忍者ブログ
 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
[728][727][726][725][724][723][722][721][720][719][718]

宇多田の変拍子と不整脈について

年明け早々に宇多田が新アルバムをリリースと云う情報を聞きつけ気もそぞろ…期待、楽しみと云うポジティブな反応半分、ネガティブな不安も己の半身のような影のようによぎり…と云うのは…宇多田を此れ以上聴き込み続ければ何か自分の個人的人生状況が不運や不幸に見舞われる、そんな要素がポツリポツリと火の粉が障子紙に穴を穿つように日増しに増えていって遂には真っ黒な積雪に埋もれるようにして出口を失うのではないかと云う、被害妄想じみた、しかし宇多田の楽曲の根源的意味からするとあながち妄想では済まない必然性のような、と云う強迫観念である。死から切り離された生を決して歌わず。常に死の影を、短かったり長かったりしながらも確実にのばす生を歌ってしまう宇多田であるから、のめり込み過ぎると気が付くと死の淵に頭を突っ込みかねない、其れが思弁を弄ぶレベルなら人畜無害だが、宇多田を聴くと云う行為とは直接には関係ない具体的な日常生活のあれこれにおいて、なぜかシミのような不運が具体的に次々と勃発する…怪訝に思いながら其のなし崩し的な坂道への転がりを押しとどめようもなく…とりわけ色々あってがた落ちした小生の身体状況の不如意などは其の最たる不幸の現れではないのかと云う、宇多田当人にとっては身に覚えのない不当な下衆の勘繰りが、実在世界の事実なのではないのかと云う確信へと…そして、最早、此のように危険性を認識しながらも、確実に年明けには入手に動く自分の背中がもう過去の記憶のように幻視されており…手遅れ感は否めないが…諦めの境地に達するほど、自分を達観できやしない往生際の悪さは備えているから余計辛い。

そして、そうした宇多田的背景もあって、本当はあれこれ語りたい小生個人の身に起きたよしなし事を語る事よりも優先されて宇多田の事が前景化するのも宇多田の魔力の結果なのかしらんと愛憎入り混じって宇多田が自分の思弁から顔を出す訳だが…宇多田の楽曲の変拍子と不整脈の違いについて力説しておきたい。基本的にソウル~ポップスの枠を踏襲する宇多田であるから、リズムは通常のものが多いが…創作意欲盛んな宇多田であるから、時に実験精神が機嫌よくほとばしった場合には、癖になる変拍子を独創的に繰り出す事がある…しかし其れは…結局のところ、アルバム全体にスパイスを聴かせる、少し面白い楽曲としての変化付けのレベルである事が…宇多田の不整脈と比較すると暗澹として判然する…其れは、大げさな表現上の比喩ではなく実在論的事実として論証される生と死と絶対的な差異に等しく…宇多田の不整脈とは…宇多田が楽曲において内省の度を深め、生命領域の深度限界を超えて実在世界へと没入する楽曲において顕著に用いられるリズム手法であり…其れは、次の手が安易に予想されるような一定間隔のリズムでもなければ、予想し難く構造が複雑だが其れでも何らかのリズムを刻んでいる範疇に入る変拍子でもない…一打一打が不連続に、それぞれが独立して時空に勃発するようにして、其の予測不可能な一打が確実に遠くから獲物を射殺するかのような確実さで命を射程にするようにして、宇多田が楽曲に弾痕を空ける任意の打撃音である…此れを小生は、宇多田の不整脈と呼ぶ…通常、音楽のリズムは其の連続性が保証されているかのように、其れこそ根源的な不連続性を隠蔽するようにしてリズムを刻む…其れに対して宇多田の不整脈は…其の不可解なリズムが、まるでいつ終わってもよく其れが最期である事が当然である事を晒して、時空に穿たれる…そして、リズムがいつ終わってもよいという事は、とりわけ生命にとっては事実であるのであって…不整脈は此の事実を露骨にする…自分は心臓が動いている動画映像と云うのが苦手であり…其れを見ると次の瞬間には止まるのではなかろうかと自分の心臓に成り代わって恐慌状態になるからなるべく心臓の事は考えないようにしているが…殊更に心臓の事を考えさせるのが、宇多田の不整脈なのである…リズムの根源的不連続性を暴き立てる宇多田の不整脈は、形而上学的な条件によって、少々変わった変拍子と位相を異にして、楽曲を絶対的に根源へと誘う…だからこそ聴き込んでしまうのと同時に、聴き込むと不整脈的な心的恐慌と救心的な心臓への悪さも相まって掻きむしられ、大混乱しながら暴れるほど沼にハマる水牛のように深みに引きずり込まれる…無論、心臓はいつ止まってもおかしくないがだからといって次の瞬間確実に止まる訳ではないから、不確定性をネガティブな側面でだけ捉える事は実存的には誤謬ではあるのだが…しかし其の実存が事実である事が確かなのだと不整脈は宣告するのでもあって…兎にも角にもリズムに思弁的意味を開闢した宇多田の不整脈は、変拍子も含めた通例のリズムと一線を画す。

次回は2022年1月16日です。

拍手[1回]

PR

この記事へのコメント

Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
管理人のみ閲覧できます
 

купи воздушные шары

<a href=https://xn----8sbwhzjq7b3a.xn--p1ai/>большие воздушные шары купить</a>

忍者ツールズプロフィールは終了しました

HN:
々々
性別:
非公開

03 2024/04 05
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30

ロック史最新記事

(03/03)

ブログ内検索

最新トラックバック

最新コメント

[04/09 VonaldaDupt]
[04/08 TrealdaDupt]
[04/08 TrealdaDupt]
[04/07 VonaldaDupt]
[04/06 TrealdaDupt]

忍者アナライズ

Copyright ©  -- 仄々斎不吉 --  All Rights Reserved

Design by 好評ゼロ / powered by NINJA TOOLS / 忍者ブログ / [PR]