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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「love/forever changes(1967)elektra amcy-3193」 2009年9月6日 油夏忌


 仕事の出先、行きつけのマクドナルドで半ばサボるように長々とした昼食(必ずダブルチーズバーガーのセット、コカ・コーラを選択)を取っていると、階段に、コオロギが居た。どうしたわけか迷い込んだのだろう、腐った草のように、案外何も考えずに、鳴きもせず危うく居た。繰り返すが、マクドナルドの中にコオロギが居た。小生のマクドナルド見聞録については、またの課題としよう。子連れ母子ママ友らの暴れ非常識、子の遊び場の変遷(山→マック)、マックとは関係ないがカブトムシ考、子の自然体験NHK番組の面白い欺瞞、子の分際で店員に食べ物を注文する違和感(子に物を買う権利は無い?、ましてや大人の店員に金でものを指図する権利は無い、ただ駄菓子屋でビックリマンチョコを買う権利あるのみ、お使いは?)…

 ラブ。アメリカ。サイケデリアの生温かい沼池に咲いた一輪の破れ蓮。レコード媒体の解説など読むと、ファースト、セカンドも相当そそられる内容のようであるが、いまだ聴いた事無い小生の怠慢を戒めつつ、小生所持の傑作サードアルバムを個人的に顕彰したい。西海岸のアシッド・フォークが発散する暗い敵意が、時にガレージ風のドラムがジャズ的意匠に留まらず闇雲に形振り構わず地車を轟かせる椿事と合流するが、殆どの場合、簡素な歌や捨て鉢な歌が、朝露を爪弾くように織り成されるか弱いアコースティック・ギターに乗って仄暗いストリングスとホーンの宵からささやく豪奢な不気味。サイケデリアの夢、成仏するサイケデリア。いったいにこんな音楽はどうやったらできるのであろうか。既存のものの組み合わせに過ぎぬ組成から、質量保存の法則を無視して、錬金術のように、座という物語を拒否する星のように、不意に強烈に光ったかと思うとそれは超新星爆発、創作から遠い処で生き死にする我々からしてみれば既に終わりの徒花とは。作品とは大概においてこうした孤独死を免れぬのは分かってはいても、この音楽性が概念として一般化された時、ロック音楽はどうなったかは気になるところである。凡百の、ザ・バーズ的フォーク・ロックなどとは一線を画すこの音楽性が。
 唯一親和的なのとしてソフト・マシーンが思い浮かぶが、ソフトマシーンは、その知的=痴的戦略性ゆえかハットフィールド&ザ・ノースやナショナル・ヘルス等々といった系も生み、メンバーの重複出入りはありはするものの派を築くに至った。
 無論、ソフト・マシーンが主導して派を築く、というのは虚構であり、元々各々独立して活動していたバンドらをカンタベリー派の一言で括るのはレッテルというメディアの暴力であり、気をつけなければならないが、相互に刺激し合う暗黙のコミュニティが茫洋とあったのは事実であろう。ただ、コミュニティはあったが、そのコミュニティに与えられた名によって全てが言えるほどの硬直した音楽性を、各々のバンドが有するはずはなく、当然ながらそうした名からはみ出さざるをえぬ音楽をバンドらは出す。やれ小沢チルドレンがどうの、とはやし立てるメディアを信じる国民なぞさすがにいまい。
 しかし、ラブは、系も派もなさぬという意味でありふれてはいるが、まことに尊い音楽を作った。私らはそれだけで感謝である。朝、もう目覚める事が出来ぬ者が夢見る劇的な朝焼けのような悲しい朝焼けの彼方、どこか束縛から逃れた安堵感で和やかに憩う置いていかれた者らが、先に行って生きていくしかない私たちに手渡す儚げな希望のような音楽。
 ただ、解説(伊藤秀世氏)など読むと、続く4枚目のアルバムは、「ハードロック寄りの次なる展開への転換期にあったというべきか、楽曲自体の魅力の乏しさや散漫な音の作りがやけに目立つ」とある。これが正しいとすると、小生としては、こうした迷いのある音、というのに非常にそそられる。これが良い、と確信めいた権威主義的音楽などはつまらぬだろう。不安に苛まれながらその不安に酔うてもいる千鳥足の遊びに音楽を見出したい。

 アーサー・リー:ヴォーカル、ギター
 ジョン・エコールス(?):ギター
 ブライアン・マクリーン:ヴォーカル、ギター
 ジョニー・フレッケンスタイン:ベース
 ドン・コンカ(?):ドラムス
 ビリー:ストレンジ:ギター
 ドン・ランディ:キーボード
 ハル・ブレイン:ドラムス

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