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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「zappa beefheart mathers/bongo fury(1975)rcd 10522」 2009年11月8日 小春


 備前岡山の大手饅頭なる菓子がまことに美味しい。労農茶人を自称するも元来酒飲みゆえに茶の味に疎く、そういう意味で、旨い茶を入れる高度な技術が試される煎茶ではなく、よい湯と茶があれば素人でもそこそこの風味となる抹茶を言い訳にして道具遊びに興じている始末であるから菓子への興味も薄い。これまでの茶事では大豆や胡桃まで出すことを辞さない。それは兎も角、食べ飽きぬアンコの甘みにほだされて、三個続けて大手饅頭を頬張りながら徒然なるままに。
 細君が、道長はすごい、と言い出した。道長をもっと表に出すべきだ、と。藤原道長のことである。確かに時代劇や日々の話題において、信長や秀吉や家康や竜馬などが語られることはあっても、道長が取り上げられることは少ない、せいぜい教科書の中ぐらいだ。日本史忘れがちなれど、自分の娘を天皇家の端々に嫁がせて権勢を振るった、下りを知らぬ目出度さの上るばかりのエスカレーターのような道長に、勝手なイメージながら天晴れを感じたのであろう、と小生も共感する。魯山人などは秀吉がすごい、絢爛豪華に大きいものを建てては壊し建てては壊す後腐れない豪奢がすごい、などとどこかで云っていたが、平安貴族の道長は、少なくとも秀吉にはあった、日の本の政治経済の仕組みを変えてしまうような有能とは無縁に、ただひたすら既成権力皇族との血筋を濃くし地方の荘園を増やしまくって己の権勢と私腹を肥やすどうしようもない無能なる上り調子である。混迷の世、そうした、生活感労働感の全く無い道長の目出度さに、伊勢踊りやエエジャナイカのようにあやかりたい気持ちもあるのかもしれない。
 翻って小生は、小学館の漫画雑誌コロコロに掲載すべき、「外戚小学生 道長!」なる熱血少年漫画を夢想した。
 原案は小生、作画は、今や飛ぶ鳥を落とす勢いのジャンプのワンピースの作者と同期で、小生はワンピース作者よりもデビュウ当時から贔屓していたが、幼児猥褻の嫌疑により一時休職という困難を乗り越え漫画界に復帰した島袋光年氏にお願いしたい。吉本隆明そっくりに老けた小学生たけしが悪い奴らを倒す痛快漫画「世紀末リーダー伝 たけし!」の島袋氏はジャンプよりも、コロコロ向きだと思われる。最近、久しぶりにコロコロを購入、小生が学童の頃と変わらぬ処変わった処が散見され、いずれ指摘したい。負けた悔し涙を拭こうともせず、死んだ親父の墓石に必殺技ボールを激しくぶつけて修行に励むドッヂボール漫画「ドッヂ弾平」(弾平も弾平だが、弾平のボールを受けても倒れない親父の墓石もすごい)や当時流行ったミニ四駆漫画「ダッシュ四駆郎」などが思い起こされる。
 いつも頬に傷跡、鼻頭に絆創膏貼った、髪はぼさぼさの現代の少年、藤原道長が、必殺技「望月」を繰り出すときの決め台詞は、当然あの歌だ。強敵との壮絶な闘いの末、絶体絶命のピンチの中、「この世をば~わが世とぞ思う望月の~」と低く唸りながら、カメハメ波よろしく溜めに溜めて、夜空を占める満月をバックに、「欠けたることもなしと思えばーっ!」と絶叫しながらパンチなり娘?なりを繰り出す、という必殺技である。細君にこのアイデアを話したが、さほどうけなかった。
 和紙に土や流木や羽根を漉き込む紙漉き職人坂田直昭氏の特集を季刊銀花で読む。
 来週、ゆえあって小生がエステティックサロンに行く破目になった一連の騒動について報告したい。 

