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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「the who/my generation(1965) deluxe edition mca 088 112 933 」 2009年5月17日 屈春



 五月人形界に物申す。なぜいつまでも、鎌倉武士や応仁の乱以前の、大仰な古式ゆかしい大鎧ばかりなのだ。戦国時代や安土桃山時代には、百鬼夜行の如く珍妙な変わり兜の世界が綺羅星の如く広がっているというのに。退屈極まりない鎧兜はやめて、桃山の、百花繚乱たる変わり兜の世界を勉強されたし。そうすれば子供たちばかりでなく親たちの心も掴めるのではないか、売り上げも上がるのではないか。 

 ザ・フーである。えてしてよく知らぬ、あるいは自分が意識的に知ろうとせぬ民族や人種の顔は見分けがつかぬものであり、たとえば「英国の彼ら」(ザ・フーではない)に偏見しか持たぬ小生にとって初見では「英国の彼ら」の顔の違いは分かり難いし、むしろ分かろうとせぬ意固地が鬱屈している。人間、皆、顔が違う、などというのはこの際どうでもよい。そうした原則と関係ないところで、何度も言うがザッパ&マザーズらの男たちの顔は一目瞭然に、異なっている。そして、同様に男たちの顔が皆、異なる、と言いたくなる英国の希少なバンドの一つが、小生にとって、他ならぬザ・フーであった。一体誰なんだ、この、あまりにも顔が異なる4人組は?という疑問をはね付けるのが、文字通りフーである。
 歴史に貢献するためにバンドは演奏するのではないのだがザ・フーのロック史上の位置付けや経緯は既に名を成しているので詳細は省きたい。白人によるブルースやリズム&ブルースの愚直な鍛錬が、言葉に成らぬ浮き世への怒りを暴発させる時に、勢いだけの他愛無いビートロックを、リスナーを社会的危険に陥れる凶暴なガレージロックの萌芽にするのだが、そのプロトタイプがザ・フーであることはここで繰り返す必要がないほど自明でありながら、やはり前提として必要であった。そして、ザ・フーの歴史はロックの歴史を成すものだから、このファーストのみでフーの全てを語れるわけも無い。このファーストや次のクイック・ワンから後年の病的なロックオペラ諸作品まで考えようとしたら、それこそ全ロック史を注入する必要がある。
 ここでは、既にこの、純正黒人音楽から脱しえた熱いビートのファーストアルバムから言えることを、ザ・フーが何であったかを、この王道無きロック史の中の位置付けを、完結に宣言するに留めたい。その宣言の原因説明は、ザッパ&~と同様、彼らの全てのアルバムを通聴し逐一考えねばならないために、今後じっくり取り組みたい。関係ないが、小生は、説明責任、という言葉が大嫌いだ。ザ・フーも同じ事を言っている。

 ザ・フーは、ビートとガレージの荒野からハードロックという不在へと駆け抜けた。
 ザ・フーは、王道無きロック史の、まさに王道であった。
 ザ・フーは、ロックの王道の、途絶えた系統であった。
 ザ・フーは、継承されなかった。
 ザ・フーは、プログレッシブ・ロックやメタルの形式を拒絶する、ガレージ=ハードロックというか細くも険しい踊り場に居続けた凡庸なる異端であった。
 この凡庸なる異端、異端なる凡庸が、安住を許さぬ、危機意識に満ちた不安定な殺伐であり、未来永劫ロックのあるべき姿であった。
 外部の目新しい音楽におもねようとせぬ、あくまでもブルースによるブルースのプログレッシブ化をハードロックというならば、ザ・フーこそがそうしたハードロックを体現しえた数少ないバンドであった。
 既に初期音源にも聴けるが、特に後年の、ザ・フー独特の叙情は、ぎりぎりのところで、欧州ロマン主義に流れた正統プログレッシブロック的叙情やアイリッシュ叙情を避けえた、まことに奇特な持病であった。
 聴き方によっては、この奇特な持病ゆえに、最早、先ほど申したような意味でのハードロックなるものからも逸脱してしまった、ザ・フーとしか言い様の無い音楽性に到達した。
 
 
 マイ・ジェネレーションはロック樹立宣言であった。それは共産党宣言の冒頭に匹敵する。この楽曲、この歌詞に、ロックのレジスタンスの全てがある。制度に承認された範囲内で世渡りする連中を尻目に、うまいこと物が言えぬ、永世的に未熟な者らの、殺伐とした、救いの無い怒りと暴力がある。歌詞を乗り越えて雪崩れるように煽り下るキースのサービス精神旺盛な超絶芸人ドラムがそれを証明するだろう。己に刻み込むために、拙いながら自分で翻訳してみました。お目汚し相済まぬ仕儀。
 最後に、キースとジョンの御霊に感謝と、冥福を祈る。私は、死んでいった者のことを決して忘れない。 

my generation

people try to put us down
just because we get around
things they do look awful cold
hope I die before I get old
this is my generation
this is my generation, baby
why don't you all fade away?
don't try to dig what we all say
I'm not trying to cause a big sensation
I'm just talkin' 'bout my generation
this is my generation
this is my generation, baby

たむろしてるだけで
奴らが俺たちを潰そうとする
とんでもなく澄ましこんでる奴ら
年とる前に死にたいぜ
これが俺たちの世代
これが俺たちの世代なんだ、分かるかい
お前らみんな消えちまえ
俺たちの言う事を理解しようとするな
俺はでかい事したいわけじゃない
俺はただ俺の世代のことを話してるだけさ
これが俺たちの世代
これが俺たちの世代なんだ、畜生
(不吉 意訳)

ピート・タウンゼンド:ギター
ロジャー・ダルトリー:ボーカル
ジョン・エントウイッスル:ベース
キース・ムーン:ドラムス

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