忍者ブログ
 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
[411][410][409][408][407][406][405][404][403][402][401]

[PR]

×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

「the rascals/the very best of the rascals(1966~)amcy-2201」

 

涼やかな春の夕風に誘われて、三蔵法師よろしく街に書物を買いに出かける…すると今年2015年の2月にようやく丸山眞男の思想の原点にして現代日本の基本文献とも云える「超国家主義の論理と心理」が岩波文庫に所収された事を知って驚愕、早速代金を御払いして耽読と行きたい処だが初っ端から一言一句が小生の問題意識の経絡秘孔を衝きまくるから動悸と息切れが激しうなって容易には読み進められぬ程で殆ど眠れなかった、という具合なのである…30数ページ程のこの小論文は終戦間もない1946年5月に雑誌発表されるや否やそれこそ敗戦日本人の知識層を思想的に鷲掴みにしただろうし、その後恐らく1960~70年代までは広汎に読まれて戦後日本人の思想的基盤となっていただろうがいつしか読まれなくなったが為の現在のこの体たらく、この腐敗した(腐敗も出来ぬ)チンケで卑劣な政治状況なのだろうか…小生が、無知ゆえの自力ながらそれなりに自負を以て、何度も、西洋の独裁制やファシズムとは内的構造の相違によって「峻別」できるものとして日本における「純正全体主義」を提唱し、現在はその補完への進行形であると説いてきたのだが…既にして「超国家主義の論理と心理」においても、用語や着眼点は小生と多少異なれども、ほぼ同様の指摘は為されていたのであった。およそ一個の思想家として戦時を生き抜き、下層農民出身の軍人にぶん殴られながら軍国日本の由来と構造を暴くべく思想家としての刃を懲罰的軍務生活の中で研ぎ澄ましていた丸山氏が戦後、時代の火急なる要請への逸早い即応を兎も角の主眼として書き上げられたこの小論文は従って荒削りで歯切れの悪い箇所もあるがしかし構造を捉えるデッサンは飽くまでも精確であるから、思想の役目の8割は果たしているといってよい。それくらいに、小生の用語で恐縮だが「純正全体主義」の実相と、簡易的説明ではあるが歴史的政治的経緯をほぼ浮き彫りにしている…その内容は小生の駄文などかなぐり捨てて今すぐ書店なりネットなりで購入して確認していただきたい。時局に即応せねばならぬ思想の緊急性を習って小生がこの小論文の概要を掻い摘むと…宗教戦争~市民革命といった数百年に渡る政治闘争(内面の自由と国家との闘争)を経た西洋近代は内外の分別を付けるようになり、しかるに内面(思想、信仰)の自由を保障すると共に、国家は社会の外部に存立する法体系に解消される…しかし軍国日本は明治以来、急速な文明輸入を謀る中で内外の分別をつける理(ことわり=事・割り)が醸成される機会もないままに内面(私)が国家化(公)されると同時に、国家(公)が内面化(私)される事になったのであり…公私の相互貫入をして純粋なる「全体」という化け物を生み出したのである。前者が思想信条の自由の禁止や翼賛体制となって表出し、後者は満州事変のように軍人の私的思いつきが公の語法で生成、通用する構造を生み出したのである…要するに西洋民主主義はファシズムも含めて主体が存在するが日本軍国主義には主体が不在である、という真相である。だからこの国では幾ら選挙やっても投票率が低いのである。自分に主体が無いと選択できないからだ。この国に主体がない原因は、それこそ丸山眞男のライフワークである浩瀚なる大著「日本政治思想史」に詳しい。その他、原文には重要過ぎる指摘だらけであるから今すぐ読まれたい。

そして繰り返すが1946年に書かれた「超国家主義の論理と心理」の、希望に満ちた末尾をここに抜粋する。

「日本軍国主義に終止符が打たれた八・一五はまた同時に、超国家主義の全体系の基盤たる国体がその絶対性を喪失し今や始めて自由なる主体となった日本国民にその運命を委ねた日でもあったのである。」

