろいごとを淡淡淡と書き綴っていきたい。とはいえ、干瓢(かんぴょう)が、夕顔の実(西瓜くらいの大きさ)を、木椀などの木地師よろしく帯状に切り出したものであることは人口に膾炙するものですが、この度、この夕顔の実をくり貫いてこしらえた火鉢、という、有り得ない珍品を、お助けしました。恐るべきネットオークションで・・・。数週間前に出品されていたのを知っており、その時は、あまりにも、ネットでお手軽に欲しい物が手に入ることが空恐ろしゅうなって、細君の機嫌を憚る手前、こらえて入札せず、そのまま期限切れとなった。どこぞの好事家の手中に収まったに違いないと諦めつつ、澱のようにいじましい、物欲しげな悔いが消えることは無かったが、昨夜、さもしくまたネット界隈をうろついていると、同じものがまた出品されているではないか!どうも、買い手がつかないまま期限切れとなったパターンのようで、再度、出品された模様なのである。もう、形振り構わず、即決で競り落とした。釜もそろい、風炉用の火鉢もついに整った。ついでに、遺品系リサイクルショップで激安大正琴まで手に入れた。荒み茶会の日は、もう、そう遠くない。あわれ、おかし、侘び、寂び、しおり、軽み、萌え、に続く「荒み」の世を興す大事な茶会・・・。とは言え、こんな、刹那的愉快な生活ばかりしていたら、その内、きっと、よくないことが起こる。そんな気がする。

 平成24年4月21日。春の京都の雰囲気にあたりたく、やはり、東寺を選択する。久方ぶりの弘法市である。相変わらずの膨大な人出。毎月毎月やっているのにその勢いは衰えるどころか増しておるのじゃないかと勘繰りたくなるほどの、尋常じゃない人気が持続する、日の本の、縁日、骨董市、陶器市、手作り市…政経がどうなろうと、こうした市の繁盛は約束されているのだろう。古格古式を愛する分厚すぎる購買層の絶えない物欲。絶対に飽きられることのない、これ、は、一体何なのだ。お助けした織部茶碗、楽の緑釉管耳香炉(裏に楽印があるが怪しい)、志野織部向付、姿よろしき山の木、釣り合いよろしきトンボ細工。

 同日。京都から尼崎に急行。ここでは、イエスの音楽性について詳論するつもりはない。ライブの模様を簡単に記すのみ。尼崎アルカイックホールの外壁は、線路の敷石のような、赤茶色に錆びた、牡蠣のような不定形の石をびっしり敷き詰める凝りに凝った意匠がなされており、ペラペラの建材が幅を利かす平成じゃ考えられない、昭和遺産ともいうべき古格あるミュージックホールである。音質にも定評のあるホールであり、イエスのライブ会場に選ばれたのもむべなるかなである。二階席のさらに奥の方が、小生の指定席である。膝が、前席の背もたれに接触するしかない、拷問のように窮屈な、昔風の造りである。いざ音楽が始まるとその拷問の苦しみはさあっと忘れてしまったが…。開演前、多くの客がステージ前に屯し、巡礼のように順繰り順繰り、ステージ上の機材のセッティングや楽器の機種、ドラムセッティングなどを激しく拝見してごった返し且つ人が流れているさまが、何だか茶の湯での床飾りや道具組み拝見、のようで、数奇の道に共通するものがまざまざと露見され、たのもしくも面白かった。スティーブ・ハウ…まさにギター職人、であった。往年の武満徹のような内省的な宇宙人的風貌である。ハウの立ち位置にだけ、何故かペルシャ絨毯が敷かれている。曲の最中に幾つものギターをとっかえひっかえするその、音質へのこだわりよう…。こだわりのキツそうな御仁である。なるほど、あの曲はこうやって演奏していたのか、という事が如実に納得できる、レコードに忠実な再現であった。時間でいえば往年の名曲が7割、老いてなお盛んなのか相変わらず異様に長い新曲が3割ほどのプログレッシブなライブ構成であった。上から下までホールをびっしり埋める客層は、9割5分が男、母国のバンドを懐かしんでか白人客もちらほら。しかし昔の人サイズの、江戸指物のようなこじんまりした座席であるから大概大柄な白人男性は脂汗たらたら、凄まじく窮屈そうで気の毒である。イエスTシャツを無言で着込んだ、一癖ありそうな一家言ありそうな青年~壮年ばかりの年齢層が、今や遅しと開演を待つのは、まことに息苦しい。スティーブ・ハウ:ギター、クリス・スクワイア:ベース、アラン・ホワイト:ドラムス、ジェフ・ダウンズ:キーボード、ジョン・デイヴィソン:ボーカル。ハウ、スクワイア、ホワイトといった、70年代の名盤をものしたメンバーが健在で三人も揃っているのは単純にうれしいし、ダウンズ氏も出戻り組とはいえ往年のメンバーである。新入りのボーカルのジョンも、きっちり、かつてのジョン(・アンダーソン)の歌唱を踏襲する、何が何でもイエスを継承しようとする伝統の理不尽を思う。「こわれもの」「危機」といった、何度も聴取した金字塔を、ご本人らの、全く衰えやしない激しい生演奏で聴くことが出来て、素直に感激である。(イエス史というのは本当はとてもじゃないが一言では片付けられない紆余曲折を経ているので、そうしたことを無論知悉しているファンからしたら、三人ものオリジナルメンバー(この言い方も本当はよろしくないが)の会合にあいまみえることができるのは、それこそ感慨無量なのだろう)ライブのハイライト、かつてはリック・ウエイクマン、その時は色々あって出戻りのジェフが背中を見せながらキーボードで有名なフレーズを繰り出すと、興奮した隣席の男が己の膝の上で鍵盤上での指の動きを真似ていたのがついにおさまりきらず小生の膝の上で指を高速でびろびろやり出すに至っては主客一体となった興奮の坩堝であった。気持ち悪かったけど・・・。スティーブ・ハウの声はいい感じに飴色に干からびた小柄な体躯に似合わず、屋久杉の洞のように茫洋と粗剛の低音であった。

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