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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「the soft machine/the soft machine volumes one and two (1968-1969) cdwikd920」 2009年6月27日 マイケル忌


 新しいものを発見する気力や眼力がないというよりも、新しいものの創出による既成権力の破壊を恐れる既成権力の報復を恐れる卑屈な臆病が蔓延しているのだろうか、あるいはそうした卑屈な臆病を自覚出来ぬほどの無知無能が常態となっているのだろうか、かつて承認されたものが改めて追認され持て囃される閉塞的保守的昨今の文化状況である。しかるに、猫も杓子もパチンコ屋もコンビニも、村上春樹、エヴァンゲリオン、美空ひばりである。まして小生などは、はなから美空ひばりを承認、否、好みに思っていなかった。
 先週、美空ひばり没後20周年ということでNHKで特集歌番組をやっていた。日の本の歌謡曲を全的に否定するつもりはないし、小生とて田端義夫や村田秀雄、ピンカラ兄弟、内山田洋とクールファイブ、東京ロマンチカ、小椋圭や山口百恵やウィンクを好むものである。しかしながら日本歌謡曲が聴き手の音楽認識の限界を変換、批判しうるような積極的音楽であったことは、上記の彼らを除いてほとんど皆無であろう。その皆無さの代表が美空ひばりという絶望的状況であると言えるだろう。聴き手の趣味範囲を予め措定しその範囲内でやって喜ばれる戦後エンターテイメントの類稀な鼻声の拡張に過ぎない。
 ニュースで、美空ひばりの墓参りに訪れたファンの中年女性たちの集いを見たが、中には例外がいるかもしれないと慎重に留保する態度をとったところで状況は変わらないだろうから有体に書くとするならば、彼女らのような美空ひばりファンが、例えば日本GSの本質を聞き取ってその当時きちんとGSを擁護したとは考え難いし、ましてや彼女らがソフトマシーンを、自分を揺るがす体験として聞き取ったとは考え難い。小椋圭が美空ひばりに提供した楽曲「愛燦燦」を、件のNHKの歌番組で小椋圭自身が歌ってくれたが、美空ひばりよりも格段に良い。心におずおずと滲みました。美空ひばりよりも小椋圭が如何に素晴らしい歌手か、についてはまた詳述したい。

 ソフト・マシーンである。英国。このファーストとセカンドは、一聴して腑に落ちる音ではなかった。何をやろうとして何になっているのか分かるバンドではなかった。一体何なのだろう。いまだにさっぱり分からないのであるが、少なくとも英国のあの叙勲バンドに端を発した英国の産業サイケに全くサイケデリアの本分を聞くことが出来ない本プロ愚の論旨にとって、英国産でありながらサイケデリアを感得できる数少ないバンドの一つであると言える。しかしそう言った途端、サイケデリアからも様式を嗅ぎ取って速やかに前衛ジャズロック的試みへと流れていくだろう、そうしたバンドである。
 まず彼らの成したサイケデリアであるが、決して骨太ではないにしてもその線の細さや弱弱しさや巧妙さが攻撃的でもありうることを、威圧的でない、しかし川の流れが決して単調ではないように複雑巧緻なリズムで納得させるだろう。至って物寂しいが、それが英国あるいはアイリッシュな民俗に許容される雰囲気作りを拒絶する、どこまでも現代的な病的さである。ザッパの場合、凶暴さの背後にどこか低調な衰弱を思わすが、ソフト・マシーンの場合は弱弱しさの切っ先に攻撃性を尖らす、そしてその攻撃性はどこまでも儚いのが、サイケデリアの一様相とも言えるだろう。
 ジャズロックについて考えなければならないが、これがよく分からぬ。ジャズ的素養をふんだんに取り入れたインスト主体のロックといってしまえばそれまでだが、そうはいってもジャズロックなるものをいわゆるジャズと聞き間違う事は少ないだろう、ジャズとジャズロックの間には、当然ながら途方もない飛躍がある、と指摘するに留めたい。
 ただ、このファーストとセカンドは、ソフトマシーン後期の、おさまりどころを得たようなジャズロック目的のアルバムとは異なる。あまりに儚かったがゆえに彼ら独自のサイケデリアの終りからも流去した彼らは、プログレッシブにもハードにも、ジャズロックにもおさまれぬ無人の荒野で、萩の原のように咲き乱れたのであった。
 そう、ソフトマシーンは、ロック史における点在する系譜に含まれうる、突拍子も無い点であった。あるいは、後にカンタベリー一派と括られるにしてもそのカンタベリー~レコメンディッド・レーベルといった英国の日陰者らが、デリダ風に言うと散種された点在する系譜になるのであろう。いかにもインテリジェンスの利いた音作りに聞こえてしまいそこが馴染めぬ御仁があられるかもしれぬが、知性や理念ほど凶暴なものはなく即ちロックに相応しいことを示してもいるのがソフトマシーンである。

マイケル・ラトリッジ:オルガニスト(?)
ロバート・ワイアット:ドラムス、ボーカル
ケビン・エアーズ:リード ギター
ヒュー・ホッパー:ベース

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