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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「moon riders/animal index(1985)pcca-00296」

 
イスラエル王アハブ「武装しようとする者は武装を解く者のように誇ってはならない」『列王記』

ブルーツス「法律は強いが、もっと強いのはいやおうなしの勢いだ」『ファウスト』

メフィストフェレス「ブドウの汁はどんなに馬鹿げた泡を立てようとも、しまいにはやっぱりブドウ酒になるんだ」『ファウスト』

メフィストフェレス「自由の権利のための戦いとは称するものの、よく見れば、奴隷対奴隷の戦いに他ならない」『ファウスト』

魔女エリヒト「自分の内心を支配できぬ者ほど、とかく隣人の意志を自分の高慢な心のままに支配したがるものです」『ファウスト』

ファウスト「わしは無感覚になって幸福になろうとは思わぬ」『ファウスト』

内村鑑三「単独の幸福」(1921年1月2日 漫筆)

ヒロン「結局弟子たちは教育されなかったかのようにめいめい自分の流儀でやってゆくものだ」『ファウスト』

天の海に雲の波立ち月の船星の林に漕ぎかくる見ゆ 『万葉集』

ファウスト「自由な土地に自由な民と共に立ちたい。その時は、瞬間に向かってこう言ってよいだろう。とどまれ、おまえは美しい!と」『ファウスト』

吾が屋戸の夕影草の白露の消ぬがにもとな思ほゆるかも
吾屋戸之暮影草乃白露之消蟹本名所念鴨 『万葉集』

若い者の前では、つとめて、新時代への理解を示そうとしながら、しかも、その物の見方の、どうにもならない頑迷さにおいて、宛然一個のドン・キホーテだったのは悲惨なことであった。…(中略)…してみれば彼自らも、伯父と同様、新しい時代精神の予感だけは持ちながら、結局、古い時代思潮から一歩も出られない滑稽な存在となるのでないか。 中島敦『斗南先生』

妬みこそは神慮よりも慈悲に富む、私たちの歩みの先導者であるのに、どんな治療学もどんな倫理学も、妬みの齎す恩恵を礼賛したためしが無いとは、奇っ怪な話ではないか。…(中略)…おのれの悪徳を大切に養うこともあえてせず、なんびとと張り合うこともあえてしない結果、我が身の手前側に留まり、万人の下位に立つみじめな人間に、あわれみを垂れてやろうではないか。 E.M.シオラン『暴君学校』

 
悪趣味の系譜を求める行列式。変数はテクノ、モダン、ポップ、y、サイケ、ガレージ、パンク、プログレである。yはロックの函数である。「行列」の演算については高校数学を参照されたい。

重力による空間の歪み、あるいは量子における時空=次元の不確定性などという現代物理学の概念は空間という概念形式を知らぬ浅学なる物理学者の戯言に過ぎぬ、そもそも歪みという認識があるのはその歪みを相対的に表象せしめる絶対空間を前提としており、空間を議論するならばこの絶対空間を主題にしない限り何の意味も無い、歪んだ空間などというものはこの絶対空間の中に存在する一表象に過ぎない…と昂然と古式ゆかしく執念していたのが…この、鈴木慶一の傑作の一つ、「悲しいしらせ」を聴取すると…時空の歪みと不整の脈動という量子的振る舞いが、この日常の、ニュートン力学世界にも先取りされる幻惑を体験できるから不思議である。「悲しいしらせ」は「アニマルインデックス」所収である。今宵は、この、「悲しいしらせ」についてだけ述べる。先週のヒカシューに引き続き、今回挙げたムーンライダーズも本来ならば「悪趣味の系譜」の布石であることをとうに忘れていた。上記に、「悪趣味の系譜」を路頭に迷わせる行列式を示しておく。行列中のyはバンドの固有性にしてロックの有り様そのものであるが、いずれにせよyの中に未知数xがいつまでも解答されはせぬ仕掛けというか事実に即した表現を施してある。ムーンライダーズの鈴木慶一氏は、同時代の、はっぴいえんど細野晴臣氏やYMO坂本龍一氏と互角の才能を開花させた。

