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「xtc/white music(1978)cdvx2095」梅雨
志野志野と降り続く雨…雨の帳の向こうの風景が唐津のように泥む(なずむ)…シングルモルト余市を一週間で飲み干す…結構高い酒である…このところ毎週木曜日を休肝日としているのに、飲み代(のみしろ)は嵩むばかりだ…
スーパーに売ってある葱や韮の類は束にされて根元を青いテープで巻かれているのがほとんどだ。それを見る度、いたたまれない気持ちになる…何故葱を辱めるのか、と…根までむき出しにされ束ねられてしまうという無作法な姿をさらしてよいのか、と…小生は、家に葱や韮を連れて帰るなり、すぐに包丁でテープを切断、いましめを解いて冷蔵庫に保管してやることにしている…風の谷のナウシカアーで、トルメキアの軍船が墜落したところに駆けつけたナウシカアーが、トルメキア軍に捕らえられていたらしい、ラステル(?)の妹の王女の両手をいましめていた鎖を、オームの皮から研ぎだしたナイフですぐさま断ち切り、死者の尊厳を取り戻すように…。ナウシカアーというのは小生所持の昔の岩波文庫版の叙事詩形式で記載されたオデュッセイアーでの表現方法である。最近の岩波のオデュッセイアーは、何故か散文小説の書き方をしている。叙事詩なんだから、昔のように叙事詩のように印刷すればよいものを、何故いちいち小説風にアレンジするのだろう…せっかくのホメロスの叙事詩が台無しじゃないか…いつになく穏やかだった心にも、怒りが不必要に飛び火してくる…ムーサイ(詩神)の薔薇色の指が山の端から見える朝焼け、という表現が印象的だった…そしてこの文庫本も、本の整理が不可能となっている状態ゆえに今では行方不明である…岡倉天心の茶の本だけで三冊持っている…読みたくなる度に見つからず、いちいち買い、ある日全部出てくるからだ…
漫画片手に細君がうとうとしている…そろそろ電気消すか…
そういえば岡倉天心といえば、茨城の五浦海岸の六角堂、此度の大津波で根こそぎ流されてしまったとのこと、小生としては東北諸窯の状況と同じくらい衝撃的な事である…自ら創設した東京美術学校(現 東京芸大)を、天心の芸術観とは関係ない、俗世上の不倫をネタに西洋画の黒田清輝に陥れられた末に自ら脱退、横山大観ら精鋭を引き連れて日本画の道を模索した記念的場所…天心が卜居したという、荒磯の点景たる六角堂の雅趣…いずれ訪れてやると思っていたのに、まことに残念至極。再建してくださることを切に願います。奈良時代の装束を、学生や教師の制服に指定し、馬で登校していた、当時としても誰もついてゆけない、ぶっ飛んだ御仁…
さて、王道なきロック史「悪趣味の系譜」編。XTC。英国1978。やろうやろうとして生来の自堕落が起因して進まぬこの企画、確か、大分前に10㏄のオリジナルサウンドトラックを取り上げようとして挫折したが、ここに、新たに再出発したい。しかし、再出発と云えど、悪趣味の系譜とは、これまでの議論、即ち、点在する系譜やサイケデリアの条件、そしてこれもまた中途で寸止めしてあるがハードロック編といったところで最終的に語られるものの、別の側面にして補強の観点(聴点)に過ぎないから、さほど耳新しいことは云わぬだろう…趣味とは何ぞや、についても、過去のどこかの日付で、段階的に述べたことがある…月並みな弁証法的記述から抜け出ることは無かったが、確か、趣味性奴隷段階、趣味性何とか段階、趣味性弁証法段階と分けて規定したはずだ(規定とかテーゼって、よく共産・社会主義者らの綱領に出てくる、たとえ論理上であっても、何が何でも前に進もうとする無謀な、あまり関わりたくない前向きさが堅固過ぎる…)…その詳細はそのブログ記事を再読願いたい。ブログ内検索で、「趣味性奴隷段階」とか入力すれば出てくるだろう。小生は面倒なのでそれも出来ないゆえ…。悪趣味の系譜ということから、少し絵画に詳しい人であれば、辻さんという方の、「奇想の系譜」という有名な著書を思い起こされる読者諸賢も居るだろう。江戸時代の絵画を語る上で、従来、狩野派の道統や円山四条派、土佐派や浮世絵でしか語られて無かったが、今、「へうげもの」で織部の食客となっている岩佐又兵衛の残酷大和絵(土佐派の伝統的大和絵の手法で、盗賊が男の胴を真っ二つに割り血しぶきが吹き上がり女房どもを身ぐるみはがして…といった絵巻)の発見に端を発して、蕭白や若冲、芦雪などの異能の画家を取り上げ、上記の主流でしか語られなかった江戸絵画史に、流派ならざるとも点在しつつ飽くまでも輝いていた画家の存在という知られざる豊穣を知らしめた業績である…
確かに、この悪趣味の系譜も、アメリカ音楽の点在する系譜も、奇想の系譜に似ていなくもない。しかし、真っ向から、異なる、と云いたい。奇想の系譜は、結局のところ、狩野派などの主流を主流として容認する立場を従来通り崩さなかった。しかし、この悪趣味の系譜では、点在する系譜では、その主流たる存在を否定するだろう…
