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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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殺到する現実…

えてしてスポーツの賞味期限は、勝敗が決まるか否か、記録が出るか否かの今の一点に限られており…其れが過ぎてしまえば幾ら選手のコメントや表彰式、表敬訪問や凱旋パレードでスポーツの興奮を長引かそうと躍起になっても詮無いだけで、だからこそ国家と資本は毎日毎日スポーツをリアルタイムで産出する事に励むのであり、結果の分かったスポーツの再放送ほど気の抜けた炭酸よろしく空しいものはなく…五輪も終われば見たくもない現実が殺到する目も当てられない現実…エアコンフル稼働していた連日の猛暑もあっと云う間にどこへやら、台風二連発を契機に超ド級の秋雨前線でこのままでは県庁所在地、政令指定都市が丸ごと水没しそうなほどの降水量で、温暖化の猛威が最早眼を背けられぬほど現実になっている…そこにはもう、五輪で煽られた無意味な祝祭感に内在する根拠なき楽観さえも徹底的に払拭されて、犯罪的にまでの覚束なさを露呈する政治の無能がどんな顔してよいのか分からぬ薄ら笑いを宙づりにする所業…其れに加えて手の施しようがなく専門家をして制御不能と云わしめたコロナ感染、不治の後遺症による絶望、経済効果ゼロどころか多大な借金を国民に担わせる五輪の残骸、ほとんど災害としか思えないほどの無能ぶりが確信犯的に罷り通る政権の無能有害暗愚、資源の争奪戦、温暖化に伴う生活基盤の直接破壊、作物の不作、食糧危機、いがみ合う国家、愚劣極まる戦意高揚、其れに付け込むシステム、等々…まさに御先真っ暗…確かに柔道大野の金メダルは大会中ささやかな白眉、試合に勝つと云う人間的枠組みを図らずも逸脱して、ケモノが獲物をしとめる感があったのは圧巻だったが、殺到する危機的現実の最中で焦点の合わせようもない虚ろな瞳には五輪の喧騒など慰みにもならぬゴミの如き記憶に過ぎず、吐き気さえ催す空しさのみだ…ただただ、河川氾濫が此れ以上なきことを無力にも祈るのみ…。一方で、今と云う一点での求心力が広く人間一般に有効であるスポーツと比べて、一度制作されてしまえばたとえ遥かな過去に其れが制作されていようとも再現前化する機会があれば其の度に新しい感動をもたらす優れた芸術の賞味期限は長く、スポーツは瞬間に消費されるが芸術は時間に消費されない(少なくともある一定期間は)…そんな芸術の力をうまく活用した好事例があった…其れは、高校の美術部の生徒に、被爆者の話を聞きながら被爆の惨状を油絵にさせるという試みである…被爆の実相や被爆体験を継承すると云いながら、芸術=虚構=嘘と云う浅薄な認識によって、「はだしのゲン」や「黒い雨」や資料館の被爆者人形を排除し、被爆の実相への想起力に欠けた焼け瓦や破れた衣類などの現物保管に偏重する事で被爆の実相を隠蔽する事に加担していた平和都市であったが…鑑賞する度に其の都度テーマを再現前化させる人力の絵画によって被爆の実相を「表現」する事に踏み切った事は件の実相の継承にとって最も有力な手段であって…過去の記憶をまざまざと、ありありと継承したいのなら、芸術に頼るしかないのであり、ようやく其の事に気が付いた試みだったから高く評価できる…美術部の生徒たちは、およそ人間が受容できる許容範囲を遥かに超える悲惨から逃げる事無く、其れに真正面から向き合い再現前化を試みる、即ち被爆体験を認識として経験する心の負担は悲痛の限りであったろうに、よくぞ其の経験を貫いたと、其の真摯ぶりに敬意を表したい。経験とは経験的認識であるbyカント。

次回は9月5日です。

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