まずは、「悲しいしらせ」の歌詞を写そう。日本語であるから。

悲しいしらせ     鈴木慶一 作詞作曲

一度だけならまだがまんもするが
こう何度も ウソをつかれちゃかなわねえ
海辺に連れてってよ ねえ兄貴
気分を変えたいんだ そして
馬鹿でまぬけな このボンクラ頭 波に洗おう

つまずいて大切なバラの茎折った
血迷って はいたツバは飲みこめねえ
天使を連れてきてよ ねえ兄貴
気分を戻したいんだ そして
馬鹿でまぬけな このボンクラ頭 神に捧げよう

君は天国を知らないまま 暮らしてく
君は地獄を知らないまま 暮らしてく
悲しい知らせがあるよ 今日 ボクが死んだ

一寸だけ助けてよ ねえ兄貴
も一度会いたいんだ そして
馬鹿でまぬけな このボンクラ頭 滝に打たれよう

君は天国を知らないまま 暮らしてく
君は地獄を知らないまま 暮らしてく
悲しい知らせがあるよ 今日 ボクが死んだなんて

生きてるのか 死んでるのか わからない気持ち ※
(※繰り返し)

80年代後半から90年代にかけて持て囃された内向性(=碇シンジ、「等身大の自分」byミスチルetc…)は、2000年代の今となっては、時間をかけない侮蔑の一瞥によって事済まされる、相手に値せぬ「ぬるま湯」視されるが落ちだろう…「生きてるのか死んでるのか、わからない気持ち」などと歌っていたら、今日においては「じゃ、すぐ死ね」と、すぐさま撃ち殺されるのが、現在の荒みである。人間の機微とか裏表を勘案する余裕など抹殺されているのだ。「君は天国を知らないまま暮らしてく、君は地獄を知らないまま暮らしてく」などと歌っていたら、強大な体制によって、すぐさま「地獄」に落とされる手続きが取られるだろう。当たり前と思っている生活のかき割りが叩き壊され、剥き出しの市場闘争原理による搾取と苦役と重税と隷属と権利剥奪が待っているだろう。従って、現在ではこんな歌は「通用しない」とも論評できはするがしかし…「ぬるま湯」レッテルによって「内省」が承認されない状況で、それでも内省に拘泥するならば死を覚悟した命がけの思想たるを要求される、思想にとっては望むところでもあるのだろう。時代は変わる。思想は変わらない。不動である処の思想に、時代がくっついたり離れたりするならばそうさせておけばいい。

音は…厚みを増した朝霧の不整脈…心臓が燃えて焦げ縮まる苦しい瞬間の断末魔における僅かな動悸が、電化された見通しの無い音壁と激しい歪みのファジー音像、目くるめく転調の自在で以て、ぽつ然とした不安をきょとんと、ある種の馬鹿犬のように醸してくる…煽られる不安の誇示的厚かましさと異なり、持病の如き憔悴の盆踊りがここに。こうした音楽はその特質としての点在性の達成として「ペットサウンズ」「スマイリースマイル」の「影響」を忌避した隔世の勃発である事も特筆に値する。聴けば聴くほど頭が腰砕けになるだろう。因みに、ライナーに記述されてなくて兎に角うろ覚えだが、この楽曲は元ボクサーの喜劇役者たこ八郎の死(泥酔して海水浴の挙句の心臓麻痺)を悼むものであったと思う。

なお、以下の、たこ八郎へのタモリの告別は、一見すると、調子に乗って「内省」を追撃する「時代」側の荒んだ言説に思えるかもしれないが全然そうではなくて、不動の「思想」としての、ルサンチマンを排した言葉=荒みである事は余談ながら付記しておきたい。「荒み」が、現状の勢い(=時代)と、現状への意志(=思想)の両義を意味する引き裂かれた概念であることは、拙筆なる「荒み宣言」において詳述している。

タモリ「たこが海で死んだ。何にも悲しいことはない。」

moon riders

keiichi suzuki
tohru okada
masahiro takekawa
tetsuro kashibuchi
hirofumi suzuki
ryomei shirai

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