ふりかけ…
盛夏の祇園祭よりは、初夏の葵祭のほうが風情があって…政治的憤懣の昂進はともあれ…目覚ましい季節の到来…自ずと茶会への相違に傾倒しつつ…思いつくままへうげものの旧刊をつまみ読むといちいち面白く、創意を触発されてメモが手放せない…木屑を接着剤で固めて表層を木目調のプリントで誤魔化した安手の素材のCDラックが経年の荷重に負けて湾曲し始めたのが気にかかっていたので、元元茶碗を見せ収納していた、チーク材の屈強な棚と交換作業…それに伴う周辺作業もあって疲労困憊の週末…頭が痛いがいい感じに仕上がった。
いまだに、歌の別れ…
こんなにもフラジャイルなものを守るためには人間はあまりに無神経で、鈍感で、根源的不安に耐えられないほど根本的に弱すぎて、始終びくびく怯えているから己の命運を外部に委ねて安心したいのだろう…。だから、「国家」や「社会」や「生命」と云った、己の外部の理屈に己の命を委ねてやまないのだろう…「歌の別れ」(中野重治)の時はとっくに来ているにもかかわらず、大島弓子の他愛ない、しかしだからこそ美しい反体制漫画「ローズティーセレモニー」の主軸を為すポール・エリュアールの詩に目頭を熱くしている場合ではないと決然しても、己の持ち前の繊細さは業としか云いようがなく…
ぼくの生徒の日のノートの上に
ぼくの学校机と樹木の上に
砂の上に 雪の上に
ぼくは書く おまえの名を
読まれた 全ての頁の上に
書かれてない 全ての頁の上に
石 血 紙あるいは灰の上に
ぼくは書く おまえの名を
金色に塗られた絵本の上に
騎士たちの甲冑の上に
王たちの冠の上に
ぼくは書く おまえの名を
夜々の奇蹟の上に
日々の白いパンの上に
婚約の季節の上に
ぼくは書く おまえの名を
夜明けの一息ごとの息吹の上に
海の上に そこに泛ぶ船の上に
そびえる山の上に
ぼくは書く おまえの名を
戻ってきた健康の上に
消え去った危険の上に
記憶のない希望の上に
ぼくは書く おまえの名を
そしてただ一つの語の力をかりて
ぼくはもう一度 人生をはじめる
ぼくは生まれた
おまえを知るために
おまえを名づけるために
自由(リベルテ)と
『エリュアール詩集』(思潮社)
安東次男 訳
腫れた無念…
眼流星 機制電
殺人刀 活人剣
…『無門関』
記憶への追随…奈良の旅①
桜も花が落ちてようやく落ち着きを取り戻し、裏白い新緑が山際に眩しく晴れが続いた季節のとある休日の昼下がり…通常では有り得ないほどけたたましい地震速報を、身に覚え無く勝手にインプットされた機能で以って発揮する携帯電話によって深更夢見がちに気付いた程度だったからほっとけばそのまま滑らかに眠りに付いたものの天変地異に対して異常に小心な細君が狼狽のままに起こすから其れきっかけで其の後の睡眠が妨害され今時分でも頭や胸は気持ち悪いがあの貧相な自粛ムード(ニーチェ的意味で。)が蔓延する前の駆け込み需要なのか自粛せず細君は予約していた美容室に出掛けた隙をついての、ようやく腰の落ち着いた執筆態度となっている…つい先日利用した豊肥線では脱線…K市には一人暮らしの祖母が居るので実際最早他人事ではなくなっているが喧騒する当事者の盲目を付いて今は等閑に付す猶予期間に甘んじるのか…身近な条件の激変を外部から余儀無くさせる暗い予感もさることながら、専らの懸念はやはり此の国の全体主義体制の補完状況であって…トランプによってアメリカがファシスト化すれば、それでなくても自発的に草の根的に全体主義化する内的要因と結果が世の中に満ち満ちている此の国なのだから、トランプによってアメリカがファシスト化すれば箍が外れたようにバスに乗り遅れるなとばかりの浮薄の輩の便乗勢力も加わってあっという間に全体主義化し、更には全体主義が辛うじて残している保守的思想性すらも、其の時代ではもう嘲笑的な意味しか持たない「思想」と云うレッテルの下に嘲笑的に抹消される末期に至ればその場限りの勢いまかせの出任せの見せ掛けの現場、実力主義が幅を利かせてあっという間に徴兵制、軍国主義が再来するだろう(これらの見通しに小生は確信、確証があるが詳細の情勢分析は此処では割愛…取り越し苦労であってくれたら一番良いが…)…そして関東大震災や東北大震災が国家総動員あるいは一億総活躍体制の呼び水になったのは明らかなだけに、此度の熊本の地震もまた、全体主義の後押しに政治利用されつつ草の根的全体主義の追肥になるのもまた明らかで、そろそろ公共広告機構がCMを、「ありがとウサギ」がほっぺを遠心力で膨らませながら回転する愛らしい様子で埋め尽くしやしないかと固唾を呑んで見ている始末…明らかに其の道程だけは現時局において明るく照らされている…何もかも馬鹿馬鹿しいほど明らかだが明らかであればあるほど罷り通る政治なのであるから今が奮起のしどころと分かってはいるが…されど…奮起せぬ。