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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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日本的巧緻と云う幻想さえも崩壊して…

梅雨の晴れ間は雲一つなき晴天にて…されどどこもかしこも緊急事態で遊びに行けず…持て余して遠足がてら少し遠い神社まで徒歩でお参り…小高い丘に角ばった帽子みたいに立つ社を見物すると黒塗りのフーガで社殿横まで乗り付けて何やらお祓いの真っ最中の太鼓が響いており…記念に引いたおみくじは、帰宅後に開くとあら大吉、目上の人に礼を尽くせば思わぬ引き立てで万事良好と…そういえば礼を尽くしていない思い当たりがあって改めて焦慮の念にかられつつ、思えば自分と云う人間には話ができる年下の人の知り合いがいない事に思い至り…仮にいた処で頭の中が資本主義で話にならぬだろうと寂しい老後が確実視されるが其れは望む処の覚悟の上ではなかったかと、覚悟の虚しさを知り尽くした低調の気分であっても、日が高くなれば早夏の日差し、抜ける青空に近づけど近づけど至りはせぬ散歩道…と云うのは此の散歩は新しい靴の試験も兼ねており…今日常使いにしている靴は靴底が柔らか過ぎて不均衡にすり減り、歩く度に小生の骨格のバランスを崩して全身に悪影響を与えそうなので買い替えを試みているが…ことごとくうまく行かず現在三足目と云う…事情を掘り下げるのも億劫なので割愛するが、年を経る事に要求される靴の項目が増えすぎて全てが小生の基準をクリアする靴が見当たらずに難儀していると云う事であった。
去年の中頃、ワクチン確保に政府挙げて取り組んでいた事は、此のコロナに関する数々の愚策の中で唯一高い評価に値する国家的業績であったと小生さえも思うが…其の当時、K防疫に自惚れてワクチン確保が上手く進んでない事を韓国国民は不安がっている、其れに比べて此の件に関しては自民党はうまくやっているなどと、相変わらず隙あらば隣国への嘲笑をネタにする保守系メディアの言説があったが…今年になっていざ接種の段になると結局、ワクチン確保に出遅れたらしき韓国よりも接種率が覚束ない日本の体たらくにだんまりを決め込んでいるではないか…其の連中は愛知県知事のリコール運動にも積極的に肩入れしてきたが、署名偽造がばれると蜘蛛の子を散らすように我関せずと得意のだんまりを決め込んで、失態を晒した自らの地位への反省など微塵もない傲岸ぶりで、民主主義を腐敗させた責任に対して露悪的な肯定を公表して憚らぬだんまりであった…
思えばこの国に漠然と蔓延するパラダイムのようにして…確かに日本人は、個人技は兎も角、集団としては、システム自体を超越して新しい課題と其の解決策を創出する創意に乏しいが、其れでも、与えられたシステムの中で与えられた課題に対し与えられた方法で課題解決する事に関しては、日本人全体が一致団結する事で予想以上の成果を上げる事ができるんだぞと云う自負のような言説が蔓延していたように思う…だから、ワクチン確保が進みさえすれば、いざワクチン接種が始まれば一致団結してうまい事やるのではないかと云う期待があった…ところが蓋を開けてみると、後は組織化された個人が目的に従ってシステム内の創意工夫でやればいいだけなのにうまく行かず、先進諸国内では最下位レベルの接種率と云う体たらくで、馬鹿にしていた韓国にさえも水を空けられる始末…だいたい、そもそもなぜ個人が一斉に接種予約しなければならないのか、こんなものは、接種担当者が可能な範囲で一方的に接種日を指定して通知して呼びつければいいのに、なぜ其処に個人の都合を無駄に尊重して誰も望まない混乱と予約業務に係る無駄な仕事を生じさせるのか、民主主義を愚弄するための悪意と取れば全て納得できるが恐らく悪意を構想する有能さえも望めない無能が露呈しているだけなのが腹立たしく…注射する打ち手不足にしても、そんなのは去年の段階から想定すべき問題だから今更になって薬剤師がどうのと無様な後手後手であるし…英国では法律改正して誰でも注射できるようにしている戦略的柔軟性を発揮しているのに、そんな先例があっても日本では何故か其れを無視して法律を言い訳にして注射の打ち手不足に今更うろたえるばかり、法律を変える国会議員が無能を宣言するだけと云う暗愚の極みを呈している…大規模接種センター立ち