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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「we're only in it for the money」 2008年7月26日  大安 夏祭(げっさい)

 ブルースやアイリッシュフォークが起源であるからロックは歌の音楽である、といった由縁は今更どうでもよかった。ジャズという器楽音楽との絡みで、インストだけのロックも’70年代プログレ期あるいは’90年代ポストロック的な試みにおいてありはするが、ジャズという大きい音楽との対置で言うならば、ロックは歌の音楽であった。歌は、意識的ではなく唐突に、自然を前にしてそれ単独で歌われたことなどあったのだろうか。こうした不勉強な大衆的感想など下らぬと思いつつも、歌は、賑やかな物音の連なりに乗じて初めて、声と音が差分されながら友愛のように、そして声も音も歌っていたら、好ましい音楽の憩いである。ニーチェは悲劇の誕生の中でオペラを否定していた。器楽曲による音楽の純粋経験を言い、超越的であるべき音楽に言葉が混じる不純に耐えられなかったようだ。そうすると歌ほど猥雑なものは無く、そしてその音楽を称して猥雑と言辞するのにロックほど相応しいものもないだろう。今は良い趣味におさまりがちながらジャズもかつてはそうだったし、そもそもジャズやロックやロールといった単語は、黒い民が世俗で多用するいかがわしい性的隠語であった。ジャズで使われる管楽器も言うなれば声に準ずるものだし、そうすると純粋な器楽曲という概念はいかなる音楽分野においても現象しがたい。声は音にもなり、音は声にもなるのだから、それを人間が聞く限り。従って西洋古典音楽だろうが義太夫だろうが、声が鳴り音が叫んで総じて歌い、消える無形である。
  
 しかしながら、その声が言葉を、概念を、歌いだしたら、まことに問題がややこしくなる。言葉は、思われたり黙読されたり音読されたり読経されたりと多用されるが、音楽になると考えると、言葉はまた異種の相へ転移すると考えた方がよいだろう。しかも、歌は、言葉からも音楽からも村八分にされかねない異常な様相であり、論ずるとしたらこの両方から挟み撃ちするか、自ら歌うかしかない面倒である。さらに、ここではロックにおける歌、という限定もある。当然ながらドラム、ベース、ギターその他多種多様な楽器が、各々歴史を担いつつ奏されるし、演奏自体の歴史も有れば、音を発するのは演奏だけではないと言いたげに、電子音響機器の発達によるサンプリングやカットアップだの、サイン波合成や編集といった概念もロック期には欠かせぬ。さらに音楽は音楽としてだけ存在できぬため、種々の歴史文化も絡む。先述したように、音楽諸分野の中で、技術発達の影響を最も蒙った、あるいは貪欲に吸収したのはロックであった。こうしたことの一切の前提が共有されなければ、we're only in it for the moneyは語れない。
  
 ザッパがそのセカンド、absolutly freeの不徹底な真似として、ビートルズのサージェントペパーズをこき下ろすべく製作されたこの、ロック史上のユリシーズ(ジョイス)ともいうべき偉作を持って来てしまい、暗澹たる気分であった。ただ、こうしたアルバム事情はどうでもよいのでその辺のロック本を参照してください。(absolutly freeもサージェントペパーズも共に67年リリースであるが、ただサージェントペパーズの方が数ヶ月早かったようです。作品のレベルはabsolutly freeが圧倒的に上でありサージェントペパーズなど鼻取り紙に等しいが、コンセプトアルバム史は別途論じます。余計な留意であるが、ザッパ&マザーズはビートルズが居なくても存在しえたバンドであるからザッパがビートルズの真似をしたとは考えられない)

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