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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「yes/yes(1969) elektra/rhino8122-73786-2」 2009年10月25日 曇秋


 書道ラブコメディ漫画「とめはねっ!」を購入。手っ取り早く、文人趣味の必須科目、書道について学ぶ。さえない男子が、なぜか可愛い女子にもてもて、という典型に、書道を付け合せた文化系女子漫画である。そそられるのは矢張り道具、自分が書を始める時は、硯、筆、水滴、文鎮、紙などに、己が目に適ったものをお助けしたいものである。数寄において、身の程をわきまえるつもりはまったくない。字がへたくそな小生、いきなり最高の道具を以って書の道に挑みたい所存。漫画読みながら、宿便快男児、や福耳女子高生、などといった馬鹿げた言葉を浮沈させて夢想に励む。どっしりこってりした握り寿司の油絵も描きたいが時間が無い。
 朝、日曜美術館が半分しかなかったので憤然としながらだらだらテレヴィ見ていると、またあった、団塊ジュニアによる団塊への媚びへつらいが。昨今、目につくこの種の媚びをいちいち指摘することが本ブロ愚の頼まれもせぬ使命になりつつあるが、大事な事は何度でも書く覚悟だけは小生旺盛である。一瞬、また見つけてしまった、と思って心の嘔吐催して直ぐに目を逸らして番組変えたが頑張って元に戻したが、つまり、どこかの地方の山間部で、フォークジャンボリーなる催しの舞台裏、をドキュメントしていた。オヤジバンドなるものがどこまで音楽に対して真摯で根本的な仕事をしているのか皆目分からない。渡る世間は鬼ばかりのオヤジバンドのような単なる胸糞悪い懐古趣味のイメージが大手を振っている陰で、熱いビートをじゃりじゃり聴かす老いてなお盛んな団塊ロックも地方には出没しているというが、このフォークジャンボリーにそうした危機意識の高い身につまされるような音楽を見出す可能性は皆無である。それは日本フォークという音楽の限界所以であることは過去に何度も書いたので参照頂きたいが(2009.3.1付けの記事)、往年の、そしていまでも続けているフォーク歌手らが何をやろうと反体制の皮を被った日和見連帯に過ぎぬので何の意味も無いばかりか意味ありげに見せているところが狡猾なる欺瞞である。遠藤賢司がアコースティックギターかき鳴らしながら絶叫し続けようとも、そうした音楽構造が音楽として稚戯なる満足に過ぎぬのでどうしようもない。
 ただ、往年の団塊フォーク歌手とそれを好んできた団塊客が懐古趣味的に地域手作りステージに集うのは、最早批判の対象にはならないどうでもよさである。勝手にすればよいだけの話だ。ただ、問題なのは、大物歌手らが歌うメインステージとは別に設けられた、ミニステージとやらで、往年の和製フォークに共感するかのように、団塊ジュニアらしき年代の者らが、世相を反映する歌詞をアコースティックギター一本でフォークしている様が流れた事である。中には派遣切りキリキリマイと題してその手の事をフォークしているのだが、その若い彼女は、かつて団塊らが革命の現場で和製フォークに甘んじそして今となってもそれを懐古解雇的に復権させようとする狡猾を批判せぬばかりか、音楽的意志の低さゆえなのか無自覚に自堕落和製フォークを翼賛し再生産するその行為が、極論でもなく、派遣切りや年越し派遣村を引き起こしたことを認識すべきではないか。音楽が出来る者の責任を意識しないからああした体たらくになる。小生、何度でも書くが、団塊ジュニアによる団塊への媚びへつらいを、今後もゲリラ的に指摘していくだろう。
 そして、先々週の日曜美術館での横尾忠則の一件は、そうした種類の媚びと芸の道とが深く関わる好事例の最たるものであったが、先を急ぐのでまた後回し。来週こそは、きちんと書きたい。ありきたりなフォークジャンボリーの件などよりも、横尾忠則の件を最優先すべきであった。

