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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「チャーリー・コーセイ/ルパン・ザ・サードの歌(1971)」



思えば数年前に、政治好きを自称するモデル上がりのハーフ風女性タレントが情報バラエティ番組で「日本の総理大臣が靖国参拝する事はドイツの首相がヒトラーの墓参りする事と同じですよね」といった内容の発言を耳にしたのに端を発した憤激の念…これが一層こらえ難かったのは、こうした理屈に横たわる、此の国のみならず戦勝国にも蔓延する罪深い誤謬と欺瞞への忿怒であり…漠然と小生が抱いていた、戦時の日本軍国主義と西洋ファシズムとの「差異」というのに改めて思いを致すきっかけになった結果、自分なりの、拙い思索で以てその「差異」の決定的な青写真を折に触れて書いていたつもりであったが…不勉強ゆえの遅ればせながら最近出会った、丸山眞男氏の、戦後直後に立て続けに発表した時局的諸論文を胸苦しい興奮のままに蒲団の中で赤熱しながら貪り読むと…そこには、小生も勘付いていた先述の「差異」を、学問に求められる普遍的正確さで以て縦横に豊富な典拠を明示しながら際立たせている成果が既にあって、少し肩の荷が下りた感もありつつ、一方で、丸山氏のお蔭でこの「差異」が明確になったお蔭で、小生としては、目下現代において補完進行形と云える「純正全体主義」の、過去との参照では説明尽くされぬ性質を有する「新規性」までもが改めて浮き彫りになるのであった。先述した興奮性の疼きの根拠は此処にある。丸山氏の「日本政治思想史」を途中まで読んで懸架にて熟成を待っていたが即効性という意味では先にこの諸論文を読んでおけばよかった。小生の不勉強と、戦後70年たってやっとこの諸論文を所収した岩波文庫の怠惰が今更ながら恨めしい。無論、日本軍国主義を特徴づける「大いなる無責任体系」についての指摘は巷間に散発的に披瀝せられてはいるが、丸山氏の、「超国家主義の論理と心理」「日本ファシズムの思想と運動」「軍国支配者の精神形態」は、発表年代の早さ(1946~1949)と、問題点をあらかた抽出し尽くす感度の良さ、複雑な事象を明確な理解で関連、系統づける論理的胆力、そして何よりも西洋ファシズムと日本軍国主義との「差異」を明確化した事により、戦中戦後論を考察するにあたって最も重要な基本論文であるのは小生が言うまでもない。場当たり的な端切れの思いつきの、その場限りの才気に走ったプレゼン上手の言説が、先の論文で示された問題点を自明として論説を組むなら兎も角、まるで丸山論文をあえて無視する蛮勇がカッコいいとばかりに無知を晒すのが「その場」ではウケるという少壮評論家=少壮社会学者=コミュニティデザイナー=軽薄デマゴーグどもによって、丸山論文のようにかつては主流を占めた、物事の根本を腑分けしようとする惜しみない思索の持久力の賜物が軽んじられるのはソクラテスならずとも忸怩たる思いは先鋭的に募るのであった。(←破格の一文悪しからず)

戦時の軍国主義と現代の純正全体主義の実相は、結局のところ「民衆」をその「主体」と置くべき「全体主義」である。しかし軍国主義においては、結果として誤謬と欺瞞を戦後にまき散らすのだがトカゲのしっぽ切りのようにして軍部批判、国体批判をやれば名目上は処理された事になった。しかるに今時の全体主義はそれらが見かけ上不在であるがゆえに、更に名目上民主主義政体を取り繕っているがために、主体である民衆自体を免責できないのである。故に「純正」なのである。

丸山論文で網羅された軍国予兆現象(政治家の官僚化、官僚腐敗、世論形成の主体者が世論に動かされる循環的主体喪失、過剰な日本礼賛、原発諸々の既成事実への無抵抗な諦めの大勢、外患、家族主義…国家=企業=家族、等々)は既に現今日本で顕現する現象でもある…しかれども早晩補完される純正全体主義としてはその「草の根」度がかつての軍国よりも浸透していると考えると、露骨な明文化と官憲による弾圧といったドラスティックな遷移ではなく、なだらかに、しかし確実に真綿で首をゆっくり締めるが如きマイルドな変容を呈するだろうと此処に予見しておく。しかし、安倍独裁と見るか純正全体主義と見るか、一考察する手間はあってもよいと現段階では思う。こんなことを云っていても…小生も現実では…例えば細君から、いい加減、メガショッピングモールの会員カードを作れ、と強要されてもいて…会員になればポイントとやらも溜まるしクリーニング代が20%オフになるから、などと…此れは思想の問題だから一考させてくれと申している状況なれど時間の問題…一方で裁判員制度の裁判員が心の負担を抱えているという報道にも憤怒の念がこみ上げるし…裁判員制度自体は司法に有権者の意見が入るよい制度なのに、裁判員の主体となる一般国民自体の「権力への意志」(ニーチェ)があまりに小市民的に軟弱だから、心のケアがどうのといった問題に転化され、その事が、司法から国民を排除したい特権階級による反動勢力による、裁判員制度反対論の手先になっている事が分からないのだろうか。常日頃から人が人を裁く事に思いを致しておれば裁判員になって犯罪の実態や司法の現場にびくつく事はないものを、権力の切実を有権者自身が思わないから、心の負担だとかいった、うろたえた不様を示すのであり、司法からあらためて有権者を放逐しようとする特権勢力を補強する、自分で自分の首を絞める愚昧なる惨めを呈するのである。

