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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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愛に走って

 
歌;山口百恵 作詞;千家和也 作曲;三木たかし 編曲;萩田光雄

今更百恵論にどっぷり嵌まるつもりはないにしてもふと思い出して改めて聴いてみるといいに決まっており…小生は「百恵伝説Ⅱ」と云う5枚組CDを所持しており、此れは其の内の2枚目のCD全21曲の7番目の所収されている楽曲である…具体的には、初期の青春路線が成熟期に入ったが宇崎・阿木時代に突入する直前の時代の楽曲と思っていい。裏も深みも無いピンピンの素っ気無いキーボードの主旋律を呼び水としてこれまた素っ気無く歌い出される此の歌は…大ヒットした有名楽曲でもなければ、百恵楽曲の中で時折噴出する異常な実験精神の発露があるわけでもない、淡淡とした楽曲でありながら寧ろそれゆえこそに歌の本筋が顕わになって…従来からして若さゆえの肉感の中に冷めた切れ味を忍ばす諦念に溢れていたのが此のあたりで既に若さゆえの肉感すら潔く捨て去って、うっかり触ればすぱっと気付かず切れているくらいピンと張り詰めた冷めた鋭利さの声だけで歌の勝負をしている、そうした試みの手始めの捨て曲のような気負い無さだからこそ…冷め切った狂気を剥き出しにしている…歌詞内容からして夢遊病じみているが当然此の歌唱は心理学的説明で事を収束させない人間のあからさまな本質を飾り無く歌うのであって…見えない糸の先を、どこか覚めながらも無闇に手探りする「悲しい行い」の必死な自分へ翻る恐れが殊更に自己を深めて…如何にも切れやすい糸だけを紡いで生きていく人生の危うさ…本物の寂しさと怯えを生きている人間模様だから、パジャマのままで、靴も履かず素足で夜の街に、愛を求めずただひたむきに愛に翻弄されて、恐らく「あなた」には全く理解できない次元の「愛」に走ってしまうのだろう…研ぎ澄まされた神経は人間や世界に対して過剰に敏感であるゆえに、電話の声の寂しい響きは、気のせいだけでは決して済まされない、妄執にも似た決然たる構成力に翻弄されるのだろう…真面目に聴いているとおかしくなる…そんな実態を、試みに素っ気無く引き絞ってみた声に既に宿ってしまった琥珀色の艶を晒して、死と発情に分かれる分岐点の一歩手前に抑制された含みを備えた控えめに上ずった声で切切と歌われては。その声は血糊のようにくも膜下出血のように脳裏に焼き付いて離れないほど美しい…冒頭の、控え目なキーボードのピンピンピンピン云うイントロは…病院の心拍モニターの音にも聴こえる…臨終を経験した魂の歌の降臨かと思えば、たまに挿入される女声コーラスが天界からの其れにも聴こえる…もう、全てが終わっている。百恵は菩薩なのか、と云う、いわゆる百恵菩薩論が本気で紛糾した往時を忍ぶ。

パジャマのままで走ってきたの 暗闇の中
あなたを追って
電話の声の 寂しい響き 気のせいだけで すまされなかったの
ほんとの気持ちが聴きたいの ひとりで何処かへ行かないで
うまいことばが見つからなくて ただ泣くばかり
何かにわたし 怯えているの
あなたの愛が掴みきれないから

素足にあたる小石が痛い 青ざめた頬
あなたの前に
自分が何を しているかさえ 分からないほど こころが乱れるの
何にも考え 浮かばない 悲しい行い 責めないで
握りこぶしに 力を込めて ただ震えてる
何かをわたし 恐れているの
あなたの愛が掴みきれないから

うまいことばが見つからなくて ただ泣くばかり
何かにわたし 怯えているの
あなたの愛が掴みきれないから

人々のスピードについて行けない侘びた心持だけは一層、枯れた牡丹の花みたいに咲き崩れる小汚い雨も降る…魚は不味い、お惣菜は良く云えば独創的だが概して不味い、遠くに出掛けられない近所のお年寄りに高額で低品質の品物を売り付けてはいたが其れなりに其の界隈では需要を満たしていた小さなスーパーが閉店となる。今日の鑑定団で倉敷市住の82歳の御老体が60年近く嗜んでいるという生け花が凄かった…やられた、と思った…庭の蘇鉄の幹をぶった切って平たい花器の剣山にどかんと毛むくじゃらの化け物のようなものを鎮座させ、其の周囲を蘇鉄の獰猛な古代臭ぷんぷんの葉であしらうと云う豪快な作行きであり、只者ではない感じがした。その辺の針葉樹や広葉樹なら何てことなかろうが、そうした一般の樹木とは科とか属とかが全く異なるから切断したらどうなるのか分かったものではない自愛の蘇鉄の幹を、「己の花」のために切ってしまうと云う蛮勇たるや…推して知るべし。暮鴉は「ぼあ」と読む。

棕櫚の頂暮鴉むら立ちぬ店仕舞

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HN:
仄々斎不吉
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非公開
自己紹介:
 数寄の天下を獲らんがため号するは、仄々斎不吉。

 三千家(裏千家・表千家・武者小路千家)及び諸家茶道流派に例外無き教条点前に豪を煮やす一方、近代数寄者(益田鈍翁、高橋掃庵等)以上に見立ての幅が広がった現代茶会に更なる侘びの新風を吹き込むべく研鑽を積む。

 利休の、無産有産といった階級をも併せ飲む侘びの骨頂に根ざしながら、そうはいってもありがちなブルジョア金満足だけは厳に慎みたい労農茶人。

 草木に臥してなお風雅を愛でる仲間であるために、茶の湯だけでなく、路上観察、テレビ跋渉、音楽及び納豆評論、 30人31脚批判もこなす趣味人にして愛陶家。 猫舌。


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