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 ロック史を体系的議論から解き放ちながら、サイケデリアの土着性とハードロックの非継承性を論ずる。主要1000タイトル、20年計画、週1回更新のプログ形式。
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「hindemith/kammermusik1-7(1920~)pocl-4127/8」 2009年12月13日 汚名忌


 忘年会シーズン。早速の深酔いで午前様帰宅、どうやって帰ってきたのか記憶ないまま何とかこらえて来たのだろう吐き気を解禁、便器に覆い被さって食べてきたホルモン全部を全力で吐く。ゆっけのような吐しゃ物が便器に溜まり、しばし放心してそれを眺める。
 それはそうと先週は日本画家の平山郁夫氏が死去された。加山又造はまだいいが平山画伯の絵のどこがいいのか、まったく分からない。有名な観光名所や世界遺産を、短絡的な綺麗さで、高価な絵の具と時間たっぷり使って描く絵葉書じみた大作を描いては、公官庁のお買い上げとなるこの画伯の金満画業のどこがいいのか、誰か教えてください。書き割りのような人物やシルクロード遺跡群に、悠久の歴史や民族とやらを、卵抱えたザリガニのように後生大事に抱えさせてシルクロードでございと喧伝する上品ないかがわしさは院展の模範絵画として許されるに過ぎない。特に絵画史上に輝くような画業は全く見当たらないと考える。画伯の幼稚かつ普遍的な、既に国会を通過したような承認済みの書き割り絵画に比べたら、まだ、倒産した倉敷チボリ公園や、どうしようもなく豪華に薄っぺらいが価値のある意味など殆ど無いハウステンボスや、日の本の各地の温泉地の日陰でとぐろ巻くエログロ秘法館の張りぼてセットの安っぽさの方がまだましであろう。
 ただ、画伯の、そうした日本画家の安住の典型を成す名所絵画はどうでもよい。最も許しがたいのは、彼の、広島の原爆の絵である。自身も被爆したにも関わらず、ピカドンによる延焼に飲まれる広島の街や原爆ドームを見下ろすように、不動明王を描き加えるこの無神経、無思慮である。広島に原爆を落としたのは誰か、言わずもがな、アメリカ軍である。この動かし難い事実を観念的に歪曲して、あたかも、原爆は不動明王による広島市民への仏罰だと表現しているのだろうか。それともアメリカ軍が不動明王の命によって民主主義という悟りを開かせるために原子爆弾を落としたとでもいうのだろうか。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。アメリカとその軍が、戦争で勝つためであるとか新しい兵器を使ってみたいであるとか戦後の覇権争いを見越してソ連に武力を見せ付けるためであるとか理由は色々あるだろうが要するに戦争下における極めて人間的な卑小な理由によって、人間が、原爆を落としたのである。そして、そうした詰まらぬ下らぬ人間的な要因によって、原爆は落とされ、十万人以上の尊い人命が酷く殺傷されたのである。原爆の絵を描きたいのであれば当然でありながらこの、あまりに人間的なこの受け容れ難い恐るべき事実を直視する事が大事であり、その直視が即ち絵画というものでなかったか。
 それをしなかったばかりか、この広島名誉市民は、原爆を仏罰や自然災害のように観念的にとらえることで、単純な事実、アメリカが落としたという事実と、その拭えようも無い罪を隠蔽しようとするGHQや日本政府の欺瞞的思惑に、恐らく無自覚に便乗し他愛無いプロパガンダへと堕したのである。繰り返すが原爆投下にまつわる事実に深い思想が入り込む余地は無い。そうした思想は国家権力が望む隠蔽工作に寄与するばかりか、とうの被爆者に対する端的な冒涜でもあるため、画伯が望む美による鎮魂にもならぬ無邪気な自己欺瞞に加担したことになる。シルクロードや尾道といった、予め承認された範囲内の画法や美的感覚に居座って安穏するこの画伯が、原爆に色目を使って原爆の絵を描こうとした時に、結果として制度の飼い犬根性を晒すはめになるのは必然であったのだろう。
 無論アメリカが落としたのは衆知の事実である。しかし表現において、2009年8月9日の本ブログ記事で小生が記述したように、アメリカ軍による空襲や原爆を自然災害かのように超越的に捉える日本痴愚思想を証し立てる表現が、マスコミや映画やその他の言説でまかり通る戦後状況が発生したのだ。そして鎌倉名誉市民はこれに深く加担した。しかも、最も自由であるべき絵画において。
 ところで、昨今のテレビ企画映画や漫画(夕凪の街桜の国とか)では確かに、アメリカ軍が空襲や原爆を実行したという事実を誤魔化すことが何か深い思想であるかのような欺瞞表現が多発しているが、戦後の原爆文芸や裸足のゲンはどうなのだろうか。ゲンで充分だと思っていたのできちんと読んでなかったが一応所持している原爆文芸やゲンを確認する必要があろう、「アメリカが広島長崎に原爆を落とした」という一文があるかどうかを。この一文を書き記すことこそが、原爆文芸の原点であり、戦後日本においては最大の批判力である。
 とりあえず、ざっと、夏の花(原民喜)や人間襤褸(大田洋子)や黒い雨(井伏鱒二)やHIROSHIMA(小田実)をめくってみたが、いまのところ、見つからない。よく確認しよう。HIROSHIMAで、投下直後の場面で、被爆した少年が、「アメリカ…」と呻いているが、この一文がきちんと言えなかったようだ。読解する上で重要な場面であろう。
 牡蠣殻ループタイ、快調製作中です。牡蠣殻、すごいです。

