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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「the mothers/just another band from L.A.(1972) rcd10161」 2009年8月2日 桃水


 盆休みのため、キャンプの申し込みをしてしまいました。だいそれた事をした気がしてドキドキしております。本気のキャンプではなく、手ぶらで来ても大丈夫なのが売り文句の、らくらくキャンプセット、みたいな、上げ膳据え膳のキャンプコースを選択。天幕や食材や調理道具やランタンは勿論の事、10分歩けば施設の大浴場や露天風呂もあり、車で10分でスーパーやコンビニやホームセンターもあるらしい。
 温泉とかの観光地に行くとどうしても何かしら目に適う器や面白き物を求めてしまって、そうした自分の物欲にいささか疲れ、いっそアウトドア的な自然の中だと茶道具の類はないだろうし、己が物欲に解放される、という算段。
 中学生の頃に集団でさせられて以来、なので一抹の不安があるが、大学の頃読んだ、山と渓谷社の山岳雑誌の特集の座談会で、登山好きの匿名女性らが、火の起こせない男なんて駄目だわよね、といった事をいっていたな、と思い出し、細君にいいところを見せんがためでもある。(そういえば彼女ら、山で惚れても、地上でそれが続くとは限らないわよ、などと、登山中での軽はずみな恋を戒めるような事も云っていた)雨が降らないか心配であるが、当の細君は、寝てる間に熊に襲われやしないか、早くも怖がっている。焚き火しながら、小生が寝ずの番をしなければならないのか・・・。上げ膳据え膳といっても、ビールを保冷するためのクーラーボックスとか蚊取り線香は買わないといけないかな、と早くも物要りになりそうな予感。満天の星空が見たい。
 
 さて、マザーズの「L.A.からきたバンド」である。恥ずかしながらこれまで、ザッパ&マザーズの歌詞あるいはロック・オペラならぬロック・ミュージカル的な世界の台詞について述べることは無かった。ここで、ロックオペラならぬロックミュージカル、と、問題の本質を考えも無く漏らしてしまったが、その通りであり、即ち、欧州殊に英国などでは、例えばプリティ・シングズやザ・フーらのアルバムの一部がロック・オペラと巷間に言われるに対して、マザーズの場合は、これは一般的にはそうした指摘は無いが、ロック・ミュージカルと呼ぶに相応しかろうと思う。ロック・オペラはその方法が換骨奪胎されて後に西洋ロマン主義的プログレッシブ・ロックへと一般化した事からも結果的に言えるように、西洋古典音楽の様式を楽曲構成に展開した。対してマザーズあるいは70年代初期の、タートルズと合弁したいわゆるタートル・マザーズがやっていた音楽は、様式の展開美を明確にするクラシカルなものから端から隔絶し、ミュージカルが踊りながら物語るように、演奏しながら物語るのを猥雑にやってのける。猥雑というのは、物語上の役柄とバンドメンバーを演じている生身の一挙一動が演奏の一打一弦と区別無く相乗するを言う。特にマザーズの場合は、ロック・オペラバンドがやるようにオーケストラの分身のようなホーン・セクションや、直接的に弦楽器群の導入といった、すぐにクラシックに収斂しかねぬ編成に流れず、あくまでもドラムとベースとギターのみで物語ったのが、オペラならぬミュージカルという謂いでもあろう。単純に、アメリカ大陸にはクラシックの伝統が無かったから、というだけでもよい。こうした結果からでも、ザッパ&マザーズが、欧州ロマン主義に変性する機会から遠い幸運の中でサイケデリアを培養できたのを説明できよう。
 ちなみに荒唐無稽の物語を多量の台詞で一楽曲に詰め込むザッパ&マザーズの歌詞世界を、一通り読み下すのも怠けていた小生、これを機に、一曲目の「ビリー・ザ・マウンテン」という、ロック・ミュージカルの白眉を読んでみた。当時のアメリカで流行っていたテレビ・コメディやニュース番組、その他諸々の風俗の固有名詞が、何の説明も無く歌われるので、日本人のみならず、恐らく大半の今のアメリカ人にも分かりにくい。しかしそうしたことを平気でやり続けたことを論ずるには、私小説論になるので稿を改めたい。他者性による内輪批判、内輪性による他者批判、私小説によるフィクション批判、フィクションによる私小説批判といった泥仕合もよいが、ここですることではないため。
 内容は、こんな感じだった。
 アメリカ西部にビリーという山がいて、その肩にエセルという樹木の彼女を乗せている。絵葉書の被写体として退屈な日々を送っていたが、ある日その絵葉書の印税の札束を、キャデラックに乗った男がビリーにくれた。ビリーは喜んで崖の顎が外れ、キャデラックはぺちゃんこ。ビリーとエセルはニューヨークにヴァケーションに出かけることにする。行く先々で街や道を破壊しまくり、ついにはエドワード空軍基地も破壊。その際に古い毒ガス兵器と細菌兵器の倉庫も破壊したため、ビリーは自分に付着した毒ガスや細菌を撒き散らしながらニューヨークに向かっている。ビリーに徴兵要請が来て、忌避している。
 話は別の男に移り、何やかんやあって、このスチュワードベイカー・ホックは、腕にアルミホイルで羽根を巻きつけ、ジャマイマおばんさんのメイプルシロップを足の裏に塗りたくって電話ボックスに入る。するとホックにハエがびっしりたかって、電話ボックスごと浮き上がった!
 ホックはビリーのふもとに辿りつくが、山が笑ってふもとが崩れ、200フィート下の岩クズの中へ落ちていった。

 frank zappa: guitar&vocals
mark volman: lead vocals
ian underwood: winds, keyboard & vocals
aynsley dunbar: drums
don preston: keyboard & mini-moog
jim pons: bass & vocals

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