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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「pierre schaeffer/l'ceuvre musicale」 2008年8月2日  友引 怠水

pl.JPGpierre schaeffer/l'ceuvre musicale musidisc292572
 先に、電気音響音楽の発達として分かたれるならばこうなるであろう二つの潮流、ミュージック・コンクレート即ち具体音楽と、サイン波合成即ちシンセサイザー音楽についてまとめたい。前者の代表としてはさしずめピエール・シェフェール(仏)、後者にはシュトックハウゼン(独)を挙げればよいだろう。前者は編集であり、後者は合成である。うろ覚えだが、いずれも戦後での活躍目覚しいはずだ。入力したアナログ音を電気的に処理しうる能力と、またそれ自体で既成楽器とは異なる音を出力しもする電気音技術は音楽における作曲あるいは即興といった概念とは別の概念、手法を生み出した。

 具体音楽は権威づけられた承認の庇護にある既成楽器に飽き足らなくなった者たちがその辺の物音あるいは動物の鳴き声等を聴取の対象に据えた音楽であった。従って遡れば1900年代のダダの騒音楽器もあるし、さらにはモーツァルトやブラームスにも、楽曲のアクセント程度ではあるが物音の使用は聞かれる。そしてレコメン系やフルクサス、あるいは音響派といった流れの中でも物音系として異彩を放ちつつ継承されていって今に至る。ただ、ここで、既成楽器の楽曲のにぎやかし程度ではなく、専ら物音を積極的に音楽たらしめようとする意志が働く時、物音のただの羅列から構成へと傾く弁証法に陥りがちであった。そこで編集であった。シェフェールはフランス国営ラジオの編集技師としての出自も手伝って、種々の物音や既成音楽を切った貼ったで音楽を紡いでいった。こうした編集技術は、やはり20世紀後半の電子音処理技術の発達を待たなければならなかったのである。

 一方シュトックハウゼンを考察するには、単純に、「少年の歌」に聴かれるようなシンセサイザーの合成手法の活用を述べればよいのではない。ドイツ、オーストリアといった、古典からの考察を持続させながら20世紀になっても音楽の中心たりえた土地にいた彼は、後期ロマン派からドビュッシー音階を経て、シェーンベルクの十二音技法、ウェーベルンの音列主義といった現代音楽潮流の只中で実践した人である。無論、メシアンもブーレーズも間近に意識しておろう。ただしここでは割愛して、簡単に、音楽史上において技術発達のおかげで可能になった合成を概念的に特筆して終わるべきであろう。合成は正弦波を理念として、雑多な音素を一本の波形にまとめることによって過去に有り得なかった音を創出した。あるいは波形の特性値を変えることで既成楽器の音を真似ることもできた。よって、人によって演奏しかされなかった楽器音が、人では演奏不可能な思念のプログラムに則って音を出すことも可能になったのである。

 編集は、個々の音が個々の音のまま、ある種の構成から逃れようとする遊びがあるようにも見受けられるが構成である以上、そうした楽観が許されないのは後世の、腐れヒップホップコンビニ音楽などを聴けば分かるだろう。また、合成は、全体主義の発現と見紛うばかりの説明となったが、こうしたテクノロジーからのテクノロジー自体による弱い反逆として90年代に起こったオヴァル、ミクロストリアといったテクノイズの聴取もあり、音楽はまことにはしぶとい。詳細はまた稿を改めて書きたい。現代音楽の変遷についてもまとめる必要があるだろう、ザッパを論ずるために。

 編集は、いかにもガルガンチュア・パンダグリュエルの国フランスの、雑多な、王侯貴族もブルジョア市民もプロレタリアートも農民もその階級が変わらぬまま賑やかで、臓物も果実も汚水も一緒くたに沸騰するが如き国柄に相応しかろう。合成は、観念からの演繹を整然する如何にもドイツらしいありようとも取れる。血液型バラエティ番組はその区分数が4つしかない少なさ故に教条的で乱暴な統制区分となって、反感を持たざるをえない。しかし県民性番組は概ね各県の個別的差異事象を取り上げるのみで、県民すべてがその事象に当てはまると緩く言いはするがさほど説得力も無く笑えるレベルであるから好感を持つ小生は、下らぬと思いつつもこうした国柄話は愛嬌だと思って。また、区分が過剰に多くなることは、空想的社会主義者シャルル・フーリエの砂漠の蜃気楼の如き儚くも膨大綿密な理論のように、統合を生まれながらに知らぬ爽快な解き放ちになるのではないか。

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