上げにしたって、まるで一夜城を成し遂げたかのようなふてぶてしい自慢ぶりが目に余るが、此れも去年ワクチン確保に走っている段階で接種計画を練りこんで居れば整然とできたものを、慌てて自衛隊に仕事を押し付けたようでとても国家事業とは思えぬ間抜けぶりではないか…人口の少ない自治体によっては臨機応変にうまくやっているように見受けられるが、肝心の大都市圏で律速になっているようでは埒が明かない…結局のところ、日本人は、既定のシステムの中で一致団結すればうまくやると云う事が幻想だったと云う現実が露呈したのだろうと思う…そして、此の幻想が希望的観測を生み、現実に対する厳しい対応を怠る契機になって、幻想が幻想として散ったのがワクチンに関する日本の現実だろう。
結局は幻想だった此の言説を、日本的巧緻と呼ぼう。此れは、かつてレイテ海戦おいて、四つの艦隊の機動的連携を構想した日本海軍の陣容と作戦内容を評して大岡昇平が用いた言葉だが…そして周知の通りレイテ海戦では帝国海軍は壊滅的惨敗を喫するわけで…日本人が漠然と日本的巧緻を期待していたのは歴史的経緯があろう…日露戦争での辛勝に端を求めるのは簡単だろうし、戦後の復興、物作りへの自負もそうだろう…自動車産業に代表されるカイゼンは時間をかけて蓄積された日本的巧緻であり、即断即決を要するコロナのような事態の打開に期待を与えるような成功例ではないのだが…ただ、そうした幻想が蔓延するに至った歴史的経緯は批判的に乗り越えないといけない課題ではあるものの民族的歴史ゆえに致し方ない部分があるにせよ、少なくとも一人、糾弾せねばならぬ人物が居る。庵野監督である。
かつて私の学生時代の恩師は酒の席で、「自然科学は夢を見てもよいが、人文系は夢を見てはならず、現実的でなければならない」と仰り、小生も首肯したものだが…芸術こそ本来、徹頭徹尾現実的でなければならず、例え幻想を取り扱う場合でも、其の幻想を成立させる現実への考察があってこそ表現としての誠実さが確保される…しかるに庵野氏はテレビ版の「ヤシマ作戦」しかり、そしてシンエヴァでは更にエスカレートした「ヤマト作戦」しかり、日本人が一つの目標に向けて既定の方法を一致団結してやるのであればうまくやると云う成功例を物語った訳だが(否、ヤマト作戦は最終的に責任者のミサトさんが乗務員を全て脱出させて自ら危地に特攻し、責任者としての責任を果たす事で、責任者が責任を取らない日本の政治の無責任構造=天皇制への痛烈な批判になっているが)、此れは、日本のパラダイムとして蔓延する日本的巧緻と云う幻想に無自覚に無批判に追従して此の幻想が実現する事が民族的必然であるかのような言説の醸成に加担したのであった。要するに、日本的巧緻への批判的分析は皆無で、ただ其の幻想に盲従して幻想の強化に芸術作品と云う形で努めているのである。シン・ゴジラでは、ゴジラ出現に際し、列強は核攻撃による東京諸共の犠牲も厭わぬ根本的解決を要求したが、日本人は、日本国は、大雑把な根本解決に傾かず、無論東京壊滅を避けるためと云う説得力はあるが、ゴジラを電車や戦闘機などの連係プレイで足止めしてゴジラの口に冷却材を流し込むと云う地道な組織戦による成功を物語り、結果として日本的巧緻を称賛する事で此れを翼賛した。即断即決で一致団結して緊急事態に対処するなどと云う事は日本人には不可能である事はコロナの件で証明された訳だが、こうした現実を洞察し得ず、漠然とした日本的巧緻におもねるように日本的巧緻の成功を物語で実現し、日本的巧緻と云う幻想を社会に発表した罪を庵野監督は犯したのである、シン・ゴジラで。およそ自らの作品が、政治的幻想に無自覚に加担して其の翼賛機関に堕する事ほど、芸術にとって不名誉な事はないはずだ。庵野監督の作品には、およそ自らの、組織や社会へのなじめなさへの反動が嵩じて、逆に組織や社会との一体化を無暗に短絡的に礼賛する傾向が見られるが(アスカやマリ、龍の歯医者など)…庵野分析に興味はないが…ともかく庵野監督の、日本的巧緻と云う政治的幻想に加担した芸術的罪は弾劾されてしかるべきである。なぜなら此の日本的巧緻と云う幻想は軍国日本の全体主義によって促進されながらも、当の全体主義の醸成に明らかに理論的に加担しているからだ。其の理由は少し考えたら分かるはずだ。ヒントは…日本的巧緻は現実を直視しない事から始まる希望的観測の最たるもの。

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