忍者ブログ
 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
[233][232][231][230][229][228][227][226][225][224][223]

リハビリ編「the adverts/anthology(1977?~)sdevil904cd」年の瀬

 

師走に入れば街の雰囲気もどこか気もそぞろ、年末に向けて諸事加速するげんきんなものでして、街の雰囲気に気の早さ云々あるのか分かりませぬが勝手に感じてしまったからいけません、新年の早朝のような、何も解決していないけれども取り合えず改まった、妙に目出度い清明なる落ち着きすらもあるようなないような。いやはや気の早いものでございます。月の和名には如月だの文月だの風情あるものでございますが、遠く仏蘭西には革命歴というのがございまして、これがなかなか趣深いものでございます。革命成就を記念して時の共和政府が詩人の何某にこしらえさせたものでして、花月、霧月、風月と、仏蘭西人もなかなかやりおるわいと感銘いたすこの頃でございます。最もこの革命歴、以前のグレゴリオ暦に慣れた庶民には不評でして十数年で途絶え、一度、パリ・コミューン樹立の際に復活を遂げましたがコミューン壊滅以後は使われなくなっております。人の世の儚いものでございますが、思えば亜米利加人が本邦初の大河ロマン源氏物語の翻訳に一等困惑したのは登場人物の名前が花や虫や気候から借用したものであったことでありまして、葵上、末摘花、桐壷、夕顔…などを植物辞典片手に真正面から米語に翻訳していたところとんだチンプンカンプンな迷訳になってしまったとか。この挿話からして一般に欧米人には人事に草木の自然を見る心あらざらんやと残念至極に痛感していたところ、意外や意外仏蘭西人はかような仕儀、思い込みはいけないものですな。

慣れない落語調で枕話を書くのもちと疲れたのでここらで打ち止め。ジ・アドバ―ツについて…多分英国のパンクバンド…話変わって、金曜日の晩、殺伐とした、重くキツメの気持ちでラーメン屋にぶらり入る…店内には80年代アイドル歌謡とツッパリ系ロックンロールが吐き出されている…そして餃子セット(飯付き)を注文…魚介系の芳ばしい、といえば聞こえはよいがいささかやり過ぎ感のある焦げくさい臭いが一閃、しかし素直な醤油ベースで、なんかホルモン並みに固い豚の背脂が浮いている、なんちゃって尾道ラーメンである。上下関係の無い組織は無いのだろう…何故自分が他人の命令を受けなければならないのか、金のためなのか、ある日突然営業運転中の新幹線の運転席に座らされた鎌倉時代の人、みたいに、全く何処から批判してよいかすらも見当がつかないまっさらな、あどけない心境である、いまだに…。組織にあらざる、上下関係の無い関係というのがあるとすれば、友、ということになるのだろう…そういえばドゥルーズもブランショも、晩年、しきりに、友(アミ)ということを云っていた…それはさておき、ともあれ、嫌な事をするめのように引きずる金曜日のくさくさした気分のおもむくままに、寒さに襟を立ててラーメン屋に入ったのであった、そして麺を啜るのであった…荒れた心には、クリスタルでトロピカルな舌足らずアイドル歌謡や直情径行ツッパリロックが心に沁みる…片手には魁!男塾…!同じく荒んだ客の手垢と飛び散るラーメンの汁の滴に塗れた漫画本を片手でめくりながら、ラーメン、餃子、飯、ビールという、体に悪く男臭い週末を送ってしまった。それだけのことである。休日は腹が減る…おにぎりせんべえ一袋たちどころに平らげたところで空腹は癒されぬ…一杯の飯で事足りるのだが…飯を茶碗によそう→食べる→茶碗と箸を洗う必要性の出現、に耐えられなくて、我慢する昼日中、昼寝して誤魔化す。次亜塩素酸による茶渋取りに嵌る…専ら自分の中で格式高い、伝 永楽善五郎の染付猪口の見込みの釉薬がはぜた箇所に黒い物が沈着していて気持ち悪かったので塩素浸漬すると気持ちよくきれいに!味をしめて同じく黒色汚れが気になっていた古い猪口に同じ処方すると、今度は、その釉薬のほつほつした点状窪みに沈積していた黒色汚れが貫入著しい釉薬の下に薄墨のようにまだらに広がって全体的に何とも薄汚い姿に!替わって茶渋がひどかった、切り立つような轆轤さばきで極端に薄作りの萩焼の煎茶器、これは窯だし当初の、匂うような桜色の悠遠と夕間暮れの翳りが再生されて歓喜ひとしおである。古い陶磁器の塩素洗浄には悲喜こもごもある。暢気な、古いポンプの作動音のような単調なポスポスのドラムが、その単調に飽きるという人間的な説明や理由抜きで獰猛に連打される激烈も突発する油断のならない音作り…急こう配の階段を、足がもつれながらそれを解消させる余裕も無く兎に角一挙に駆け降りるどさくさな無茶苦茶な慌てぶりがとんでもない楽曲が目白押しである。切れの悪い悪態だけは絶叫する。併録されたライブ版、スタジオ版に聴きなれたせいか、尋常ではない。それにしてもこの、もっさり黴っぽい、恐ろしく埃っぽい音質は何なのか。電気楽器で黴っぽい音って出せるのか、と思わず瞠目した。楽器の音の録音バランスが著しく欠けており、他のメンバーは英国の、よう使い込まれた地下のライブハウスでやっているのにギターだけ、カスピ海の島から、同期化困難な同時生中継によって音を送り込んでいるようなちぐはぐな、ベースと判別しがたい不鮮明な小さい音を送ってくる。どうしようもなく変態的に半音、突拍子も無く上がったり下がったり予測不能の、しっかりまとまらぬリズムが居心地の悪さを悪びれず音楽を生々しくぶつけてくる。馴れ合っていない、当日偶然出会ったばかりでとるものとりあえずろくな準備も無く妙に急き立てられて兎に角バンド演奏しなければならない赤の他人の集まり、互いへの不信に満ちた各々の楽器や声のぎこちないこの爆発に言葉を与えるとしたら、「人間」、としか言いようのない、生の音楽=人間を示して余りある。素っ頓狂でぐねぐね、そして人に優しいポップもあって。ありがとう、と思わず合掌する。この一か月ほど、ほぼ毎日、このアルバムを聴いていました。

gaye advert:bass
T.V.smith:vocals
howard pickup:guitar
laurie driver:drums
rod latter:drums
tim cross:keyboard
paul martinez guitar
rick martinez drums

拍手[0回]

PR

この記事へのコメント

Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧できます
 

この記事へのトラックバック

トラックバックURL

忍者ツールズプロフィールは終了しました

HN:
々々
性別:
非公開

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

ロック史最新記事

(03/03)

ブログ内検索

最新トラックバック

最新コメント

忍者アナライズ

Copyright ©  -- 仄々斎不吉 --  All Rights Reserved

Design by 好評ゼロ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]