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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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春の海…

のぼせた鯨の背のように波立たない、のたりとした春の海を切り裂く高速船の軌跡は、すぐさま何事も無かったかのように平滑におさまり…横に吹き飛ぶ波しぶきは霞んだ光を受けてもなお鋭く輝きながら兎に角速く過ぎ去って空に消え…とある島で催されるらしきマルシェ的なイベントに行きたいと細君がせがむから、小生は専ら大好きな船に乗れる目的を喜びとして船出する…自分はどちらかと云うとフェリーが好きで、下の、車を留める大空間がやはり鯨が口を開けたかのような大らかな構造だから風通し良く、前後が同じ構造だから港から出る時にいちいちバックしなくてもよいリバーシブルなのも機能的で気に入っているし、フェリーは客席が二階以上だから比較的静かなんだなと気付いたのは此度久方ぶりに高速船に乗ったからで…船速は確かに速く、時に進行方向が同じ漁船と競艇のようにして伴走する事態の重なりに馬鹿げた偶然のおかしみを禁じ得ない場面もあったが…床から直接響くエンジンの音と振動にはいささか辟易しつつも…座席を前に移ると、当然ながらも騒音は減少する発見もまた何だか愉快ではあった。そんなこんなで20分程度、往復40分の春の海の、海も空も光に満ち満ちた境涯を楽しむ訳だが…港から歩いて峠を越えてようよう辿り付いたマルシェ的イベントは、春の海のごとき、自然たる円満とは程遠く、苦い思いを受容する羽目にはなった…主に細君が、であり、小生は以前から此の種のイベントに偽善の異臭を嗅ぎ取っていたから今更傷つく事も無かったが、此度其れに気付いてしまったらしき細君は空しい疲労を伴うそこはかとなき失望を味わったらしいのであった…会場は二つに分かれ、歴史的建造物で、こだわりの食材を用いた菓子や料理、鉄工や木工、陶器や布などの手作りのお雑貨などをピースフルな雰囲気で売り買いしつつ、時にライブイベントでアクセントをつけて地域ににぎわいを創出する趣向…其の内の一つは、代々島を治めていた庄屋の素封家が立てた普請道楽の建築と庭園が見もの…凝った作りの八角形の楼閣は瀟洒で…其の縁側で腰を下ろし、鮫肉のソーセージを挟んだホットドッグで腹ごなししたまでは良かったが…次のメイン会場は…帝国海軍の下士官向けの福利厚生施設だった洋風建築…コクリコ坂に出て来る下宿みたいな感じで味わい深く…コクリコ坂と違うのは、此の施設に向かう坂道沿いに延延とスナックや居酒屋が密集している事で…明らかに海軍ご用達の名残りもあり…下見板張りに総白ペンキ塗りながらも所々剥げ、雨樋に溜まった泥にナズナがぺんぺんしているのも其れなりに往時を忍ばせ…此処は入場料取られた上に支払いした証に紙のリボンを巻かれる一方的な決まりからして、今にして思えば不信感の予兆ではあり…病院で出産後の女性と赤子も照合のために紙のリボンを手首や足首に巻かれているからアリなのかもしれないが…人を家畜扱いする失敬な識別のようにも思えるが…目が肥えた今となっては少々の物では欲しうならぬのでなまじの雑貨にはそそられず…唯一、石を球体に削ったオブジェには逡巡させられたが、結果、買わずに済ませた事に、後になって安堵出来たからよかった…ついついプリミティブな物体に心惹かれる癖があり、其れも、脆そうな石英の中に、豆大福の豆のように鉄系の空隙が虫食いのように散在している様に魅せられたが…今にして思えば大したものではなかったから、正しい判断だった。将来的には、京都の骨董市でも何も買わずに済ませる事を誇れるようになりたい…センス良く仕上げられた木の匙もあったから、カレー用に、と思ったが、此れも御預け…次回に持ち越す…其れで…苦い思いや偽善やらの記録をしようと思ったが…余計な事を書きすぎてしまったが故に…どうでもよくなり…自分としては春の海を堪能できた事を良しとしたいから、恨みがましい事は潔く忘れたいと思う。手っ取り早く云えば、コミュニティやらネットワーク作りやらに貪欲な此の種の業界の出店者らが、自分らの仲間内でのおしゃべりにかまけて眼前の客への対応をおざなりにして憚らない事が、一般の企業間競争とは隔絶した草の根のイベントだから許されると勘違いしているらしき傲慢な甘えが見え隠れしたり、次のイベントへの出店を持ちかける仲間内の関係者らしきへの丁丁発止の対応にもこなれた感じのしたたかさが伺えて、オーガニックとは名ばかりの、否、まさにオーガニックとも云うべき生臭さを一般客の前で露呈して憚らなかったり、あるいは、耳障りな大声でワーキャー騒ぎながら店の業務そっちのけで仲間内で写真撮影に余念がない事が、SNSに此のイベントのポジティブな成功を公開するそつの無さを予想させるから、自分ら一般客が、彼らが持ち前の社交性を発揮して彼らの人生を楽しむために企画する意識の高い菓子や雑貨や人間を集めてにぎわう自己満足の道具にされたかのような、利用された疎外感を微かに覚えたからといって特に彼らのようにしたたかにコミュニティを築きたい訳ではないからやっかみ半分ではないのだが、要するに、結構お高い金払って待ってる客がいるのに仲間内でくっちゃべってちんたらしてんじゃねーよ、と云う怒りの沈黙を其の場で細君は滾らせたらしい、と云う事を、伝聞ながら小生は以上の如く推測したのであった。其れは、其の時だけ、細君は別行動でオーガニックコーヒーを鉄職人に入れてもらう店(其れなりにモダンな造形の、ドリッパーの支持体を鉄で作り、販売するついでの企画…)に行った時の事だった。小生としては、件の事情でガレットを長時間かけて焼いてもらった時、カセットコンロを二台並べて、それぞれで結構大きい鉄のフライパンで焼くのだが、二台の距離が近いから、中のボンベが加熱されていつか爆発するんじゃないかと云う危険を感じ、気が気ではなかった…自分が防火責任者か消防の人であれば、二台の距離を30cm以上離すように指導しただろう。選び抜かれた素材のガレットは、センス良く仕上げられ、確かに旨かった。しかし、此れが手渡されるまでに、件の如く眉を顰めてしまう事はあったのだが…意識が高い事に対して、小生は肯定的ではある、旨いから…。

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