 イエスのファーストアルバムである。1969年、英国。後に英国プログレッシブ・ロック(以後、プログレ)のみならず全プログレの荒筋の中でも取り分け重要となるバンドであり、キング・クリムゾンとは別の、方法、とは断定し難い雰囲気でおよそプログレを印象付けた役割が大きかった。しかし、イエスを、プログレの代表、などと説明して漫然とするは、たとえば並木路子の「りんごの唄」が、敗戦後の日本大衆を復興へと勇気付けた、などといって乙に澄ましているのと同じであり、何も言った事にはならないだろう。常に変化、つまり無常、あるいは段違いに遷移し続けては分野の小宇宙コロニーを形成したかと思えば破壊もするロックというケダモノの音楽の、そうしたサガの骨格のようにして生きた、生き続けた、あるいは生き延びたバンドというのはいくつかあるが、イエスもその一つである。無論、一瞬生まれて直ぐに消えた星屑泡沫バンドの有り難さを否定するものではない、「棺桶に直に赤子を産み落とす」(ベケット)有様も、ロックの、そしてバンドのバンドたる所以である。100年続く老舗オーケストラなどの安泰の愚を横目に毒牙一閃するのがロックという音楽の不逞である。
 それは兎も角、レッド・ツェッペリン「song remains the same」とザ・フー「who's next」とイエス「yes songs」の三つ巴、三国志で一挙に物語ることで、この三者の、そしてハードロックというものの本質が炙り出されると、小生、企画している。この念頭は非常に重要な、この王道無きロック史の天王山ともなるので、今日は足を踏み入れないが、イエスにしても、他の2バンドにしても、ザッパと同じく、全アルバムを詳細に論ずる必要があるため、本日はイエスの第一歩である。(関係ないが、2大政党制というのは危険かつ退屈ではなかろうか。三国志の例もあるように、三大政党制の方が、政治的に面白いように思う)
 繰り返すが、イエスのファーストである。1969、英国。如何に1969の英国が、ロックの本来が形成や仕組みを拒否して揺らぎ混沌と、希望無き可能性にたぎっていたとはいっても、この突飛な音楽を説明付ける概念は、その当時にも、そして現在にも、全く無い。あまり妥当とは思えない言葉だが全盛期のイエスがプログレだと仰るのに、特に目くじら立てようとも思わないが、ファーストからサードまでの放浪記は、サイケデリアの時に生硬な攻撃性や馬鹿馬鹿しい陽性を忌避して、英国の霧、などというと先ほどのりんごの唄になるが、稚拙で大きく、これを信じたら将来碌な事が無い楽観ファンタジーへと誘うのはジョン・アンダーソンの天上的な歌唱ゆえなのだろう。加えて、ジャズ的な音の運びを白人風に脱色してパストラルな精緻を、珠玉のようなオルガンがころころ悲愁させるから、これを既にプログレの萌芽、と見なすのは簡単だが、そうすると大事を聞き落とすことになりかねない。大事は常に小事に隠されている。
 しかしながら、この時点で、サイケコンセプトアルバムの切り貼りや、ブルースサイケの冗長性の堂々とは違った書法で、構成の長々とした、緩い起伏がいつまでもふわふわ続くような、後にプログレの典型となる楽曲構成が既に確立しているのは確かだ。それでいて、演奏は、ドラムもベースも、相当熱く、ガッツが効いてリズムがブンブン、兎(=ジョン・アンダーソン)追いしかの山。ただ、その熱は、冷たげにも見える白熱電球であるが、触ると聞くと、あっつい、そしてその熱さは、脆い。プログレというと知に働いて角が立った冷たい技術権化と思われがちだが、今後語られるだろう三つ巴で詳論したいが、プログレの代表のようなイエスから、ハードロック特有の熱さ、脆さ、というのが既にうかがえるのである。こんな稀有なことが、1969年英国で、あっさり起きていた。
 ああ、イエスについて、こんなことでは、何も言った事にはならない。以上の文章、全然駄目だ。今日はこの辺で仕舞いにしておこう。フーにしても、ツェッペリンにしても、いわく言い難いのであろう。しかし、このもどかしさは、良い音楽に出会った証拠だ、最上の音楽は聴くことでしか味わえない。あるいは真似るか。何にしても月並みだ。狂歌をひとつ、「月並みに踊るも恥か踊らぬも恥」。
 
bill bruford :drums, vibes
tony kaye :organ, piano
peter banks :guitar, vocals
chris squire :bass, vocals
jon anderson :lead singer, incidental percussion

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