虎視眈々と9条改正のどさくさに平成翼賛体制の布石を打つ懸念が払拭出来ぬ自民党に以下の言葉を送り付けたい。誰の発言かよく考えよ。

「国家が人間のためにあるのであって、人間が国家のためにあるのではない。」 
                     アドルフ・ヒトラー『我が闘争』

次元大介はコンバットマグナムの早撃ちでルパンの危機を頻繁に救うが…小生は俄かにお出ましになったミスターGを駆除すべく部屋の八紘にキンチョーのコンバットを緊急配備する体たらくで…前述のようにテレビを漫然と流していると純正全体主義予兆ばかりにうんざりなので、DVDレンタルして、ルパン三世のテレビアニメ第一シリーズを毎晩熟視聴するのであった。掲載の写真はモンキー・パンチ先生の原作漫画コミックスの表紙だが…今宵は原作漫画については激賞したい事盛り沢山なれど触れない。アニメのエンディングの歌についてうっとり余韻を馳せたいだけである…しかしこの歌の題名が「ルパン・ザ・サードの歌」で歌手が「チャーリー・コーセイ」氏なのかアニメ(以下、動画という)での記載上、はっきりしない。それはさておき、コーセイ氏(歌の発音から、日本人と推測)の大声やかまし歌唱が朗朗とがさつでよいのである…何やらGS仕込みを思わせる無手勝流の、教育されざるソウル歌唱が手が付けられぬ気ままに、劇中歌としても野放図にシャウトする…ブルー・アイド・ソウルならぬイエロー・スキン・ソウルと云うべきか。ルパン三世という希代の物語についてもその骨格について述べるつもりも無い…ただただ今は、その世界観の断片を深腸で以て味わいたいだけである…毎晩、酒が進んでしょうがなかった。あっという間にワインを空ける…キレギレなる場面の断片のはかなくも美しい鮮烈を思うだけで…初期の頃の、無国籍の荒野を舞台にした、ハードボイルド度がコミカル度よりも高い頃の荒みと切れ味が忘れられず…木という木が全て、太く短く枯れている褐色の荒野に横臥したルパンと次元…戦闘の合間…黄色の空に紫の雲、赤とんぼを眺めながらゆったり過ごす大人の間合いが滋味深く…そうした荒野に点在する、馬鹿でかい空家の洋館に仮寝するルパンと次元…生活感の全くないだだっ広い大広間には、投げやりな感じの抽象画、マントルピースと木の椅子と、大ぶりのソファのみ、いつもの背広のまま次元はどっかと、たいていそうしたソファに足を投げ出して盗みの日々に眠るのであってルパンはルパンで木の椅子に馬乗りになって手筈を巡らすのである…頓智と周到、意表の効いたスピード重視の盗みの「仕事」の合間に設けられた、余裕の暢気が飄逸で味わい深い。小奇麗なCGを如何に駆使しようとも筋を追うのに汲々した昨今の粗悪アニメにはない合間が、味わい深いのであった。得体の知れぬ奇術師や時間旅行者、山岳ゲリラ的シンジケートや隠遁した偽札職人といった、およそ社会と隔絶した連中と、社会と隔絶した場所で丁々発止やりあう鋭い目つきのルパンと次元、時々不二子だったが、時代が経つにつれて…豪華客船とかモナコといった華やかな舞台へと、コミカル度も増しつつ移行するのだが…初期の、荒涼としたハードボイルドを懐かしく思うのだった。あの、ルパンたちが巣食う、生活感ゼロの洋間に掛けられた、ペンキを三刷けほど無造作に叩き付けたが如き投げ遣りな抽象画が欲しくなった。自分でも描けるが、そうすると自分臭がするので、やはり他人が描いたのが欲しい。あと、キューバが米国と国交回復しつつあるが…キューバで現役である、重要文化財級の、ルパンたちが愛用する昔の「古き良き車」たちが、資本主義圏との大っぴらな交流によって、乗り心地や燃費はよいがデザインが民主的市場的卑屈に丸まった最近のつまらん車に駆逐されねばよいが、と懸念する。

歌詞を上げておく。寄る辺無き稼業を生きる男たちの人生の無常を歌い上げる…

足元に絡みつく
赤い波を蹴って
マシンが叫ぶ
狂った朝の光にも似た
ワルサーP-38
この手の中に
抱かれたものは
全て消えゆく
さだめなのさ
ルパン三世
ルパン三世
いーーーーーーっ

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