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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「the mothers of invention/freak out! (1966)rykodisk rcd10501」 2009年1月25日 大安 水石



 先週、ザッパ2回、その他1回、と書いたが、辛いので、ザッパ1回、その他2回、という形式でしばらく書きます。申し訳ない。。。 

 寝覚め前、冷え切った足先から目が覚める辛さなので、電気敷き毛布を購入いたしました。熱量が弱でも十分暖かく、心地よい睡眠を保証してくれています。そればかりか、これまでは睡眠中の夢はなく専ら白昼夢であったのが、電気毛布を使い出してからというもの、寝覚め前に必ず夢を見るようになった。電気毛布の温さによって睡眠のリズムが変わったためだろうか、寝覚め前の体温上昇を毛布が助けてくれるため眠りが程よく浅くなり、夢見させるようなのである。己の夢を記録したり人に知らせたりする趣味はないのでどういった夢かはすぐに忘れるようにしているが、大抵は碌な事はないようだった。それにしても、電気毛布が導く夢など、賢治か足穂か、何ともアンティークSFのような世界ではある。

 今期のテレビドラマ群は、好ましく見ています。去年の「篤姫」、全く何処が気になるのか分からなかった。明治維新の動きに殆ど関係なかろう島津の姫御前ごときが、さも関わりあるかのようにいちいち維新の元勲に関わろうとする無理が祟って厚かましさ拭いきれなかった。大久保や西郷や勝や桂などにとって、旧態の大奥の動揺などどうでもよい些事に過ぎぬだろう。それに、時代劇を見る楽しみはその時代の調度や小道具へのこだわりを鑑賞する事であるが、大奥のしつらいに数寄心揺さぶられる渋さは皆無であった。てらてらと真新しい軸物や香炉ばかりで萎えるばかりであり、従って殆ど見ていない。
 翻って今回の「天地人」、良い。雪中の山脈の尾根を、どこまでも高みに留まるべく行軍する毘沙門軍の有り様は何処までも格好よろしく、小生をしてザッパ山脈の尾根を行軍せしめるに至ったし、大河ドラマが意固地にやりおおす、いずれも詰まらぬ、主人公の子供時代が、初回含めて2回で終わらせたのは、大人の鑑賞に堪えるドラマへの移行速やかであり、子役の下らぬお遊戯を見せられる退屈から早々に免れる事が出来る優れた決断であると評価したい。そして、調度や焼物などの道具が、NHKにしては画面越しであっても適度に古格を帯びていて良い。床の間の掛軸の山水がいずれも渋いではないか。もっとよく見せてくれ、掛軸を。地侍の使う種壷などもドギツイ釉薬をまだ知らぬ民芸、見飽きぬ。阿部寛の謙信がまた尋常ならざる凄み、手水の水面を撫ぜるようにさっと手のひらを滑らす清め方が最高であるとは細君の言。しかし、時代劇の雰囲気作りは言うに及ばずその調度小道具に関しては民放が圧倒的に優れておろう。金曜日の必殺仕事人、毎週見る必要ある。何よりも江戸の小道具のいちいちが侘びきっており何時までも愛玩したい。水瓶や油壺の如きの使い古されようが無造作に良いし、先週のすっぽん鍋の土鍋がまた、出汁が染み付いている古びをも帯びており、すっぽん入れなくても清水を張るだけで出汁が滲み出そうではないかあの鍋は。にじみ出るといえば和久井映見である。最早異常事態を発令しても過言ではないほど、魅力の純成分をいつもいつも滲み出しておるではないか。「夏子の酒」で鮮烈なデビュウ果たした和久井映見は、主役から遠ざかるものの年を増すごとにその魅力を醇乎たるものに精製した。和久井映見は魅力の琥珀である。和久井映見は魅力の蒸留酒である。彼女が画面に出るごとに、ブラウン管の表面を拭うと表層に堆積した蜜の如き魅力がねっとりと手ぬぐいに強固に付着するであろう。「動物のお医者さん」の実写版で菱沼さんを好演した頃から、NHK朝の連続テレビ小説の母親役でもそうだが、魅力の純度をひたすらに高めているので、その魅力とは何なのかと問われようとも、これ以上分離出来ぬ高純度なので、ただ、魅力、としか答えられぬ類である。人間よりも魅力に近い和久井映見が、時代劇に出演することは火に油を注ぐようなものである。調度の目利きを極めた民放時代劇に和久井映見がいるのだから、演戯の巧拙超えて、佇むその和装の着こなしだけでまた魅力である。大切な事だから何度でも書くが、NHK日曜美術館の、壇ふみの後継者は和久井映見である、と、NHKに建白奉りたい。
 建白といえば、次のNHK大河ドラマには、山田先生の「へうげもの」を推挙したいものである。直江兼続の男ぶりも気になるが、古田織部の方が歴史的文化的に大物であろうし、何より面白い。NHKの力を持ってすれば国宝級の大名物茶器をドラマ中で実用するも可能であろう。あの北野大茶会を実写すれば、何と面白かろうよ。武将や姫ばかり取り上げても仕方あるまい、今こそ数寄の天下一、古織を知らしめる良い時代である。(無論、古織も戦国武将であるが)ただ、NHK時代劇の大道具小道具の目利きぶりには不安あり、やはり道具の味わい深い見立てに一日の長がある民放に任せるべきか。モーニング誌はアニメよりも実写に相応しい手ごたえ確かな漫画が多いが、「神の雫」などという美麗ワイン漫画なぞ実写ドラマにせず、「へうげもの」を実写ドラマにするよう運動すべきである。とりあえず、小生が「へうげもの」のキャストを勝手ながら考えていますので、それができたら講談社、民放、NHKに建白奉書したい所存である。