ロック批評界に蔓延するビートルズ史観…相変わらず、モーニング掲載の「僕はビートルズ」では、どこまでもビートルズ史観を安全に追認しているが、それは兎も角、この王道なきロック史では、ビートルズ史観に対峙するものとして、ザッパ/ローリングストーンズ史観というのを樹立してきた。前者の内容は、詳細は過去の全記事を遡って読んでいただきたいが、かいつまんで云えば、「影響」という批評概念が作品制作という固有性を蔑にすることを、当の作品制作者も無意識に、あるいは自らの嗜好対象への思い入れが嵩じて意識的に追認した上で作品制作するにつれて強固に醸造される系統的制度と、それを批判する者への浅薄無思慮な反動的反発といった衆愚芸術様式である。全ては、あるいはロックの大部分は、ビートルズから始まった、とする世論である。ビートルズが何枚売れようが、そして、それの影響を受けた者が何万人居ようが、そんなことは音楽を語る上でなんら説得力を持たぬ要件である。むしろ、あたかも説得力ありげな要件にみえるからこそ、そのことによって、音楽とは、ロックとは関係を持ちえない、貧相で奴隷的発想なのである。あたかも説得力ありげに見えるということは社会の承認を得られている範囲内でのことに過ぎないからである。ロックは、音楽は、芸能は、社会承認を批判するものだ。対して、後者は、これから、訥々と述べることにする。
ここで、以下のような反論がありはしないか。いや、むしろ、もっと以前に、小生が、ビートルズ史観vsザッパ/ローリングストーンズ史観、という概要を打ち立てた時点で、何故以下のような反論が来ないのだろう、と、ずっと不思議に思っていた。つまり、ザッパ史観などといって、その定義に適合するようなバンドを羅列することは、まさに、批判の対象たるビートルズ史観の、単なる双子に過ぎないのではないか、と。確かに、今後、ザッパ史観に通底する悪趣味の系譜においても、今回のXTCのほかに、10㏄やロキシーミュージック、ゴドレイ&クリームやレジデンツやディーヴォやヘンリーカウやレコメン系などを取り上げるだろう。そして、何となれば、これらのバンドからザッパの影響を嗅ぎ付け、如何にザッパの音楽ひいてはサイケデリアの真正やさらにはロックの地獄の諸相がこれらのバンドに「影響」を与えたか、という論法で進めることはできる。そして、表面上は、そうなっているように見えるだろう。しかし、そうではない、と言い切るためにはどうするか。それは、ひたぶるに、彼らの音楽を、逐一、細部まで聴きつけ、意味を暴発するしかないだろうし、それに耐えうるのは、聴く者の安住を許さぬ、不快な、不愉快な細部である…ロックの原初である…不快といってもいろいろあるだろう…生理的不快もあれば、歴史認識にまつわる自尊心が傷つけられた場合の不快もあるだろう…ロックの場合、あらゆる不快が区別されず織り込まれているだろう。これで、ある程度、うっすらと、ロックにおける悪趣味の意味と云うのがつながっただろう。今後、もっとこの辺りを書き込んでいくつもりだ。論旨はこのへんで寸止めしておいて、では、XTCはいかに。
おどけるのを止めたピエロが、真顔で突拍子もなくやさぐれる。うまくいくものもうまくいかなくする無謀な前倒しはどこまでも性急で、落ち着きを許さぬ。うるさい。足がもつれたままつんのめったまま踏切を渡ろうとするせわしない慌てぶりが全編に充満する。予測つかぬ頓狂な細部が、大黒柱を片っ端から叩き切る余計な嫌がらせである。今宵はつまびらかにせぬが、かようなモダンポップ/モダンロック勢は、かつての60年代ガレージやサイケが保持していた、ロックの始まりの恥の上塗りを新鮮なまま、聴く者をいたたまれなくさせる嫌がらせ効果が十分である。恥の上塗りとは、例えばプレスリー的な、さんざん黒人を暴行してきた白人のくせに黒人音楽に割って入ってきて物まねし始めた歴史的恥でもあるし結局黒人音楽に異物を挟むようにしかならない嫌がらせ犯人としての音楽的恥さらしのことである。XTCはそのことに畢竟意識的である。アルバムタイトルがホワイトミュージックとなっている所以であり、ロックにおける白人性というのを欺瞞なく、しかし結局の処厚顔無恥にさらすしかないロックと云うとんがった業である。キンクスの名残りあり。
桑田圭祐の特集をNHKでやっていた…一人多重録音のような声質の、本当は怖い愛とロマンス…昨年末の紅白での演奏は80年代昭和の臭いぷんぷんで気骨あふれ、よかった。
andy partridge:guitar, voice
colin moulding:bass, voice
barry andrews:steam piano, clapped out organs
terry chambers:just drums
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