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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「城ミチル/イルカに乗った少年(2015バージョン)」

台風一過、快く涼しい風、気持よく澄んだ青空…鬼怒川や宮城での決壊、水没映像の広範囲…収穫前の田畑が思いやられて見かけ倒しの沈痛しつつ実際には第一義的には他人事でしかなく…泥水に映る青空から突き出た電柱や電線の束の写真がまるでエヴァンゲリオンの絵…小社会的に追い詰められたシンジとの野性剥き出しの激闘の末に静止した使徒の遺骸が大きく転がっていてもおかしくない…また此度の災害も国家財政を圧迫するという間接的影響を先取りして鬱屈、加えて、除染作業で溜め込んだ草やら土の袋詰め群がそのまま洪水にごっそり流される、という深刻なニュースがさらっと流されて金輪際其れに触れられる事の無い此の国の翼賛深刻状況が毎日更新、相変わらず安保に関する世論調査は大々的にマスコミで公式に発表され続けられるが肝心の労働法制に関する世論調査は自民党経団連結託によって徹底的に一切秘匿されたまま衆参両議院で遂に成立、という、国民へのこの上ない侮辱がまた、大した事でもないかのように過小に流される事への、歯噛みする怨念冷めやらずとも…一方で此度の水害がまたぞろ、例の自粛強制ムードを蔓延させるならば、其の内容はどうあれようやく自立した政治的意思を持って個々人が立ち上がったという意味では其の火を絶やすべきではない安保反対運動に冷や水が掛かる可能性がある限り、安倍翼賛政権にとっては此度の水害さえも僥倖とも取れるのであって…その実、ありがと兎による自粛ムード再来とまではいかなくても、水害放送によって、安保法制成立のエックスデーを間近に控えた此の時期に、安保関連の放送と運動は下火になった感は否めず…此の翼賛政権は良くも悪くも運さえも味方に付けた感は否めないからますます憎らしい…私的にも色々あったから殊更に運気という事を思ってしまう…

私事ながら小生の重荷になっていた、小生の人生にセットされた比喩的時限爆弾…結局、いったん解除された事が判明して胸を撫で下ろす…あらゆる手立てをこうじていたし、取り越し苦労に済んでよかったとは言え、本物の比喩的時限爆弾と云うものは己が予測しうる範囲の外から唐突に飛来する他者性を有するはずであり…それは兎も角として解除された祝杯も込めて、柄にもなく、たまにはこういうものもいいかと思って、細君とフランス料理のランチコースを食しに行く…飲酒を見込んで電車で向かう…内陸の田舎の駅に降り立つ…まず目を引くのは駅前の、小汚いえげつな系の古道具屋…以前から気になってはいたが通り過ぎるだけだった此の御店…しかしそちらに吸い込まれる訳にもいかず後ろ髪引かれる思いで予約したフランス料理店まで歩く…荒んだ小規模事業者が野原に放置した錆びた産業機械やうらぶれた空家しかない草深い小道を行くと、明らかに店舗らしき、古びた丸太小屋の建屋の裏が丸見えなのだが、食材を運んだ段ボールの空き箱や空き瓶などが小汚く無造作に詰まれた中で白衣の店員らしきが煙草一服中という油断した様が剥き出し…予約の時間より早めに着いた小生らもあれだが…入店してすぐ右側は、元々客席だったはずなのに、今はシェフたちが空き時間に寛ぐ空間に使われているようだが…その一角はスポーツ新聞や週刊誌の束や計算機や帳簿がテーブルの上に山積みの奥でテレビで野球観戦という、だらしなく油断した感じのシェフ…慌てて客席に案内される…店内はなかなかよい雰囲気…飴色を帯びたウッディな内装、昆虫の翅を重ねて作ったような、歪んだガラスシェードのランプの古格…割らずに横から切断しただけの太すぎる丸太が黒焦げのままどかどか突っ込まれた暖炉など…雑木林に続く芝生の庭がよく見える窓際の席…音も無く小雨も降って、モミの木の根元に淡く繁る萩の花がこぼれんばかりの秋の風情…英国調の木組みの椅子の座面の座布団に白髪がこびり付いていたのは気になったが…久しぶりに、カトラリーや皿がきちんとセッティングされた状況に気持よく背筋が伸びる…皿も悪くない、ハプスブルク家やロマノフ王朝の偽物みたいな金彩と瑠璃釉の…料理は皆美味しい。小生は山岡ほどの美食家ではない、誠実な居酒屋料理で十分満足する程度だから、手の込んだ料理の数々に十分満足する…前菜、スープ、魚料理、肉料理、デザート、珈琲という一連の中で、魚料理の、舌平目のムニエルに焼きナスをすりおろしたソースが玄妙である。オレンジソースのクレープも絶妙であった。覚悟していたものの思いの外お値段が痛いのは、ワインのたのみ方をしくじった余計な出費も悔やまれるからで…初めは場にうろたえてグラスワインにしたものの料理の旨さにつられてあっという間に飲み干してしまい結局ハーフボトルのワインを追加注文するに及び、初めのいささか甘ったるいグラスワインは余計だったと。大いに気に入って店を後にして件の古道具屋に顔を出す…陶磁器は少なく、どちらかと云うとえげつない、下品なガラクタ系が所狭しと…トーチを掲げる木彫のエロ過ぎる裸女であったり海亀の剥製が二体ほど店先に野ざらし、小生好みとは言え、ぐずついた雑多な物品に埋もれる店主の態度は何処か高圧的…話を聞くと、野球の指導法に関する自著があるらしく、積んである著作物を示され…それが第7刷である事をすかさず自慢してくる…元東映フライヤーズ、元瀬戸内何とか高校野球部監督、という肩書、それがどうしてこんなさえない駅前でえげつな系のいかつい古道具屋を…床に放られた隕石とか月の石とかいう胡散臭い物品をしきりにすすめてくる…小生は、琥珀色に古びた、挽き細工の天目台と、裏に、彫った痕に金箔で太極図を描いた枕形の淡緑石の文鎮が気になったが、折からの満腹と引き締まった財布のひものお蔭で何もお助けせずに帰途に着く…寄せ集めればさほどの量でもないように思えるフランス料理だが温かいパンを千切って食べる度になすり付けるバターひとかけが思いの外胃に溜まるのである…その日はそのまま街に繰り出して細君の日傘探しに付き合って歩き回り意中の日傘が見つからぬ徒労のまま脚は棒、へとへとで帰宅し、食い慣れぬものを食べたせいかイタチ一匹分ほどの下痢で全部出してすっきりという顛末。ほろ酔いもすっかり醒める。

