忍者ブログ
 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
[227][226][225][224][223][222][221][220][219][218][217]

リハビリ編「frank zappa/you are what you is(1981)rcd10536」


 暗い処で目を閉じていても闇すらも明るすぎて眠れない時もあった。先週襲われた激甚なる憂鬱状態はついにある一線を越えた感があった。著しい虚脱感と投げやり、このまま突っ切って逃げ切る覚悟も無いままに真っ暗な緞帳で簀巻きにされる圧迫感が気腔をぐいぐい底上げしてくる動悸のような妄想心身が虚実被膜を搔き混ぜるように打ち寄せ打ち寄せ、何事も無いような…敷布団と掛布団に首から下を挟まれつつ、枕で丁重に支えられた頭部のみ、淀んだ部屋の空気にさらしながらカーテンを閉め切った薄暗闇でカッと目を見開き続ける日中の不動があった。もう既に、吐き気を催すためにそこに行くとお金をもらえるところでしかない賃金仕事における比較的重要な案件…数を数える能力が別れを告げて久しい自分には最早数え切れないほどの多くの人間関係を調整しながら見かけ上自分が計画を主導してきた事柄を実行に移すというその当日に、何もかも嫌になっていきなり休むという暴挙に打って出る、体はピンピンしている馬鹿馬鹿しさながら次の日も仮病ついでに休む…こうしたことはこれまでも頻繁にあったが、今回特筆すべきは、家にいても、生活上発生してくる様々な片付け事が一切できなくなった、ということだろう…できない、というこの感覚…前日食べた肉の味が残っているかもしれないので少し舐めてみた箸を台所に持っていく、といった程度の一寸した事が、どうにも、できない、という滑落した精神の萎え…その辺の畳の上に箸を投げ散らかす、という事になる…何もしたくないので空腹を我慢してなるべく動かないようにしていても、一寸した整えができないと家の中と云うのは隠微に乱れていくものである。典型的な鬱病の症状ではあるが、そんな社会承認などどうでもよい。いっそ、承認されれば楽なのか…分からない。いままでは心の風邪で賃金仕事を休んでも家の中ではしてやったりとしめやかに楽しむこともあったが、今回の憂鬱は、本当に何もできなかった…鏡で己の顔を見ると、これまで職場で何人か見てきた、鬱病で長期休職になった人の顔、になっていた…びっくりした。腐りもせぬし使い込まれてもいぬ、つまらぬ板切れのような…後日、ぎりぎりの社会性によって社会社へ出頭すると、修羅場を通り越して、取り返しのつかない破綻が待っていた。

 ぼちぼち、リハビリ編ということで、ロック史考究に復帰したい。ロックに歴史はあるのか、あったのか、という疑問もありはする…王道なき、と冠している以上語弊はないかもしれないが、ロックでいうところの歴史とは限りなく雑事に近い謂いなのかもしれない。歴史とは関係性の解釈ではない。いつ修復不可能な心的恐慌がぶり返すかもしれないが、いつだって生活は見切り発車ではあろう。「吾つまるところ己なり」セコイアの年輪のようにぎっちり圧密された声の多重録音その他の音数の多さは、目の細かい紙やすりのように聴く者の聴覚心象を磨滅してゆきつるつるの一個の球体になさしめる。男たちの、他人の糞でたっぷりの腹からそれを逆流させるオエオエの嘔吐声の重低音絞り出しを、悪意に満ちた丁寧さでぎっちり重ねてくる重厚がまことに耳にきついが、そんなことにはお構いなしに、かような汚く重い歌唱をやたらと手の込んだ変節珍曲に練り混ぜて高速でぶちまける事全20曲がノンストップで繋がれている。余白や余韻といった馴れ合いとは無縁のポップの炸裂である。「うる星やつら」の先駆的けたたましさのプラスチック感もある。下半身がつるんと剥き出しの少女がえんえん泣き止まぬのに、うろたえるばかりでうごうごと互いを無能に傷つけるしかない太った、下卑た白人の男どもがいたいけな少女を囲繞しながら上の口と下の穴から他人の糞を噴出させながら純情な嗚咽と雄叫びをぶちまける変態ミュージカルといった悲惨絵図。やたらめったらとやかましく、無性に明るい。そんな彼らのメッセージはただ一つ、コール アンド レスポンスでしぶとく繰り返される煽り文句「we're gonna be free,gonna be free,gonna be free…!」

frank zappa:lead guitar and vocals
ike willis:rhythm guitar and vocals
ray white:rhythm guitar and vocals
bob harris:boy soprano and trumpet
steve vai:strat abuse
tommy mars:keyboards
arthur barrow:bass
ed mann:percussion
david ocker:clarinet and bass clarinet
motorhead sherwood:tenor sax
denney walley:slide guitar
david logeman:drums
craig twister:stewart harmonica
guest vocalists:jimmy carl black,motorhead sherwood,ahmet,moon,denney walley

拍手[0回]

PR

この記事へのコメント

Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧できます
 

この記事へのトラックバック

トラックバックURL

忍者ツールズプロフィールは終了しました

HN:
々々
性別:
非公開

04 2024/05 06
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31

ロック史最新記事

(03/03)

ブログ内検索

最新トラックバック

最新コメント

忍者アナライズ

Copyright ©  -- 仄々斎不吉 --  All Rights Reserved

Design by 好評ゼロ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]