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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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ゼロと無限小の間の無限の差異

去年の紅白歌合戦をタイムリーに見た訳ではないが何かのきっかけで東京事変の緑酒の演奏を視聴して、悪い曲ではないと気に留め…今や恐らく遠くロンドンで創作に没入する宇多田に、飽くまでも日本の地において匹敵し得るのか、椎名林檎を仮設…南蛮人を強く意識した襞襟の洋風和装をメンバー全員で召す創意にて林檎は拡声器で気を吐く東京事変の新曲「緑酒」…政治意識剥き出しの歌詞を安易なノリや理解を拒む玄人好みの曲調で根源へと目指すのは評価に値するが…ユーチューブで三回聴くと飽きた。結局、有限から無限小概念を通じてゼロを目指す椎名林檎と、始めからゼロ地点に端座する宇多田の才能には無限大の差異があると云う事であった。其れは、林檎が最低限、無限小を戦略し得るからこそ顕現する、宇多田との雲泥の差であった。宇多田登場以降、雨後の筍のようにディーバと称する女性シンガーが散見され、今に至るも、五輪で国歌なぞ受注したミーシャだの、ジュジュだの小柳ユキだのは宇多田と比較して論評するに値しない輩であるから無視すればよいが、東京事変の仕事の有意義性は件の通り認めざるを得ず、其れゆえに宇多田との比較論評に値するものの、論評した途端宇多田との無限大の差異を以て劣等と位置付けられる羽目になる…宇多田本人の意志に関わらず、宇多田と東京事変の作品の本質がそうなせる、と、緑酒が、近年Jポップと云う名のメジャーシーンにおいて稀に見る良作だからこそ、そう痛感した。
今や宇多田を聴いていると、聴覚と云う感覚器官を通じて認識的に聴いている気がしない、自分の心の中から宇多田の声が沸き上がる…自分が宇多田を歌っているのか、宇多田が自分において歌っているのか、最早自分が宇多田に成りきっているのか、宇多田が自分に成りきっているのか、心の声が宇多田の音楽そのものとして宇多田が根源を歌っていて其処には自分と云う枠組みすら消失しているように宇多田が歌っている無我の境地…そんな訳ないだろとCDを切ると、ほらやっぱり宇多田が聞こえると云うよりも既に宇多田だ、心が宇多田だ、最早同一化とか共通化と云う論理過程さえもすっ飛ばして直接的に宇多田としか云いようがない…いや、冷静になるべきだろう、CDを切れば宇多田は聞こえない、少なくともCDからは聞こえてこない、聞こえていると思っているのは自分が心の中で宇多田を記憶において反芻しているだけで其れは宇多田ではないはずだ、と云う常識が其のまま肯定されたまま、心が宇多田の作品を形式として宇多田が歌っている、宇多田が溢れると云う大仰ですらなく、ごく自然な細々とした意識の流れとして…今、自分の顔を鏡に映したら、自分以外の他人が見ても其の顔立ちは宇多田の顔になっているのではなかろうかと云う疑念も現実味を帯びて(バカも休み休み云えと云う正気も気弱に…)…宇多田に成りきる、宇多田への生成変化と云う批評的態度の限界を超えて、自分とロンドンの宇多田とは量子エンタングル的に時空を超越して混然としているのか。
そうした状況を踏まえつつ、宇多田を聴き続けると其の不幸体質が根源へと誘い込むから此れ以上聴き続けるのは危険だと日増しに懸念が付きまとうので入手すべきか逡巡しているにもかかわらず、宇多田のニューアルバムの入手へと確実に動きそうな事に逡巡するまでもなく確信していると…其れをあざ笑うように、ニューアルバムのタイトルは確か「バッドモード」。宇多田が一リスナーの自分の人生状況を見透かした訳でも無かろうに、まるで見透かしたかのようなタチの悪い偶然が必然であるかのよう…最早人生のバッドモードからは逃れられないのか。

次回は2月6日です。

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