 さて、マザーズ オブ インベンションの記念碑的ファーストアルバム、フリークアウトである。米国。本プログ「王道なきロック史」の主題は、サイケデリアの侵略的土着性、ハードロックの非継承性の他に、これらと密接に関わりながら、もう一つある。それは、ロック史におけるビートルズ史観を批判し、ザッパ/ローリングストーンズ史観、を樹立することである。この名を出さぬことが否定にもならぬだろうから、これまでためらいがあったもののこの際名指すしかなかったビートルズはロック史の主因として定説されている体たらくであるが、当然ながらロックの一様相に過ぎないとまずは言い置きたい。それは影響やフォロワー(模倣者)が大勢力と成した結果であるしこの事を否定する気は無いが、影響の大きさというものが、他ならぬロックの歴史を説明する十全であると考える事は、殊にロックに関しては誤謬である。何よりもロックはマイノリティの音楽であり、当初から、その員数に関係なく社会的マイノリティである奴隷にされた黒い民の不屈の他愛無い音楽を恥知らずの白人どもが模倣し始めた矛盾に引き裂かれた音楽であり、如何に現代の産業ロックがアリーナで数万人集めようとも、そんな事はロックの本来からすればどうでもよい。一方で、影響とか、模倣者といった潮流あるいは系譜とは無縁ながら、各自孤立のように見えながら、しかし地脈で通じているように聴こえながら、やはり、説明責任を放棄して突発する、立派なる点在が、系譜ならざる系譜、星座にならぬ星のばら撒きとしてあったことを、今後証明して行く予定である。ビートルズ史観における樹状系譜、線形、連続性、古典力学的説明の権威化を批判した上で、ザッパ/ローリングストーンズ史観は点在する系譜、非線形、不連続性、量子力学的伝心になるであろう。突発的な音楽、というと、まるで西洋ロマン主義音楽史のような、モーツアルト、ベートーベンなどのような天才の音楽、ということになり、ロックを語る上で時代錯誤ではないか、と仰る向きもあろうかと思うが、違う。ロマン主義では天才であり才能であり神経症的狂気ということになるが、サイケデリアでは変態、であり、土着のキチガイである。この突発は、選ばれた才能ではなく、発生した風土病であるから、進化論の起爆剤に収容されるごく少数の天才ではなく、蔓延経路が見当つかぬ多数の原因不明の発症者を見出す事が出来るという点で、違う。
 この「フリークアウト」、直訳すれば、幻覚せよ、とでも言うのだろうか。既に、あっという間に全く新しく、説明、即ち説き、明かすことは不可能である。R&Bなのか何なのか、よく分からぬ。ザッパとしか言い様の無い楽曲、そして奇怪なアレンジの細かい賑やかさが、声の違う仲間の男たちがみんなで歌う暑苦しさに寄り添う。耳障りな奇声や音ばかりであり、美しいコーラスなど知らず、ドゥーワップ由来の気持ち悪いユニゾンで無遠慮に迫る。そうはいっても過酷な下積み時代の、ティーンズのダンスパーティ用楽曲らしきも、愛らしく親しみもあり、ほろほろと泣ける。「tell me, tell me who you are loving now・・・」後のザッパを思えばしっかりまとまったナンバーが多いように聴こえるが、だいたい、纏まっているとか言われて誉められるいわゆる作品性とは何なのだ。作品性という概念への批判は長くなるのでまたにするが、このアルバム後半、作品性など糞食らえとばかりに、すさまじいミュージックコンクレート・インプロヴィゼーションのフリークアウトぶりの万華鏡であり、こうした恐るべき不均衡は、69年の傑作「アンクル・ミート」で爆発した。
 記録のため追記すると、10年ほど前、現代美術系ユニットが勃興し始めた頃だろうか、フリークアウトという現代美術雑誌が在った。(数年で廃刊になった)誤字脱字の多い雑誌であったが、美術手帳でも載せないような激しい作品の写真が大判で、草の根の、まだ無名の現代美術の生を扱う目的がはっきりした雑誌であり、小生買っていた。実家にあるはずが、捨てられてしまったのか、見つからないのが残念である。
 久しぶりに車の中でスモールフェイセス聞いたら、ほろほろと耳が袖を濡らすほどの衰弱です。

FRANK ZAPPA
RAY COLLINS:Lead Vocalist, harmonica, tambourine, finger cymbals, bobby pin & tweezers
JIM BLACK:Drums (also sings in some foreign language)
ROY ESTRADA :Bass & guitarron, boy soprano
ELLIOT INGBER:Alternate lead & rhythm guitar with clear white light
and THE MOTHERS' AUXILIARY

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