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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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生口島茶会記 後編

旅館料理による持て余した満腹を抱えて港周辺の防波堤の切れ目の階段に茣蓙を敷き、一服を企てる…脇の街灯がお誂え向きにスポットライトとなって…波にもならぬようにゆっくりとのたっている黒い海面には対岸の島の乏しい家灯りだけが頼りなく影を作るのみで、連絡船の最終便が帰港した一時の賑やかさも収束した今となっては、静けさは怖いくらいに我々主客の息をのんだ…すると、磯臭い夜の海のしじまを破るようにして、シュッ、ポチャ、と云う音が、闇と静寂に無頓着な素っ気なさで断続的に聴こえてくる…魚でも飛び跳ねているのかと海面を見やっても、深冥なる海が底知れず横たわるのみで、空しい程平滑なる内海の様相…しかし程なく其の音が近づくにつれて正体知れると、納得の行く雅馴であった。釣り人が、シュッと棹を振り、投擲された錘が円弧の糸を引く時間を含んだ後にポチャ、と仕掛けが海に沈む、そういう音をさせながら、ポイントを変えるために移動しているのである…折しも、菓子に出した金平糖を噛み砕いて頭蓋に響く音や、茶筅を振るう音と、そんな釣りの音が見事に邂逅し、「合わすれど、当てるべからず」と云う雅楽の奥義さながらに望外の雅致を呈し、一座建立相成ったのであった。

夜の海辺の茶会

日時 2019年5月25日 21時頃
場所 生口島 瀬戸田港 防波堤

亭主 私
主客 先輩 讃岐住
半東 細君
菓子器 新緑図七宝合子 岩国骨董市にて
菓子  金平糖(檸檬、サイダー、苺) 京都 緑寿庵清水
茶杓  黒木 亭主先端を尖らす
茶入  アルミ缶
茶   宇治 至宝の昔
茶碗  萩 平筒
湯   宿のT-fal
水筒  ?

細君は部屋で寛ぐつもりの軽装のまま成り行きで引きずり出されたので早速蚊に刺されて五百円玉大に腫れ上がり怒り心頭ではあったものの茶事其の物の成否は揺るぎなく、ごく自然に部屋呑みへと移行…酔いが回って思想と政治の桎梏に話が及び侃侃諤諤議論が白熱、頭を冷やすためにもう一ッ風呂浴びるのもおかしな話だが、暢気に造作なくレモンをプカプカ浮かべたレモン風呂に浸かった後にまた呑んで談論風発…就寝…

翌朝…旅先では一睡もできない私の神経過敏に自己嫌悪するも、天候には恵まれ…次に狙いを付けていた場所への道順を、宿の人に教えてもらう…車は其のまま宿の駐車場に置かせてもらい、歩いて此の集落の古刹、潮音山向上寺に向かう石段を登る…朝からもう汗だくの日当たりと急勾配…国宝三重塔を拝観し、頂上の展望台からの景色は風光明媚を絵にかいたような多島美…折しも、ふもとの島の小学校で運動会が催されているらしく、気忙しいマーチングと歓声が穏健なる島の朝におかしみを与えながら、予期せぬ激励を受け取ったような感受性も高まって、ベンチに腰を下ろし、一服。熊ン蜂が辺りをブンブン警戒し睨み付けるようにホバリングする危機感とも同席しながら、勇躍茶筅を奮う…。早速、茶杓で抹茶を茶碗に入れる際、海から山に吹き上がる涼しい風に、抹茶を散らされズボンに茶飛沫が付着するが、此れまでの野点の経験から云ってよくある事。此れを恬淡と受け入れる自分であった。

朝の山上の茶会

日時 2019年5月26日 10時頃
場所 生口島 潮音山 向上寺 山頂展望台

以下、同上。

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