…最早、現代への皮肉にすらならない、笑えない真実が炙り出されるではないか。丸山氏が2015年現在もご存命であれば現代日本の諸相からみて、ぞっとするような情けない絶望を味わうであろう。そう、この国にはいまだに、「自由なる主体となった日本国民」など皆無である事に気が付くからだ。小生が何度も云っているが、「いまだ戦後ではない」のである。テレビのニュース番組や情報バラエティ番組などで馬鹿の一つ覚えでツイッタ―などを恣意的に摘み出して垂れ流す無能無自覚も、そのニュース番組が主体無き衆愚の「全体」の言説と相互是認しているという馴れ合いによる全体主義の熟成過程を小奇麗に見せられるようだから本当胸糞悪い。最近まではdボタンを押せばツイッタ―垂れ流しを視聴者で消去できる配慮があったが今ではそれも絶無で、そうした選択肢も与えられない。SNS如きの素人の断片的でその場の思いつきレベルの言葉の屑が幾ら集積されようともこの国の純正全体主義は解消されないどころかそうした集積がビッグデータ化される事でむしろその補完を増強せしめるだけの、軍国時にはあり得なかった新機軸の全体主義が現在では見て取れる。一方で、書物の形できちんと表現された本物の思想も、さほど流布されず微力に甘んじる、この閉塞感たるや。ところで現代における新機軸の全体主義とは何ぞや。それは、SNSなどの、政治の外で発達した技術要因とは別の事ながらそれらの後押しを受ける具合なのだが…戦時軍国主義批判においては国体論=天皇論を主軸とする事で、戦勝国史観も手伝って、「民衆」を「免罪」乃至は「免責」する事が可能であったが…戦勝国史観とは主体性のある独裁者=悪、民衆は善にして被害者、という西洋思想の産物である。ところがどっこい此の国には「主体」など存在しないのだ…現今の新しい「純正全体主義」においてはもう「民衆」を免罪する事など出来ない。何故ならば純正全体主義とは裏を返せば純正民主主義とも云えるからである。民衆という全体こそが原因であるという本来が如実になる事であるからして、此れも小生が何度も云っているが「民衆という実存」と如何に対峙するかが言論の課題となるのである。全体という結果の原因が全体であるという理性不在の、言葉の屑は溢れども言葉の意味を我が物とする意志の欠如した文盲だらけといっていい此の国に対して理性は何ができるか、という事…風車に突進するドン・キホーテは外から笑って安心できる揶揄でも何でもない、人間が人間であるならば誰しも要求される心掛けである…。言論の危機でもあり、だからこそやりがいがあるから好機でもある。まずは民衆の多数派が全体化する相転移を少数=個の排除という副次的現象の側面からでなく…(長くなるので今日はここまで。)(何も、ツイッタ―での発言全てを非難しているのではない。短文だから駄目だとかではない。寸鉄を射る至言だってあろう。普段の日常事の呟きに目くじら立てているのでもない。要するに政治的な発言をする時はよく考えるべき、くだらん事は書くな、という事で、内容が問われているのである。)

さて、ラスカルズのベスト盤である。ヤング・ラスカルズともいう…往年の、ブルー・アイド・ソウル(青い目のソウル)の嚆矢…フェリックス・キャバリエの元祖さながらなソウル歌唱を味わいながら、声調のスペクトルの境界が際立つコーラスは木質で重厚に流れる。しっかりした演奏でもある。昔、よく聴いていました。なぜ急にラスカルズの事を思い出したかというとカルピス子供劇場「あらいぐまラスカル」をレンタルしたからであって…動画表現としての工夫は乏しいが何と云ってもラスカルの間抜けな阿呆面が憎めないし、主人公の少年スターリングという人物もどこか常軌を逸して、物語として面白かった。蓋を閉めたら真っ暗な小さい木箱の中でスカンクを4匹も飼育している謎も明かにされぬまま御約束の放屁事件を起こして結婚式中の教会に臭気が充満した大騒ぎの挙句、野に放たれたり、ああいう愚昧な暴力男には何云っても無駄、そいつを上回る暴力で徹底的にぶちのめすしかないと日頃の所業で思わせる、生来のゴロツキ根性の菓子屋の息子をスターリングがぶん殴って叩きのめしてくれたので痛快、すっきりしたのであった。この菓子屋の息子は、ラスカル自体が欲しいというのでなく、他人が持っているから欲しくなるという卑しい理由でラスカル強奪を度々謀る度にしくじっており、その度に姑息な暴力を振るう始末、更には勝負に負けた腹いせに無辜の蝦蟇蛙をぎりぎり捻じり踏み潰し殺したりと、その悪行が目に余る次第だったので、ついに旅の黒人ボクサーから勘所を習得したスターリングが鉄拳をお見舞いしたのであった。この黒人ボクサーは黒人ゆえに、試合が判定に持ち込まれると白人審判によって必ず負けとなる状況に甘んじながらも、KO勝ちなら確実に勝者になれるのでKO勝ちにこだわるしかないという過酷な人生でボクシングしている御方である。

日常の俗事にかまけてつい忘れがちだが…たとえ70億人の全人類が賛成する事でも何の正当性も無いし、たとえ70億人の全人類が反対する事でも正当性はありうる事を肝に銘じたい。

拍手[2回]

PR

この記事へのコメント

Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧できます
 

忍者ツールズプロフィールは終了しました

HN:
々々
性別:
非公開

08 2024/09 10
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30

ロック史最新記事

(03/03)

ブログ内検索

最新トラックバック

忍者アナライズ

Copyright ©  -- 仄々斎不吉 --  All Rights Reserved

Design by 好評ゼロ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]