 ヒンデミットの室内音楽集1番~7番の全曲収録。肖像画からはナポレオンに似ているがドイツ人、第一次大戦後のドイツ現代音楽界にあって関連団体の代表を務めた当代随一の巨匠であったが、思想的な理由でも民族的な理由でもなく専らその音楽性ゆえに時のナチス政権から睨まれ、退廃音楽の烙印を押された結果スイスへの亡命を余儀無くされた。
 音楽性としては後期ロマン派以降の無調性、十二音階、半音階、電子音などの理論や技法が飛び交う中、理屈はよく分からないが無調性音楽を欺瞞と見なした立場を代表した。複数の音が鳴るとそれらの周波数の和と差の周波数が同時になることで如何に複雑な不協和音といえども何らかの調性が介在してしまうという現象から、純粋不協和音音楽の存在を否定したらしい。素人にはよく分からないが、それだけ聴くとなかなかの人物なのだろう、何かしらの理論(調性、協和音)を不可避と見なした上でその中から、あたかも紋白蝶のさなぎを食い破って、青虫時代から寄生していた寄生蜂が羽化するのを目指したに違いない。端から理論にそっぽ向く突破者でなく、あたかも、同じくロマン主義のくびきから逃れる事無くそのあてどない流刑を流浪にバックドロップ式に転倒させてしまう力技に長けたブランショを思わせる。したがって、そこらの安易な調性回帰主義者ではない。
 この室内楽、如何に聴く者が二日酔いで起きれぬだるさに居ようとも暴力的にけたたましい眩しさを、とにかく耳障りな、やかまし系の音で鮮やかに連打することで、情け容赦無い人生の朝というものを決定付ける。落ち着かせない、まことに気忙しいリズムに乗って、苦み走った、エグミの強い、饐えた和音をだばだばさせるのだから、自ずとこの作曲家が、絵画でいえば1920~1930年代のドイツ表現主義や新即物主義、社会派などの音楽的同伴者であることを証明するし、だからこそチョビ髯伍長のアドルフの機嫌を損ねたのもむべなるかな、である。
 赤松の幹にべっとりしているのを甘い蜜だと勘違いしてじかに舐めてみると、舌を焼き喉をひりつかせる事この上なくしつこく、いくらうがいしてもその松脂のエグミは長い間口腔に固着して離れなかった幼き頃の記憶が蘇るような、キツメの音楽である。時にバッハをリスペクトした暢気な典雅を演奏するが、笑いながら犬の腹蹴り上げているような危険への予感が拭えぬ。バルトークやヤナーチェクなどのある種分かり易い民族性とは異なる、ヒンデミットの微かなキチガイ性はどこか民族的根っこから遊離した机上の空論の突っ走り結晶ゆえに、サイケデリアの凶暴と通ずる。そうすると、アメリカ発祥のサイケデリアと、プログレとは言いながら実質遅れて来た青年サイケのようなジャーマン・プログレッシヴ・ロックの間には歴史的友としてヒンデミットが居るのかもしれない。ヒンデミットはスイス滞在後、アメリカに亡命、エール大学で教えていた。

ロナルド・ブラウティガム: ピアノ
コンスタンティ・クルカ: ヴァイオリン
ノベルト・ブルーメ: ヴィオラ ダモーレ
リン・ハレル: チェロ
キム・カシュカシアン: ヴィオラ
レオ・ヴァン・デーゼラー: オルガン
ロイヤル・コンセルトヘボウ管弦楽団
リッカルド・シャイー: 指揮
パウル・ヒンデミット: 作曲

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