既に心の方は解き放たれていたかもしれないがいまいち区切りがついていなかったようだが…既に、手持ちのCDを聴いて何ぞ論ずるというスタイルに閉塞するのには心底辟易しており、そうした枠組みにとらわれず、折々の生活の中で自然に聞こえた音への思いが強くなっているから…これからはもう、手持ちのレコードやCDを聴いて書く、というスタイルを墨守することはないであろう事を此処に宣言したい。数か月前の事だが今年、テレビで、城ミチルが往年のヒット曲「イルカに乗った少年」を生放送で歌っていた…プールの前で熱唱する童顔のまま老いたミチル、その後ろを、よく調教されたイルカたちが次々に超絶の曲芸を繰り出しながら、という気合の入った演出もさることながら、楽曲自体が思いの外凝っているように聴こえて先が読めない…複雑に差し込まれる電子音もピンピコポヨ~ンとすかさず飄逸脱力、其の音色も意外に古格を帯びて…例えば、数十年前の雑誌の電機製品の広告欄など見ると、「インターメディア」、「マルチプレイ」、「ファジー」などといった今では死語の、力のこもった言葉が最先端の装いで近未来に前のめりになっており、其の尖りが今となっては鼻白むほほえましさも禁じ得ぬという事がままあるが、そういう、古色を帯びた電子音が艶っぽく生生しく再現されて、短い時間ながらも聴きごたえのある佳曲であったと記憶したい。ミチルとは関係ないが島津亜矢という演歌歌手…いわゆる歌唱力はあるのだろうがどうにも情感に欠けるから大声張り上げるだけのうるささが救い難い。以上の文章を、珍しくテレビでやっていたウエスタンリーグの、つまりプロ野球の2軍の試合を視聴しながら、同じテレビ画面の右端と下隅に、データ放送で一軍の試合経過を示させつつ、一軍の試合の実況をラジオでも聴取しながら、即ち情報過多の状況で書き急いだ。

いく夏を惜しんで

雲の山山を乗り越え海苔の味

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