奮起せぬのは体制へ臆する様様な配慮的びくつきのせいなのか、はたまた小生の身辺で巻き起こる個別的内憂外患によって生気をごっそり削ぎ落とされているのを理由とするのはその場凌ぎの言い訳に過ぎないのは分かってはいるが…今は何とか政治的奮起への導火線を綯うべく、人生と云うリハビリに専念するしかない…そんな時間本当はないはずなのだが…精神のリハビリにいいのは何と云っても過去に自分が実際に経験した事を記憶のままに書き綴る事であり…普段、生活の為に心にも無い事や、あるいは金輪際古今東西空前絶後に此の世界に有り得ないような超絶的文章ばかり書いていて神経を徹底的に痛めている自分としては、過去の、楽しかった旅の思い出を記憶のままに徒然に記述するのは、荒れた胃を休める優しいスープのような滋養が期待されるわけで…熊本地震が惹起する国家レベルから個人レベルまでの種種の不安をうっすら抱えながら…心は一路、大和路快速に飛び乗るのであった。ありがとウサギの出番はなさそうだが…ファシズムと全体主義の権力構造には相違はあれど其の発生における同様としては…ファシズムも全体主義も、言葉と理性の価値の大暴落であって…何を云っても何を(理性に)訴えても無効になると云う状況である…歴史上、近代の、徹底的に結晶化したファシズムも全体主義も内部からの体制崩壊運動は認められず外部からの武力圧力による体制破壊しか有り得なかったが、此度のアメリカ大統領選は、ファシズム発生が体制内において予防されうるか否か、歴史上稀有な試金石となる。小生は今、言葉と理性が暴落した全体主義前夜において其れを阻止する方法論と、全体主義成立後の己の身の振り方と覚悟を、並行して思案している。
必然的に大阪駅までの新幹線代が重荷となるのであるが…昨今の日本人あるいは激増する外国人らの強かさを甘く見た罰なのか…早く予約すれば割引される特権的切符の入手へと着手した時には時既に遅しで、予約出来ず、正規の値段で指定席を予約する…致し方ないとは云え事前に湧き立つ期待に水を差す顛末にも昨今の時局が侵入してくるようでげんなりしつつ…前日、待ちに待ちすぎて一睡も出来なかったというしくじりで早朝から吐き気を催しつつ新幹線に乗り込む…味も素っ気もない、旅的にはトンネルだらけの糞詰まらない新幹線旅に嘔吐感を助長させられつつ…新大阪駅に定刻着、待ち合わせ場所の大阪駅行きに乗り換えて…予定通りである。人が多すぎる大阪駅構内にも率先して嫌気がさしながら同行する御二方と無事合流を果たす…腹ごしらえに、食い気で腫れ上がった駅ビルで如何に腹を満たせるか試されるが上手い事大勢の成り行きの裏をかいて品のいい英国流喫茶店にて、手早さを見込んでカレーを注文…隣席ではバッハのかつらのような白髪の紳士と若い娘が談話している…コクがほどよく納まった欧風カレーを堪能…大和路快速への乗り継ぎに向かう…(続く)
忌中
パールカラーにゆれて
車の往来が慌しい排気ガス塗れの、且つ室外機から生臭く汚い空気を吐き続けている店先の路面にワカメの根株がごときを笊に乗せて乾燥させてい る小汚い通り…ドブ川をあさる白鷺の嘴は元元黒くて…ショウウインドウに映る、生クリームの腐ったような顔は誰かと思えば自分の其れでしかな く…致し方ないと気持ちの起伏も萎えたまま昼下がりをぶらついていると、満開の沈丁花が匂わないのは自分の嗅覚の麻痺のせいなのか…白鷺の嘴 の黒さが感傷の中で際立って、ビジュアル系のメタルやポップロックを思い出すよりも先に、80年代のファッション業界やショウビジネスアイド ル業界の最先端…中森明菜とか、口紅がどぎついピンクや病的な紫色をした女像を想起しつつ…鑑賞中のゼータガンダムの爽快さは…人間関係に一 切の馴れ合いがない、互いに、表や裏で冷酷に抉るように容赦なく互いの人間性を批評し合っている油断できない関係性であって…昨今の、皆同じ 顔した女の子たちがにゃんにゃんにゃんにゃん甘ったるく馴れ合うアイドルアニメの腐敗とは全く隔絶した、殆ど子供の見るものじゃないような厳 しい関係性と無軌道な個人の突出が清清しく、そうした厳しさを形にするのが、ゼータに頻出する、紫色の唇をして目つきは至って鋭い病的な女像 なのであった。山鳩がポーポーポポーと啼く午後…イントロのエキゾチックでオリエンタルな深みと、すかさず添えられたヴィブラスラップのカー ッ音が印象的…歌詞には殆ど意味がないお洒落オリエンタル旅情風情…繰り出される木琴やらギターの爪弾きが苦み走った不協和音をアクセントに して、あなたとならどこまで…知らない港に着きたい…パールカラーという言葉で小生が俄然気になっているのは成り行きで使っているシャンプー の物質感であって…プッシュして掌に出してみると真珠のような光沢を呈しておる…此れを漆と混ぜて、うまく硬化してくれたら真珠色の漆が出来 るのだろうかと創意を夢想している…所持している浄法寺漆器の、松と藤の漆絵が侘びている絵皿の…裏側の朱漆がぼろぼろに剥げて、木面から浮き上が った漆との隙間に未虫が発生して気が狂いそうなのでヤスリできれいさっぱり剥げかけた朱漆を除去したので、其の部分で、春が来て暖かくなったら真珠漆が出来 るか直ぐ試みたい。重く湿った夕暮れの…季節変わりの雨の兆しはどんよりとして歯切れは悪い。意外に乾いた洗濯物を取り入れ…歌詞は結局、速めのテンポ過ぎて聴き書きが出来 なかった。昨日遊び疲れて一日中炬燵で寝ていた細君が渋渋掃除機をかける…しゅうまいを六個、皿に盛り付ける。
シュレッダーをあさる鴉や沈丁花