 さて、梵語幽霊もといボンゴ・フューリーである。ザッパとキャプテン・ビーフハートの共作音源である。70年代の重要傑作群を前にしての、中休み的な位置付けである。曲がりなりにも世に派を立て名を広めた者の影にようにして、原理的な男、本質的な男、というのが伴う場合がある。この事は、立派なる男/本質的な男=ブライアン・ウイルソン/バン・ダイク・パークスの二人について論じたかったが、順番なので、今回は仕方なく、立派なる男/本質的な男=ザッパ/ビーフハートの組を例に取り上げる。王道なきロック史、ひいてはアメリカ音楽の点在する系譜、においては、往々にして、立派な男/本質的な男、の組み合わせが見られるが、往々といっても、小生、先に挙げた二事例しかしらぬ。しいて挙げるとすれば、アメリカ音楽の点在する系譜の、その点在性を最も物語るかもしれないが、英国カンタベリーのソフトマシーンの、マイケル・ラトリッジという御仁が、バンド内で、本質的な男、であったかもしれない。
 この本質的な男は、一見して表立つ立派な男の影のように、世にあっては在りながら、影だからといってその表の男の存在に依存するものではなく、寧ろその表の男の本質を成す控え目である。しかし、控え目というのは風潮の相対的な見方であって、表の男にしろこの本質的な男にしろ、相互に依存する関係ではなく寧ろ各々独立した在り様である。人間だから当然である。この本質的な男は、その名の通り、本質的でしかありえない。この場合、ロックという音楽に対して、原理的な態度でしか挑む事が出来ぬ、不器用もへったくれもない、動かし難く本質的な生き様なのである。
 この本質的な男に、半ば脅かされるような気もしている、将来的に表立つ男は、別の見方すれば本質に脅かされることが可能な鋭敏な(凡)才を、本質を、持ち合わせていることにもなる。だから、表立つ男に本質が無いわけではない、そして、表立つ男は、本質的な態度を薄める小器用な小手先を弄することに長けた商売上手、というわけでもないのだ。むしろ、別の、本質に相応しい方法でその本質性を顕現へと導いた。このことが表立ちの謂いである。表立つ男/水際立つ男、といってもいいかもしれない。ただし、この本質的な男を、孤高の人、と名づけ称揚すると、これまでの論が全て台無しになる。孤高として持ち上げられる存在ではない、ただ、単に、本質的でしかありえなかった、承認されぬ不器用、という俗なる底辺で蠢いているだけだ、そのことは、以前「トラウト・マスク・レプリカ」を取り上げた記事を再読していただければわかると思う。
 ビーフハートは本質的な男として、好き勝手に、しかし本質に抗いようもなく耳をそむけようもなく、ブルースの閉じた坩堝から錬金術のようにロックの種を生成せしめた。一方でその種は、無理を見かねたザッパが坩堝に放り込んだ余計なお世話かも知れず、しかしザッパはその仕事をわきまえ、自身でも十分にその本質を咀嚼した上で、その坩堝を叩き割り、広く広くいかがわしく音楽の肥やしとし、よく肥えた音楽荒野に種を撒き散らしてのサイケデリア樹立でしか、その種も実らなかったであろう。樹が先か種が先か、鶏が先か卵が先か、かたの着く話ではない。
 別の組、立派なる男/本質的な男=ブライアン・ウイルソン/バン・ダイク・パークスでは、さらに信じ難い転倒が起きるが、これはまたの機会に。
 このアルバムは、こうした二人の関係が顕著である。百戦錬磨の、顔の異なるザッパのバンドにあっても、ビーフハートの、岩ががなりたてる凶暴な声やハープは薄まりようもなく、バンドもそれを薄めようとせず野放図にやらせながら、暴走する野獣をいさめるどころか更に急き立てるタチの悪い木刀のようなギターや頓狂なリズムや変態構成の煽りは健在である。時に男くさい抒情に流れたりもするが、すぐさまきびすを返してぐちゃぐちゃやる。立派な男と本質的な男の関係は、関係や縁といった言葉よりも、本来的な意味での、情という言葉が相応しいと思う。小生にも、自分がどこまでも本質的であることで、何かしらを花開かせるような男、というのが近くにいたら、と思ったりもする。
 
 frank zappa :lead guitar, vocals
 captain beefheart :harp, vocals, shopping bags
 george duke :keyboards, vocals
 napoleon murphy brock :sax, vocals
 bruce fowler :trombone, fantastic dancing
 tom fowler :bass, also dancing
 denny walley :slide guitar, vocals
 terry bozzio :drums, moisture
 chester thompson :drums (on 200 years old and cucamonga)

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